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NULL-最も公平で理不尽な監獄-  作者: gongon


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第三十一話 雪原の闘い

人工降雪エリア。


白い雪が静かに降り続いていた。


柔術は雪原の端に立っていた。


第三回戦。


生存者五名。


剛の死亡がアナウンスされた直後だった。


残り一人死ねば終わる。


残り四人。


第三回戦終了。


柔術はそれを理解していた。


だから急ぐ必要はない。


戦う必要もない。


今必要なのは情報だった。


誰が残るのか。


誰が強いのか。


誰が自分にとって危険なのか。


その答えを知ること。


その時だった。


遠くに二つの人影が現れる。


ライ。


そしてリン。


柔術の目が細くなる。


「なるほど」


小さく呟く。


戦う。


そう思った。


だから近付かない。


隠れもしない。


ただ見る。


観る。


知る。


それだけだった。


食堂を柔術が出た後リンは団子を食べに食堂に来たらしかった。


その後例のアナウンス…


2人は見つめ合った後、少しして何も言わずに雪原へと足を踏み入れる


雪原の中央。


リンが笑う。


「少しやろうか」


ライは何も言わない。


一歩前へ出る。


それが返事だった。


リンが肩を回す。


「そうこなくちゃな」


次の瞬間。


リンが消えた。


柔術の目が僅かに開く。


速い。


想像以上だった。


踏み込み。


爆発的な加速。


一瞬で距離を潰す。


拳。


ライの顔面へ。


だがライも反応する。


肘。


受ける。


衝撃。


雪が舞う。


柔術は黙って見ていた。


なるほど。


八極拳はそう入るのか。


さらにリンが連打する。


拳。


肘。


肩。


身体全てを武器に変える。


ライが後退する。


半歩だけ。


だが。


初めてライが下がった。


柔術は記憶する。


距離。


速度。


体重移動。


全て。



今度はライが前へ出る。


膝。


鋭い。


リンの腹へ突き刺さる。


リンの表情が歪む。


だが止まらない。


再び踏み込む。


再び拳。


柔術は思う。


面白い。


ムエタイも八極拳も近距離だ。


なのに。


戦い方が全く違う。


ライは削る。


リンは貫く。


思想そのものが違う。



時間が過ぎる。


二人とも傷付いていく。


血が落ちる。


雪が赤く染まる。


それでも倒れない。


柔術は見続ける。


もし今。


どちらかが死ねば。


第三回戦は終わる。


それで構わない。


むしろ理想的だ。


自分は無傷。


情報も得られる。


合理的だった。


だが。


柔術は気付いていなかった。


自分が少しだけ期待していることに。


どちらが勝つのか。


どんな答えを見せるのか。


知りたかった。



その時だった。


リンの拳がライの肋骨へ入る。


同時に。


ライの膝がリンの腹へ突き刺さる。


衝撃。


二人とも吹き飛ぶ。


雪原へ転がる。


静寂。


やがて立ち上がる。


ライ。


リン。


互いに血まみれだった。


ここだ。


柔術は思う。


ここからだ。


どちらかが死ぬ。


そう思った。


だが。


違った。


リンが柔術を見る。


ライも柔術を見る。


柔術は理解した。


気付かれた。


そして。


リンが笑う。


「興醒めだな」


ライも息を吐く。


「ああ」


柔術の眉が僅かに動く。


なぜだ。


なぜ止める。


今なら勝負がつく。


今なら終わる。


それなのに。


リンは構えを解いた。


ライも解いた。


柔術は理解できなかった。


合理的じゃない。


勝てるかもしれないのに。


なぜだ。



リンが背を向ける。


「今のお前殺したら」


ライが聞く。


「アイツ喜ぶだろ」


神代一光。


その名前は出ない。


だが柔術には分かった。


二人は勝負を捨てたのではない。


選んだのだ。


今ではないと。


その判断を。


その選択を。


柔術は黙って見ていた。



二人が去っていく。


雪だけが降っている。


静寂。


柔術だけが残る。


足元には血。


戦いの跡。


そして決着のない勝負。


柔術は雪を見つめた。


長い沈黙。


やがて小さく呟く。


「なるほど」


風が吹く。


雪が舞う。


柔術は空を見上げた。


今まで理解していたつもりだった。


八極拳。


ムエタイ。


レスリング。


格闘技。


だが違った。


彼らはもう格闘技ではない。


人間だった。


そして柔術は初めて思う。


自分は何を見ているのだろう。


技術か。


思想か。


それとも。


人間か。


答えはまだ出ない。


だが。


知りたいと思った。


初めて。


心から。

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