期末試験中間報告(幕間)
「……まずいな」
「むぅ……」
「………………」
期末試験も中日を越えてたところで緊急の作戦会議を行うため例のごとく俺の部屋に集合していた。
「進級に関与する、主要5教科のうち、3教科までは今日までに終わったが……」
目の前にはそれぞれの問題用紙。
まだ結果は出ていないが、問題用紙にも各自の回答を書いておいたため、現時点での点数状況は推し図れる。
現状、俺がギリギリの線でクリア。椿芽は3教科中、二つまでがギリ。羽多野にいたっては……。
「あうぅ……すみませぇん……」
「そこまで気落ちすることは無い。たかがテストの点数だ」
「うう……美術や家庭科は得意なんですけど……」
……推して知るべし、だ。
「ま、今回の結果だけで留年とかじゃないもきから、そこまで深刻になることはないもき」
「ああ。しかし……」
「うむ。補習となってしまうと……ちょっと話が違ってきてしまうな」
総合点が低ければ、夏季休養期間……つまり、夏休み中に補習授業を受講しなければいけない。
夏休みと言っても、あくまで通常授業が休みとなるだけだ。ランキングバトルの方に関しては休みとなる訳ではない。
むしろ終日をバトルに当てられるため、チャンスになると言ってもいい。
「その期間を……おかしな言い方だが、補習で無駄にしてしまうというのも、それはマズい」
現状では羽多野はもとより……椿芽も、俺ですらも安全圏とは言い難い。
羽多野にしても、まだ正式な天道組の一員として記録されていないとはいえ……。
今後を考えると、やはりバトルには積極的に参加させるほうが望ましい。
「むぅ……」
「一応、最後の救済措置があるもきよ」
「最後の? まさかお前……」
「不正……カンニング……などと言い出すのではなかろうな」
「や、その方法もあったもきけど、時期的にもう遅いもき」
「まぁ、そうだろうな。残り半分の教科だけではな……」
「それでは……なんだ? 最後の手段というのは」
「この時期、どこのグループも補習問題には頭を悩ませるもき。そこで、最後のチャンスを賭けて、特別ポイント戦が任意に行われるもき」
「特別戦?」
「補習授業を賭けて行われるもきよ。補習になりそうなグループ同士でバトルを行って、勝ったほうは補習免除。負けた方は勝った方の分まで補習授業を受けなきゃならんもき」
「なんだそれは! そんなものがあるのなら、試験の意味などないではないか」
「まー……基本的にはこの学園じゃ、最後にモノをいうのはバトルってこともきねぇ。もっとも、公式にはルールとして表に出ていない、裏ルールみたいなモンもき」
「ならば、先にそれを言ってくれれば良かったじゃないか。そうすれば……」
「デメリットも多いもき。対戦の組み合わせは無作為抽選もき。下手すれば、上位ランカー……我道や頼成当たりといきなりぶち当たる可能性もあるもき」
「なるほど……」
この間の我道たちの有様を見ても、ランキング上位の連中も学力の成績に関しては厳しそうな状況が多そうだしな……。
「それに……負けた場合はそれまでのテスト成績いかんに拠らず、問答無用で補習もき」
「むぅ……」
「しかし……もはや、その方法しか……」
性格的に好む方向性ではないはずの一か八かな策にもかかわらず、椿芽は既にその方向性を決めてかかってさえいるように見える。
「いや、ちょっと待て。まだ残りの教科を頑張るという……普通な選択もあるぞ」
「……正直を言うと……私は残りに含まれている数学には全く自信が無い」
「わ、わたしも……英語はちょっと……」
「……なるほど」
「ほんじゃ……一応、エントリーしとくもきよ」
「ああ、頼む……」