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恋をしたのは、年下の男の子でした。  作者: 藤乃宮 雅之
25/25

~学祭最終日 そして~


「今日はお疲れさま。」

 いつものように、午後7時にかかってきた章浩の電話に綾香が話す。

『綾香さんこそ。いろいろありがとです。』

「あ~。プラネタリウムの件、力不足でごめんね。」

『それはもう良いよ。考えるヤツは同じコト考えてたってだけの話だから。』

 一組内のカップルが先に根回しをしていたそうで、持ちかけたプランは穂莉の協力が得られず、頓挫した形になった。

「明日が最終日だね。今日の疲れとか、平気?」

『まぁ、あいつと会ったんだから無傷ってわけじゃないけど。けど、明日は綾香さんの最後の登校日だからテンションは上がってるよ。』

「そうね。3週間、色々あったけどあっという間だったわね。」

『明日もあるんだから過去形は気が早いよ。明日は先生へ、みんなからのオツカレ会も開催だし。』

「そうね。ハンカチの予備を持って行かなくちゃ。」

 壁のカレンダーに目をやって、感慨に浸る。

「章浩くんだから言うんだけどね。実は、教育実習、ダルいって思ってたの。」

『そうなんだ。来たくなかったの?』

「だって美雄って、私落ちてる学校だし、進学校のトップクラスじゃない? なんかみんなすっごい冷めてて、メガネなんかついっと上げて『先生、その話は受験に関係ないですよね。もっと役に立つ事、教えてください。』とか言われるんじゃないかなんて。」

 ベッドに腰掛けた綾香は、枕カバーの端っこをいじいじと触った。

『それは何かのマンガのキャラじゃない? そんな冷酷機械みたいなヤツそうそういないよ。』

「そうよね。でね、そんなテンションで学校案内してもらってた時に章浩くんに会えたの。」

『ああ、あの時の朝練だね。見惚れちゃってた?』

 からかうような調子で章浩の声が響く。

「うん。かっこよかったよ。」

『・・・。』

「あ、照れた?」

『・・・耳元で、好きなひとからそんな事言われたら、ね。』

 恥ずかしそうな章浩の声に、綾香も照れた。

『それじゃあさ、綾香さん。』

「うん?」

『明日の昼休憩、10分早く教室に戻るから、その時ちょっと一緒に来てくれると嬉しいな。』

「あ・・・」

 六華の顔が浮かんだ。

『どうしたの?』

「あのね、休憩時間って、13時30分~14時よね?」

『うん。タイムシフト表に貼ってる通り。』

「越路さんも一緒、よ・・・ね?」

『うん。急遽変更になってる。僕と大場とりっちゃんと鈴木さんが休憩。』

「あのね、ちょっと聞きたい事があるんだけど。」

 綾香はベッドの上で正座した。

『うん。なに?』

「章浩くん。越路さん、まだ好き?」

『うおう。唐突ぅ。』

 照れ隠しか、章浩が抑揚を付けて答える。

「あの、冗談とかヌキで答えて欲しいの。もし越路さんが章浩くん好きだったら、付き合える?」

 神妙な声で綾香が尋ねる。

『・・・正直言うとね。りっちゃんは好きなタイプだから、好きだって言われたら嬉しいよ。』

(そっか・・・そうよね・・・)

