乱獣コロシアム
あれよあれよという間に連れてこられたのは、頼成組カジノ。
店内を大股でずんずんと横切っていく少女(と、俺)が手慣れた様子で奥の扉をガードしていた黒服にパスを見せると……。
「……久しぶりだな。最近、場が膠着してる、せいぜいまた荒らしていってくれよ」
「……別にアンタらのためにヤッてんじゃないよ」
ニヤつく男が扉を開け、その先の階段を降りていくと……そこは闘技場のような場所だった。
(茂姫が言っていた賭け試合のリングか?)
そこそこの広さがあるリング――フィールドの周囲は、多額の学札を握りしめ、目を血走らせ試合を観戦する連中でごったがえしていた。
「エントリー済ませてきた。グローブとか、要る?」
「は? あ……いや」
「そ。やっぱね」
「いや……ちょっと待て。状況が掴めんのだが。エントリー?」
「ふぅ……」
少女は呆れたように肩を竦め、ため息などしてみせてから……。
「ここは……イワユル、賭け試合の地下闘技場。今からアンタは、アタシとここで対戦すんの」
「……なんで」
「言ったでしょ。忘れてるってんなら……その体に直接思い出させてやるって」
「……は?」
「ああもう、じれったい! 天然もそこまで来ると、むしろ腹立たしいキャラ立てだわ!」
「いや……別にキャラを立ててるつもりもないんだが」
「どっちこっち、ボケてる余裕なんてないわよ。さ、とっとと会場に入った入った!」
「あ……お、おい……!」
俺はワケが分からないまま、またも例のごとく少女に手を引かれ、選手控室なる場所に押し込まれた。
※ ※ ※
その頃、怒黒組図書館近辺の路上では――。
「全く……あの馬鹿、どこで水草を食っているのか……!」
「アニキは金魚もきか」
「まぁ……大方、例のごとくどこかで迷ってるのだろうが……」
「先生も、乱世さんが揃わないと教えてくれないっておへそ曲げちゃいましたしねぇ……」
「相変わらず、妙なタイプに好かれるな、あいつは……」
「そういう意味でも、ねーさんたちは心配もきねー」
「な……なにがだ」
「や。ひょっとしたら、どっかで、その手のおにゃーのこに逆ナンされてそのままシケこんでるとか……」
「ば……馬鹿を言えっ! そんなわけがあるか!」
「そ、そうですよ……乱世さんに限って、そんな……」
「やー。アニキは多少、アレな部分もあるけど……基本的にゃ、そこそこの二枚目もきからねー」
「そ、そんなことは……あ、あるかも……ですけど……」
「むしろ、イマドキはああいう天然っぽいフシギ系なキャラのが受けるかもしれんもき。ましてやアニキはシェリス戦からこっち、そこそこ有名人もきから」
「う、うう……なんだかどんどん心配に……」
「だ、大丈夫だ。心配は……いらん」
「で、でも……椿芽さん……。乱世さんの貞操の危機ですよっ! よくそんなに落ち着いて……」
「あいつに……乱世に、そこまでの甲斐性があるわけがないっ!」
「……信頼があるんだかないんだかもきね……」
「でも……だとしたら、どこに……?」
「そうだな……」
「あ、ひょっとしたら……」
「茂姫、心当たりがあるのか?」
「まぁ……アニキの性格なら、もしかすると……」
「よし……案内しろ! すぐだ!」
「あ……ま、待ってくださいよぅ……!」
※ ※ ※
『さて、次のカードは……急遽飛び込みの対戦だッ! あの男闘呼組四天王、Charmy Pink・シェリスをまさかの撃破ッ! 破竹の勢いでランキング上昇中、期待のルーキー……天道組、天道乱世がここ、乱獣コロシアムにデビューだッ!!』
「………………」
別にデビューを望んだワケでもないのだが。
流されるまま、試合の順番を待ってフィールドに出てはみたものの……これではまるで見世物、だ。
いや、事実そうなのだろうが。
『そしてそのデビュー戦の相手は……ここ乱獣コロシアムのトップランカー! 小さな体と可愛い顔に騙されちゃいけないッ! 猫は猫でも、こいつは野生の山猫だッ! ゴスロリ・リンクス……興猫ーッ!」
「……相変わらず、いかさない紹介だこと」
俺の反対側から入場した少女は一瞬だけ露骨に嫌な顔を見せながらも、すぐに周囲の観客に笑顔でアピールなどしてみせる。
(む……?)
