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卑劣! 勇者パーティに追い出されたので盗賊ギルドで成り上がることにした!  作者: 久我拓人


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~可憐! 激突・魔物の砦で大戦闘~ 2

 騎士はゴブリンの攻撃を最前線で防御。

 戦士はゴブリンがひるんだところを攻撃。

 騎士と戦士が入れ替わりつつ、攻撃と防御を繰り返していた。単純なゴブリンだからこそできる、単純な戦い方だ。

 それでも無傷ではいられない。

 前線で怪我をした者は即座に後ろへと下がって神官に回復してもらう。

 魔法使いは逃げようとしたゴブリンを遠距離魔法で集中攻撃。少しでも横や砦の上から顔を覗かせようものなら、魔法が飛んでくる。だから、ゴブリンも騎士と戦士と戦うしかない状況に追い込まれていた。

 そんな感じで、戦闘は優位に進んでいく。


「あっち!」


 ちなみにあたしは、怪我をした人の護衛をしつつ下がったり、スリングによる投石で弓ゴブリンを発見して牽制したり、ちょろちょろと戦場を動きまわったりしていた。


「う~ん」


 でもやっぱり。

 本格的に仕事がない。

 戦士みたいな攻撃はできないし、魔法使いみたいな攻撃力の高い遠隔攻撃もできない。投げナイフじゃぁ一撃で倒せないので、牽制くらいしかできることがなかった。


「っていうか、ボガートはどうして出てこないんだろう?」


 魔物辞典には好戦的だって書いてあったはず。

 こういう状況の時、真っ先にボガートは最前線に出てきそうなものだけど……


「罠?」


 そういえば、ゴブリンが罠を仕掛けていた。

 それってボガートの指示だろうから、なにかしら罠を張っている可能性があるのかも?


「よし」


 あたしは中衛である場所から横へ、池じゃなくて森側へ大回りする感じで移動した。

 もちろん慎重に。

 魔法使いが狙ってるように、弓ゴブリンが後ろから狙ってるかもしれないし。

 身を屈めつつ、あたしは砦の側面を見つつ、ゆっくりと砦の後ろが見える位置まで移動した。


「見つけた」


 そこには数匹のゴブリンとボガートがいた。

 砦の後ろで集まって何かしてるみたい。

 なにをやっているんだろう、と近づいてみる。

 んーと?

 もしかしたら、火を点けてるっぽい?

 火の弓矢でも作ろうとしているのか、それとも――


「火計……?」


 今、前衛のみんなは前掛かりになってる。押せ押せムードっていうのかな。大量のゴブリンが相手で、ひるむことなく前へ前へと押している状態。

 だから、もう砦に突入する勢いだ。

 もしかしたら、そこで火を点ける計画なのかも?

 稚拙だ。

 バレる可能性の方が多いし、砦に前衛が入るとも限らない。だったら砦前に落とし穴を用意しておく方がよっぽど有効だと思う。

 でも。

 見ちゃったからには邪魔しないといけない。

 なにより、いま砦を燃やされるだけでも、結構危ないかもしれない。燃え上がった砦を見て、騎士のみんなが進めなくなっちゃったらピンチだ。

 まぁ、それ以上に背中に炎を背負うことになっちゃうゴブリンがもっとピンチだろうけど。


「報告しないと。でも、間に合わないと意味ないし……」


 だったら、両方だ。


「ほっ!」


 と、あたしはスリングで石を投げつけた。それと同時に魔力糸で作っていたスリングを解除して、細い紐に変化させて投げナイフの柄にあけてある穴に通す。


「ぎゃぎゃぎゃ!」


 砦の後ろにいたゴブリンが騒ぎながらあたしを指さしてる。スリングの石が命中して、あたしの位置が気づかれたみたい。

 狙い通り!

 でもすっごく怖い!


「こ、こっちだ!」


 くらえ、とあたしはナイフをスローイング……しようと思ったけど、距離が遠いや。

 当たらないし、当たったとしても倒せない。

 ので、おまえ達を発見したぞ~、火計の邪魔をするぞ~、と牽制できたことを良しにしておこう。


「みんな! こっちにボガートがいるよ!」


 と叫んでからあたしはその場を逃げる。

 ゴブリンが迫ってきた――だけじゃなくてボガートまでやってきた。

 やっぱりすごい怖い!

 大人よりも大きい、しかも筋肉ムキムキの魔物が両手に剣を持った二刀流で襲い掛かってくるのだ。

 ボガートがレベル3っていう意味が理解できた。

 レベル1のあたしひとりじゃ、ぜったいに勝てない。

 というか、怖すぎて戦いたくない。

 ふたりいても怖いと思うので、やっぱり三人ぐらいじゃないと戦う気にすらなれないと思う。

 師匠とだったらきっと大丈夫だけど。


「ひぃ!」


 とりあえず一番前に迫っていたゴブリンへ投げナイフをスローイングしつつ、魔力糸で回収しつつ、みんなの元へ逃げる。

 でも、このまま横から合流したらマズイよね。

 陣形っていうの?

 正面同士でぶつかってる騎士の人たちが横からも対応しないといけなくなる。


「だったら」


 あたしは投げナイフを正面の木に投げつけ、魔力糸を伸ばした。慌てて顕現したので、また毛糸みたいになっちゃったけど、ちょうどいいや。

 そのまま走って池の方へ曲がるようにして走れば、真っ直ぐ進もうと思っても魔力毛糸をくぐらないといけない。

 だから、あたしに誘導するように追いかけてくるはず。

 たぶん。

 頭が悪いから、ちゃんと毛糸を伝って追いかけてきてくれるよね?

 と、期待しながらガチャガチャと戦う最前線のゴブリンの横に到着した。


「挟撃だ!」


 嘘だけど、叫んでおいた。

 一匹や二匹が釣れたからそれでいい。

 こっちに振り向いたゴブリンのお腹に投げナイフをスローイングして、うずくまった背中を踏み台にして騎士職のみんなをジャンプで飛び越えた。


「はぁ、はぁ……で、できたー」

「大丈夫だった、盗賊ちゃん」

「だいじょぶ。それよりボガートがくるよ!」

「おおおー!」


 あたしの声に騎士のみんなが返事をした。


「グルァアアアアアアアあああああああああああ!」


 と、同時に咆哮がする。

 ボガートのおたけびだ。

 まるでゴブリンごと吹き飛ばす勢いで――

 砦のボス、ボガートが襲い掛かってきた!

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