『でも、前にも言った通り、りっちゃんがそう言うコトは無いから。それに、ようやく「教師」って縛りが取れるんだから。ここは僕に、ちゃんと告らせてね。』

 言い聞かせるような声がした。

「・・・それは、嬉しいんだけど。やっぱり何が起こるか分からないじゃない?」

『えーと。綾香さんは、僕がりっちゃんと付き合えば良いと思ってるの?』

 不満そうな声が響く。

「いや、そういうわけじゃぁ・・・」

『じゃあ、明日の13時50分。覚悟して待つように。』


 翌日も店舗は盛況だ。

 メニュー表にある『別料金 萌え萌えきゅん♡』の注文にも、メイド女子たちが慣れて楽しめるようになっていた。


 クラス一番背の高い女子、北村沙織が『通用口』からホールに出て来ると、メイド仲間が声を掛けて来た。

「沙織~、ご指名~。」

「はーい。」

 沙織がチュールパニエで膨らませたミニスカートをふりふりさせながら入り口に向かう。

「やあ。」

 長身で肩幅のがっしりとした男の子が立っていた。

「あ、神崎君。今、休憩?」

「うん。その格好・・・かわいいね。」

 沙織のコスチュームを眺めて、照れ笑いを向けた。

「あ、あはは。その・・・ありがと。そうだ、お客様なんだよね。」

 沙織も顔を赤らめて、ちょっとぎこちない動きで接客位置に立つ。

「あ、それもあるんだけど。その。ちょっと時間取れる? 5分ぐらい。」

「う、うん。ちょっと聞いて来る。」

 お互いがそわそわしながら、沙織はメイド仲間の所から戻って来た。

「あの・・・大丈夫だって。」

「じゃあ、ちょっと中庭まで一緒に来てくれる?」

「う・・・うん。」

 ぎくしゃくしながら二人は店舗から出て行った。

 日曜日ということも手伝って、他校の学生たちの姿も多い。

 模擬店内では一緒に写真を希望するお客さんも少なくない。

 お客さんでごった返してきた13時、先ほど中座していた沙織がそぉっと『スタッフ用出入口』から入って来た。

 その沙織の姿を見てキッチンスタッフの女子たちが歓声を上げる。

「きゃあ、すごいじゃん、沙織。」

「そ、そんなに・・・騒がないで・・・」

 真っ赤になってうつむいた彼女の胸元には『白バラ』がちょこんと咲いている。

「うわお、さっきの男子ね? 確かバレー部の・・・」

 手が空いたメイドチームもわらわらと集まって来た。

「はいはいはいはい。神崎君ですっ。もう、さっき告られてOKしましたっ。これで良いっ?」

 顔を真っ赤にして半ばヤケクソで叫ぶ彼女に、その場の全員が拍手して(たた)え、六華が羨ましそうな目で見つめる。

「はぁ・・・あと30分か。どうしよう、落ち着かなくなってきた。」

 緊張が高まって蒼い顔をする六華に希美が声をかけた。

「ほら、沙織にあやからなきゃ。せっかく休憩時間チェンジしたんだから、しっかりね。」

「うん、ありがと。希美。」


 レジカウンターの綾香も腕時計を気にしてそわそわしていた。

「先生、それじゃ、休憩入らせてもらいま~す。」

 義信が下げ物をトレイに乗せて綾香に声を掛ける。

「あ、はい。おつかれさま。」

 返事をした綾香は、接客している章浩に再び目をやった。

「オーダー入ります。5番。シフォンケーキセット。飲み物はタピオカミルクティーで。」

 通用口に声を掛けて、伝票カードをキッチンスタッフに渡す。

 数分後、給仕を終えた章浩が綾香の傍にやって来た。

「ちょっと残業しちゃった。これから休憩入ります。」

「は、はい。ごくろうさま。」

 章浩は綾香の耳元に顔を近づけた。

「それじゃ、50分に戻って来るから、よろしく。」

「う、うん。」

 生唾を飲んで、ちらりと通用口のほうを見ると、制服に着替えた義信と六華がこちらを見ていた。

 章浩が通用口に戻る。

「一色。ようやく終わったか。学食行くにも、りっちゃんが一色が居ないとイヤだって駄々こねるから。」

「ち、ちがっ、駄々なんかこねてないよ。一緒が良いんじゃないかって言っただけっ。」

 パーテーション越しに義信と六華の声が聞こえた。

(はぁ~。いよいよか。昨日の電話の口ぶりだったら、越路さんフラれちゃうのかな。でも、章浩くんも好きなタイプだって言ってたし・・・目の前で告られたりしたら、情にほだされたりして・・・そのまま・・・)