興猫――?
「さぁて……はじめましょっか」
「興猫……? ということは……お前、いつだったかの夜の……?」
「……アンタ、マジで忘れてたっての? うっわー……本気でハラたつわー」
「いや……それ自体は覚えてはいたが……」
あの時は夜でもあったし、何よりあんな強烈な殺気と恐るべき戦闘能力を見せ付けた、あのときの暗殺者が……。
目の前の(多少、性格等に難はあっても)無邪気に見える少女と重ならなくても、それはそれで仕方ないのではないだろうか。
確かに、言われてみれば声にしても、体躯にしても、記憶のそれと照らし合わせれば同じとも思えるが……。
「思い出したにゃ?」
「ああ……まぁな」
「ふぅん。そんじゃ……やっぱりやめとく? 言っとくけど……アタシ、それなりに本気で行くつもりだけど」
「そう言われては、むしろ引けないな」
「にゃはは♪ おにーちゃんなら、言うと思った」
俺は興猫と対峙し、構えを取る。
経緯はどうあれ……こういう状況はむしろ望むところだ。
あの時はこちらの手の内を最後まで隠していたお陰で切り抜けられたが、今度はどうなるか分からない。
(あれからの鍛錬の成果も、ここで計っておきたいしな……)
いや、そんな理屈よりも何よりも――。
『奇跡のルーキー、天道乱世は、またも番狂わせを見せてくれるのかッ! それとも頼成コロシアムの小さな女帝、興猫がその実力差を見せ付ける結果になるのかッ!』
俺が――。
俺自身が……もう一度、彼女と戦ってみたいと欲している。
「……今度は最初から全力でいくぞ」
「にひひ……たーのしみぃ♪」
レフェリーが腕を交差し、電子音のゴングが会場に響き渡った――!
※ ※ ※
「この頼成組が経営してるカジノの地下に、その闘技場があるもき」
先程、乱世が興猫に手を引かれて降りた地下への階段を、いまは天道組の面々が降りていく。
「なるほど。それは……確かに乱世のヤツが好みそうな場所だ」
「こ、こんなところに……乱世さんが?」
「勇……大丈夫か?」
「え、ええ……。ちょっと……怖いですけど……」
「んな心配することもないもき。さっきの怒黒組の図書館と同じで実力団体が経営してるとこじゃ、そうそう騒ぎも犯罪も起こりにくいモンもきよ」
「そ……そうですか?」
「騒ぎやトラブルを起こせば、その団体に目をつけられるもき。団体の方はトラブルがあれば聖徒会に目をつけられるから管理もしっかりするもき。むしろ、普通の店とかより安心なくらいもきよ」
「ちょっと……安心しました」
「ま、せいぜい年に何十人か、『行方不明』が出るくらいもきね」
「ひっ……!」
「無意味に勇を脅かすな。勇……不安ならば私の手を握っていればいい」
「は、はいぃ……すみませぇん……」
「まぁ……見学にせよ、参加しているにせよ……迷子になった乱世が目をつけそうな場所であるのは確かだ。さっさと調べてしまおうか」
「了解もっきー」
※ ※ ※
わっ、と大きな歓声が上がる乱獣コロシアムに足を踏み入れた一向が目にしたのは……。
「あれは……!」
「ら、乱世さんっ!」
「ありゃ。どんぴしゃもきねー。さすがはアニキ、わかりやすいもき」
「あ、あれ……相手って、女の子じゃないですか……?」
「あれは興猫もきね。この闘技場の常連もき」
「す、すごい動き……! あの子もPG……? どこかの団体の人……なんですか?」
「モキが知ってる限りは特定の団体には属してないもき。噂だと、金次第でイロイロな団体のイロイロな仕事を引き受ける傭兵みたいなことをしてるとかって聞くもき」
「よ、傭兵……?」
「もっとも、流石の茂姫もあんまデータがないもき」
「茂姫さんでも……ですか?」
「情報が少なすぎるもき。金目的の汚れ仕事ばかりだから、この闘技場以外は、あんまり公式のバトルに出てこないってこともあるもきけど、それよりも……」
「?」
「闘技場の『試合』以外であの興猫と戦った相手は、ほとんどが話しを聞ける状態じゃなくなってるもきよ」
「そ、それって……」
「マ、早いハナシ、再起不能か殺されちゃってるか、もき」
「そ、そんな……!」
(乱世……!)
