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12 カラオケ 2

 「心に風が吹いて 言い残したあれこれ」


 泣かないようにしながら歌っているつもりだが、多分歌い方で涙が出ているということはバレているだろう。


 「聞こえない風の中 空になびく雲 永遠などないって 僕に語りかけてる」

 

 泣きながらでも、何とか歌うことはできている。私が脱退を発表したのは、今年の1月。親から「引っ越すことになった」と突然伝えられたので、私としても心の準備はできていなかった。なお、私は高校受験のために、2月に1回ここに来た。


 「選んだ自分の道 心に咲く花 空のどこかに光る 自分だけの未来」


 休業公演は3月10日、引っ越しの日の前日にあった。その時に、私がソロで歌った曲がこれだった。あれからもう4か月がたつが、私はまだ別れを完全には受け止め切れていなかった。

 

 「輝く未来と憧れは道端花の花言葉」

 「直感を信じよう 未知の帰り道を」

 「未来は待ち受けてるものじゃないんだよ」


 ショウの方に目を向けると、彼は私の歌を一生懸命に聞いてくれているようだった。私はそんな彼のことが少しずつ好きになっていた。


 「ヘリアンサスの花は太陽に微笑む 一人一人の色を重ね次の明日へ」

 

 私は4分半の歌を歌い終えた。ヘリアンサスは、私がアイドル活動を行っていた徳島県A市の花の学名だ。原義(ギリシャ語)では「太陽の花」という意味があるが、実際にはメンバーの中では固有名詞のようなものという認識だった。


  「ごめん、イントロ聞いた瞬間アイドル活動を思い出して涙が出ちゃった」


 私は、歌い終えた後に弁解をした。そのあと、3年後、高校を卒業したら徳島に戻って1人暮らしをするつもりだ。またアイドル活動も復活するつもりだと話した。


 「次は僕が歌っていい? アニメ『ラストラベンダー』EDの『タイムマシン』入れるよ」


 ラストラベンダー。私にとっては結構思い入れが深い。私はマイクを置いて、少し前の思い出を話し始めた。

 「高校始まってからすぐにラストラベンダーの話をされた時はさすがに焦ったけど、でも意外とバレないものなんだね。他に言ってきた人、まだだれもいないしね。一応ショウには確認しておくけど、私がアイドルやってたってこと、誰にも言ってないよね?」

 「疑うならLINEみてもいいよ、本当に誰にも言ってない、バンド仲間にもね」

 「別に疑ってるわけじゃないよ」


 私は笑いながら話す。ショウは、「タイムマシン」を歌い始めた。


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