「あの、支配人。」

「うえっ、は、はいっ。」

「ご主人さまがお出かけです。お会計、お願いします。」

 メイド服の女子が伝票カードを持って、少し太めの男子を伴ってレジカウンター前に並んでいた。


 13時50分が近づくにつれ、綾香もだんだんと落ち着かなくなってきた。

(こ、告白かぁ・・・この前は弓道場で突然の告白で、立場上保留にしてもらってたけど。今日は学祭での告白イベントで・・・私も好きだし・・・今日でここの「教職員」じゃなくなるんだから別に気兼ねなんか要らないのよね。えーと、返事はやっぱり年上の女性として落ち着いた感じが良いかしら・・・それともシンプルなほうが感じ良いかな・・・)

 店内も少し落ち着いてきて、慌ただしかったキッチンからの調理の音が鎮まってきた。

(そ、そろそろかな。)

 綾香はチラチラと『通用口』の方を気にしていた。

「ねえねえ。村崎先生、落ち着かないね。」

「うん、そわそわしたり、一人でにやにやしたりして。見てる側からしたら面白いよね。」

 壁の花をしている手の空いたメイドの子たちが、ひそひそと話をしている。

 カラカラと教室の後ろの扉、『スタッフ用出入口』が開く音がした。

 綾香はレジカウンターから急いで飛び出して、通用口から中を覗く。

 そこには顔を両手で覆った六華が泣きながら立っていた。

(あ・・・これは・・・)

「越路さん・・・」

 綾香が声を掛ける。

「・・・せんせぇ・・・」

 六華が小走りに駆け寄る。

「越路さん、がんばったわね。」

 綾香がそっと六華の頭を撫でる。

「・・・うん、ありがとせんせ・・・」

 涙をぬぐった六華の胸元には、白いバラが揺れてていた。

「!」

「・・・ダメもとで言ってみたんだけど・・・OKだって。長い間想っててくれて嬉しいって・・・」

 涙ながらに話す六華に、はやし立てようと集まって来た女子たちがもらい泣きする。

「良かったじゃん、六華。」

「おめでとう、これで堂々とできるね。」

 口々にクラスメイトは賛辞を述べる。

「先生?」

 六華は、こぼれそうな涙を浮かべ呆然と立っている綾香を見上げた。

「う、うん、良かったじゃない。想いが届い・・・て。」

 綾香はぐっと顔をしかめ、その際、ポトリと涙がこぼれた。

「あ、あの、先生?」

「うんうん、良かった。良かっ・・・ちょっとごめんね。」

 綾香はそのまま扉から廊下へ出た。

 渡り廊下の方へと速足で進み、周囲に人が居ないのを確認すると、壁にもたれ掛かって天井を仰いだ。

(そっか・・・そうよね。彼女のほうが、付き合いが長いし、まだまだキレイになるし・・・章浩くんも中二から好きだった娘だし・・・おめでとう・・・よね。)