「でもま、この闘技場じゃさすがにそこまでのコトはしないもき。さっきも言ったように、不慮の事故でもなく死傷者が出れば、それはトラブルってことになるもき。面倒ごとは避けたいモンもき」
「そ、そうですか……」
「いや……安心はできない」
「え……?」
「手加減をする余裕が互いに無ければ……不慮の事故は起こりえる……!」
「…………!」
「確かに……なんか、今日の興猫は前に見たときより……ずっと動きが早いもき……」
「……乱世のほうも本気、だからだ」
「アニキもこないだのシェリスとの戦いより、ずっと早いもきね……」
「そ、それじゃ……!」
「………………」
(私は……あんな乱世は……知らない……)
(あんな戦いをする乱世を……)
(あんなに……『強い』乱世のことを……!)
※ ※ ※
「く……っ!」
的確に顔の中心線を狙ってきた手刀を、寸前のところでかわす。
「ふふん……♪」
即座にその腕を捕らえようとするも……やはりスピードでは敵わない。あっという間に距離を離されてしまう。
闘技場のルールなのか、それとも本人がそう決めたのか……。
今回は武器の類は使ってこない。
それに――。
「さっすがお兄ちゃん。動きを殺すだけで、こっちは腕一本、持ってかれちゃった♪」
興猫の左腕には、力が入っておらず、だらりと垂れたままだ。
先刻……ぎりぎりのとこで捉えて極めたときの感触からすると……『今日の腕』はあの時のような防御力は無かった。
同様に、体そのものも前回のような鉄板のような手応えはない。
それでも見てくれからすれば大した防御力ではあるものの、とりあえず人間が何かしらの防具を装備している程度の範疇だったが……。
「ふざけるな。その程度……ハンデとも思っていないだろうに」
「わは♪ やっぱバレてた」
引き換え、俺は……右目の視界を奪われている。
直撃ではなかったものの瞼の上の傷は、存外に深く、出血が酷い。
加えてその前に右足に喰らった打撃のダメージも浅くは無い。
アクセラのギアを早々に一段上げていなければ、誇張なしに足そのものを持っていかれていてもおかしくは無かったろう。
「失敗しちゃったにゃあ。こんなことなら、ちゃんと、戦闘用の『装備』にしておくんだった♪」
「……ハンデを貰ったのは、俺のほうか?」
「ま、そう思っちゃってもいいけど? でも……闘いってのは、いつも準備万端、コンディション万全でやるもんじゃないでしょ?」
「まぁな……」
アクセラのギアを、断続的にとはいえ……二段に上げても、これか。
(三段は……危険、だが……)
「……いくよん♪」
軽い言葉を其処に残し、興猫の姿が視界から消える。
(ちっ……!)
また、死角からか……!
「……サード……ッ!」
死角からの攻撃を右腕に掠らせながら回避する。
首を巡らせて視界を確保する暇もままならない。
咄嗟にアクセラを防御面に回し、直撃を避けるのが精一杯だ。
「まだ……ッ!」
俺の右腕を掠めたまま、興猫は更に深追いを仕掛けてきた。
しかし、アクセラの領域内で防御できたこともあってか……コンマ1秒での追撃では遅い。
俺は血の流れ込んできて居ない左目の隅にその姿を捉えることができた。
「迂闊っ……!」
「ごふっ……!」
攻撃を避けた時の勢いで生じた捻りをそのままに薙いだ左足が興猫の脇腹を捉えた。
(が――浅い――っ!)
