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私は自分の弱さを自覚した

 いくら“ガワ”が強くなろうとも、中身が強くなくてはあまり意味がない。

 トントン拍子に事は進み、私はベルさんに身元保証人になってもらい晴れてこの街「グリューン」で新たな生活が始まるのでした。




 と、ここまでがうまく行きすぎていた。




「アンタがベルの言っていた子供か。これから宜しく頼むな」


「よ、よろしくおねがいします」


「ん。事情は全て聞いている。俺も保護者として頼ってくれ」


「はい・・」



 今私はベルさんの旦那さんであるジンさんと顔合わせをしている。ベルさんはキッチンで夕御飯の支度をしているので目の前に座るジンさんと二者面談をしている状態。すごく気まずいです。


 ジンさんはベルさんと同じ種族のエルフ━━やっぱりエルフだった。何だか感動する━━で同じく尖った耳と少しツンツンしている黒髪、ベルさんや私よりも深い海の様な青の瞳の少し少し線の細い顔の男性だ。ベルさんと見比べるとおっとりして見えるために年下に見えるが同い年らしい。


 男性と二者面談は辛い。前世も今世も縁がなく耐性がないので辛い。


 いくら線が細くて中性的に見えても自分より大きい背丈の男性は緊張する。元父親には感情そのものが死んでいたのか何とも思わなかったので、自分がここまで緊張するとは予想外だ。強面じゃなくてもダメだったのね。



「ははは、・・別に無理に話をしなくても良いんだぞ。俺は勝手に話してるだけだからな。返事とか無理にしなくて良いから。あ、でも質問には頷く位は欲しいな」


「はい」



 ガチガチに緊張する私に寂しそうな苦笑いをしているジンさんの頭に急にサラダの盛り付けられた器が結構な勢いで落とされる。



「痛っつ!?」


「っ!?」


「全く 子供を怖がらせるやつがあるかっ」


「━━━っ、いや、自己紹介してだけだろう。何するんだよぉ・・・」



 疑ってはいないがちょっと意地悪な顔でジンさんにサラダの器を渡す。それを当たり前のようにテーブルに置くと少しふざけた調子でキッチンの方に行ってしまった。何か私はしてしまったのだろうか?


 いや、私に気を使ってキッチンに行ったのだ。優しい対応をしてくれたのに素っ気ない態度ですごく失礼なことをした。



 なんて弱いのだろう。どんなに防具や装備を重ね着しても心は弱いままなんだ。強くなりたい。心が。



「私も人の事は言えないけどさ、アイツは不器用だから的外れな事を言ったり人に誤解されたりするけど━━」



 「優しいヤツだから」そう言って私の頭を撫でた。そういえばお婆ちゃん以外に頭を撫でられたのは初めてかもしれない。


 私の反応に勘違いしたベルさんは撫でるのを直ぐにやめてしまった。少し悲しくなった。




 暫くするとキッチンの方から「この器で良いかぁ?」と聞こえてそちらを見るとお昼に食べた時の木の器を掲げて首を傾げたジンさんが居た。ベルさんはそれに頷きながらキッチンに行ってしまった。


 何だか温かいこの場所が自分には場違いな気がして、何だかよく分からないがお腹の中で嫌なものがグルグル巡っている様な感じがした。でも、



「ライトちゃんはトマト食べれる?」


「俺は食えるぞぉ」


「アンタには聞いてない。てか知ってるよ」



 良い匂いのトマトスープをガン見しつつ頷く。トマトは大好物だ。特にスープは一番好きな食べ方である。私の頷きかたの勢いが良かった事とスープを見つめ続ける私に二人は顔を見合せてから優しいく笑いあっていたが、私の関心はスープに注がれていたので気が付かず後日ある人物に指摘されて発覚したのだった。


 我ながら現金な私であったのでした。




 これは大好きなトマトスープに幸せを感じる私を優しく見守る保護者二人との話。



 スープばかり食べる私とジンさんがベルさんに目が笑っていない笑顔で野菜も食べるように言われて怒らせてはいけない人はベルさんだと学んだのでした。






 内面って大事。でも、そう言って大半は外側しか見ない。


 シリアスは今回で終わり。

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