「あ、居た居た。こっちに歩いて行ったって聞いたから。」

 聞きなれた章浩の声が廊下に響く。

 綾香はビクッとなって、渡り廊下の方へ走り出した。

「え? ちょっと。先生・・・綾香さん!」

 章浩は駆けて行く綾香の後を追った。

「ちょっと、どうしたの?!」

「おめでとう! よかったじゃないっ!」

 涙声で叫ぶと南館の階段を駆け下りる。

「綾香さん、泣いてるの?」

「泣いてなんかないわよっ!」

 南館の一階を駆け抜け、上履きのまま正面玄関から飛び出す。

「とにかく、話をしようっ!」

「話なんか聞きたくない、聞きたくないっ!」

「綾香さんっ!」

 耳を塞ぐ格好でイヤイヤをして、そのまま体育館前を通り過ぎ、校門の方へ向かう。

 校門のすぐ手前で章浩が綾香の腕を掴んだ。

「はあ、はあ・・・あ、足、速いね・・・」

「・・・・」

 手を引かれた格好で綾香は顔を前に向けたまま荒い息をついている。

「はあ、はあ・・・どうしたの、一体?」

「ど、どうしたの、ですってっ?」

 涙目の綾香がキッと振り返って睨みつけた。

「あんなに甘い言葉でその気にさせておいて。はぁっ、はっ・・・・。残りの学校生活、どうぞお幸せに。私は今日でいなくなるからすっきりするでしょっ・・・」

「なんのこと?」

「こ、この期に及んで、って・・・え?」

 腕をしっかりと掴んで、肩で息をしている章浩の胸には小さな白いバラが揺れていた。

「え、そのバラ・・・越路さんにあげたんじゃないの?」

「なんで?」

「なんでって、越路さんと一緒に休憩して、そこで告白されてOKしたんでしょ?」

「ああ。大場がね。」

「へ?」

 目を見開いてしばらく章浩を眺め、状況の整理をしようとフリーズする。

「いや、だって、越路さん、中学の時、告白断って、でも高校に入ってから好きになったって。」

「うん。大場をね。」

「はいぃ?」

 目をぱちぱちさせる。

「僕がりっちゃんフラれたのが中二、大場が中三。それでも友達だから、そのまま今に至る。解る?」

 綾香はその場でぺたんと腰を落とした。

「え、え、じゃあ、越路さんが好きだって言ったのは・・・」

「大場。大場義信。あいつも一度フラれてるけど、まだ好きみたいだったから、おめでとうだよね。」

「章浩くんが越路さんと一緒だったのは・・・?」

「ああ。一対一じゃあ恥ずかしいからってさ。最初は片付け前に僕が引き留めておいて、そこで告白の算段だったんだけど。ちょっと事情が変わったから休憩時間を調整したんだ。」