直前に防御へ偏っていたこと、姿勢が僅かに不自然だったこと。
サードの威力こそ乗っていたものの、致命打にはなっていない。
興猫は蹴られた衝撃をそのままに……再び距離を開けた。
「げほっ……! げほっ……! さ、さすがおにーちゃん……一発もらうと……キツいわ……。でも……!」
「………………」
「カラダ張った甲斐はあったにゃ。おにーちゃんのそれ……やっぱし連続はできないみたいね」
「…………」
やはり。
それを確認するための無理な深追いか……!
サード以上のギアは、未だに負担が大きすぎる。
それゆえ必要を迫られた攻撃か防御かのタイミングで……刻むように上げ下げを調整しなければいけない。
しかも、アクセラのギアは基本的に一段抜かしで上げることはできない。
だからサードを突発的に行うためには、常にセカンドを維持する必要がある。
並の相手ならば、急速に上げることでも間に合うだろうが……。
この興猫相手に、今更温存策でファーストかそれ以下に下げてしまえば、一気にその隙を狙われるに違いない。
(フォース……? フィフス……それは未知の領域だ……!)
アクセラの『ギア』は文字通り、様々な力の伝達比率を変えることで発動させるものだ。
その比率をピーキーにしてやれば、それだけ強力な力を引き出すことはできる。
理論上は、だ。
しかし……それゆえに、あまりにピーキーにし過ぎれば、それに伴って体への負荷は増すことになる。
薄く削りだされた歯車は、脆く……そして壊れやすくなってしまう。
下手をすれば、伝達をする前に破損する恐れだってある。
フォースの領域には過去に踏み込んだことはあるが……。
ほぼ丸三日、箸を持つことも苦痛だったくらいだ。
その上のフィフスともなれば――。
(だが……!)
それは……あくまでこの学園に来るよりもずっと前のこと。
俺もあの時に比べればそれなりに成長もしている。
それは慢心からの考えではない。
あくまでこの興猫という強敵に対するため、必要に迫られてのこと。
フィフスまではともかく少なくともフォース以外では決着は付けられまい。
「お? おにーちゃん……決着つけに来るでしょ?」
「わかるか」
「にゃはは。それ、あたしも賛成。実のところ……こっちも結構、ダメージがキてんだよね……」
「……………………」
「肉を切らせて骨を断つ……おにーちゃんの秘密を確認しようとしてやったんだけど、ちょぉーっと甘く見すぎてた。シクったなぁ……」
その言動は、ブラフではあるまい。
俺のギアが長期連続で使えないものだと判明し、かつ余力があるのなら……。
興猫の側とすればじわじわと俺の体力を奪っていけばいいだけのことだ。
一気に決着をつける、などということにメリットは無い。
それができないのは、言う通り興猫自身のダメージも深刻であり、もはや長丁場には耐え切れないと判断してのことだろう。
もっとも仮にブラフであったとしても、俺の側には選択権はないのだが……。
しばしの間……それぞれに呼吸を整える。
この試合のなか、初めて生じた数秒の『静』。
そして。
「それじゃ――」
「――いくぞ」
俺と興猫は同時に踏み出した――。
(いける……ッ!)
フォース――!
そして――フィフス――に――!
『乱世さぁんっ!!』
な――ッ!?
それは……ほんの数秒の間に過ぎなかったはずだ。
(何故――羽多野の声――?)
「せやああぁぁぁぁぁッ!」
(―――やはり―手刀――狙いは――俺の―心臓――下から――の軌跡――)
「なん……とォーッ!」
(歯車が―――――)
(羽多野――?――椿芽――は――?)
(大丈夫――フォースの速度なら――充分にかわせ――――)
(いや――)
(羽多野――?――椿芽――?)
(――アクセラのギアが―――)
(フィフス――フィフスに――)
(――避けきれない――なぜ――)
(歯車――が――)
(こちらの攻撃は――――それどころでは――心臓――手刀――)
(ギア――――が)
(羽多野の声――――)
(死――)
(ギア――)
(アクセラが――発動していない――!?)
それは心臓が一回、鼓動するよりも短い時間。
ただ情報が、脳の反応として浮かび上がるだけの刹那。
優先順位の筆頭に浮かび上がったのは、何故かアクセラが解除されているという事実。
もう――遅い。
間に合わ――――
※ ※ ※
「乱世ーッ!!」
……椿芽の声が聞こえた。
俺は。
「……………………」
そして興猫は。
「……………………」
「俺の……負け、か……」
手刀は躱した。
その鋭利な右手の刃は、咄嗟に捻った俺の脇腹をかすめ……左腕に絡め取られている。
アクセラは途中で解除されたが……既にそれまで発動していたサードの余韻、勢いが残っていた。
急所を避けることだけに集中するのであれば……それでも充分だった。
しかし――。
俺の体は無防備にも程があるというくらいに、興猫に真正面から凭れるようになってしまっている。
身長差がなければ、ちょうど真っ直ぐに抱き合うかのような姿勢。
当然……俺にはもう反撃する余裕などなかった。
「んー……」
対して興猫は押さえ込まれているのは右腕のみ。
いや……今の俺には、もはやその腕を押さえておく余力もないだろう。
「引き分け……じゃない?」
「なんでだ。俺は……正直、しばらく動けん」
「忘れてる? あたし……左腕、折られてるんだけど」
「足でもなんでも……あるだろう」
「んー……それはそうなんだけどもにゃあ……」
興猫は俺の体に凭れたまま……ずるり、と床に崩れる。
俺も俺で……支えをなくして、同じようにずるり。
「おにーちゃんにぶっかられたとこで……あたしももーダメ」
「そ、そうか……」
ひどく滑稽な態勢のまま……俺と興猫は同時に闘技場の床にへばった。
『ドロー! ノーゲームっ!!』
実況の宣言と共に、会場に巻き起こる歓声――というかブーイング。
「判定も……出たね」
「そうみたいだな……」
「乱世さんっ!」
「乱世……! この……大馬鹿ものっ!」
……頸をそっちに向ける余力さえないが、どうやら椿芽や羽多野が駆け寄ってきているようだ。
「……お仲間、来たみたいよ? よっこらしょ……っと」
興猫は苦笑するようにしてから、難儀そうに立ち上がって、服の埃を払うようにしてみせた。
「……起き上がれるじゃないか」
「気合と根性で♪」
「そうか……」
……やはり見逃されたのは、俺のほうか。
「さてと……あたしもう行こうかな?」
「案内はしてもらってないが……結果オーライなようだ。一応、礼は言っておく」
「ありゃ、律儀ねぇ。そんじゃ、あたしもいっこだけサービスしちゃおっかな?」
「…………?」
「お兄ちゃんには……致命的な弱点がある」
「なに……?」
「それを克服できない以上……次はあたしがあっさり勝つね」
それは……決して、負け惜しみや虚勢から出た類の言葉じゃない。
まるで1+1が2になると言うように……当たり前のことを当たり前に指摘している。
そんなニュアンスだった。
「未熟さならば……思い知ってはいるが……」
「うーん。そういうんじゃないんだけどもなー。おっと、お仲間さんがもう、来るね。また今度……気が向いたら教えてあげる」
「あ……お、おい……!」
「もちろん、またデートにつきあってくれたらだけどもね♪ にゃはは」
無邪気な笑みを向けて……興猫はそのまま背を向けた。
「それまでに……」
「?」
「それまでに……お互い、敵として会わないといいね♪」
興猫は、先刻のダメージなど無いかのように……あっという間に倒れている俺の視界から消えた。
俺はといえば……駆け寄ってきた椿芽に抱き起こされるまで、まるで身動きができない有様だったのだ……。
(俺の――弱点――?)