「え・・・じゃあ、今までの私の・・・」

 腰を抜かしたようにへたり込んだ綾香は、微笑んでいる章浩を見上げた。

「あ、りっちゃんが僕に告ると思ってたんだね。だからやたら聞いて来た訳だ。」

 納得顔の章浩は綾香の腕を引いて、よいしょと立たせた。

「『その気にさせておいて』って、その気になってくれてたの?」

「う・・・」

 綾香は顔を伏せる。

「僕が誰かに取られたと思って、泣くほど悔しがってくれたんだ?」

「・・・いじわる・・・」

 ニヤニヤしながら覗き込む章浩に頬を赤くした綾香が目を合わせずにつぶやく。

「綾香さん。僕の気持ち、このバラと一緒に受け取ってくれますか?」

 章浩が胸に挿している白バラを抜いて掲げ、額をこつんと合わせた。

「もっと、年上らしくかっこよくキメたかったのに・・・」

 涙目の綾香はその距離のまま、むくれて章浩を見つめた。

「お返事、二度目の保留は無しですよ?」

「もう・・・わかってるくせに。私も好き・・・初めて会った時からあなたしか見えなかったの。」

 そっと綾香が、章浩の手を包むようにそのバラを受け取る。

 額を合わせた二人の顔が、お互いの唇を求める様に近づく。


 ふと、顔越しに周囲を見る。

 綾香と章浩の周りには在校生、来客、教職員がぐるりと取り囲んで成り行きを見つめていた。

『うわっ。』

 声をそろえて二人が仰け反る。

「あ、どうぞ、続けて。」

 ギャラリーが、目を猫のようにらんらんとさせて促した。



 大盛況の内に『カフェ・鹿鳴館』は無事閉店となった。

 オツカレ会用にキッチンスタッフがクラス人数分パンケーキとタピオカミルクティーを準備してテーブルに並べる。

 義信と顔を赤くした六華が並んで乾杯の音頭を取る。

「『カフェ・鹿鳴館』おつかれさまです。おかげですごく良い学祭の思い出が出来たことに感謝して。かんぱーいっ。」

 みんながカップを掲げて、隣近所の子とカップの頭をぶつけて回る。

「いやー。面白かったね。」

「この衣装、ハロウィンでまた着たいな。」

 立食形式のオツカレ会にクラスが湧く。

「今回は恋愛大収穫じゃない? ね、沙織、六華。」

「う、うん・・・」

「みんなの協力があったからです。ありがと。」

 赤くなって頷くだけの沙織の横で、すっきりしたのか、ちょっと饒舌になった六華が笑顔で答えた。

「それと、せんせい。」

「うぐ・・・」

 パンケーキを頬張る綾香はバツ悪そうに目を逸らせた。

「ウチの学校の歴史に残るぐらいの派手な告白だったね。」

「ロマンチックって言うよりドラマチック。」

「すごいなぁ~。私も追っかけて行けば良かった。」

「・・・・・・もう、かんべんして・・・」

 耳まで赤くなった綾香は縮こまって、隠れる穴が無いかと床を眺める。

「せ~んせ。」

 ちょっとニヤニヤした調子で希美が近づいて来た。

「な、なに?」

 次に何を言われるかビクビクしながら顔を上げる。

「はい。短い間でしたが、ありがとうございました。」

 ガサリとビニールフィルムの音がして、大きな花束が綾香の目の前に差し出された。

「え?」

「みんなが出し合って作ってもらったんだよ。実習、おつかれさまでした。先生に会えて楽しかったです。」

 クラスのみんなから拍手が起こり、花束を受け取った綾香を包む。

「み、みんな・・・ありがとう。わ、わたし。みんなに、会えてホントに幸せ・・・」

 感涙の涙声に、男子ももらい泣きの涙を浮かべる。

「ほら。一色くんも、ニコニコしてるだけじゃなくて、何か言いなさいよ。校門前であれだけやらかしたんだから、今更恥ずかしいは無いわよ。」

 希美が章浩をけしかける。

「先生。」

 章浩が一歩前に歩み出る。

「先生、いままでありがとう。そして、綾香さん、これからもよろしく。」

 クラスから歓声が上がり、拍手が起こる。

 綾香は涙を流しながら、はい と答えるだけで精いっぱいだった。



「綾香~。お久~。」

 玄磐教育大学の講堂で、香里が声を掛けて隣に座った。

「あ、香里。おはよー。ホント顔会わすの久しぶり。実習どうだった?」

「うん。小学生たちかわいかったよ。最後の日には手作りプレゼントもらっちゃった。綾香は?」

「私は、あのクラス持てて、すっごい良かった。学祭もみんなで盛り上がったし。」

「それにカレも出来たし?」

 いやらしい笑みを浮かべて覗き込む。

「もうっ。でも、このご縁に感謝だな。この実習が無かったら出会えなかったんだし、そうなるとまだ内藤くんの事でムシャクシャしてたと思うし。」

「綾香。すっきりした良い顔してるよ。じゃあさ、今度、ダブルデートしよっか。」

 覗き込む香里に、綾香は驚愕の表情を向けた。

「ええっ。香里、小学生に手ぇ出したの?」

「なんでよ。あんたと一緒にしないで。美術科の藤岡くんよ。」

「いつの間に?」

「綾香が章浩くんとの事悩んで、酔っ払ってた辺りかな。」

「ああ、そんなときもあったわね・・・」

 今思えば、自分の早とちりで、何をうだうだ悩んでいたんだと恥ずかしくなった。

「ねぇ、早速だけど。今日の講義が終わったら『PEPPER=LAND』行かない? 章浩くん居るんでしょ?」

「そうね。6時にはバー・カウンターに居ると思うわ。」

「じゃあ、藤岡くん連れて行くから。綾香はライブハウス直行で待ってて。」

「了解。それまで章浩くんじっくり眺めてるから。」

綾香はにっこり笑って答えると、スマートフォンを引っ張り出してLINEを打った。

『今日、ライブハウスに遊びに行くね。香里とそのカレも来るって。』

 すぐに返事が返って来た。

『了解です。楽しんでくれると嬉しいな。あと、綾香さん。今晩、ウチに泊りに来られる?』

『ばか。楓ちゃんに殺されても知らないわよ。』

『気が変わったら教えて♡』

「ったく・・・この子は・・・」

 綾香がスマートフォン画面を見てつぶやく。

「どうしたの綾香? 楽しそうじゃん。」

「うん。カレと話ししてたから。」

「はいはい。ラブラブね。」

 窓から見える空梅雨の空は、今日も晴れて明るい陽が射していた。


                         終わり




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