第23話「近衛騎士部の美人団長」
マオとミルフィーは隣り合って座っている。その表情から緊張しているのが読み取れる。
二人に差し出した紅茶が冷めきっているのに気がついたお茶汲みの女性は、すぐさま紅茶を淹れなおす。それはつまり、滞在時間が延びたということだ。
「さっきから紅茶に口を付けていないが。もしや紅茶は嫌いかな?」
紫髪を肩ほどまで伸ばした紫眼の女性は、にこやかに質問する。白い団服を着ており、腕章の星の数は三つ。腰には剣を提げている。
「「いえっ!?」」
「あはは。そうかしこまらなくてもいい。私が団長だと知らなければ対応は違っていたでしょう?」
「「そんなことはっ!?」」
「君たちは面白い。息もぴったりのようだね。もしや君たちは恋仲かな?」
「オレとミルフィーはそんなんじゃ!?」
「そういう関係じゃないです!!」
「あはは! 冗談だ冗談。そんなに顔を赤くしてまで否定しなくともいい」
二人の緊張をほぐすために冗談を言って笑う。団服を着ていなければ、誰もが近寄りたくなる美人である。
「レフォナ団長。そろそろ」
秘書に耳打ちされたレフォナは、ひとつ咳払いをして仕切り直す。
「だいたいのことは学園長から聞いている。正直、私は誰がドラゴンを倒したなんてことに興味はない。ドラゴンが倒され脅威は去ったのだからね」
「じゃあなんでオレたちを呼んだの?」
「理由はひとつ。君たちと手合わせ願いたい」
「手合わせ!?」
「ちょっと待って! 近衛騎士最強相手に戦えというの!?」
「そんなに深く考えることはない。私の個人的な興味だ」
「けど、誰がドラゴンを倒したなんて興味ないって」
「ああ。誰がドラゴンを倒したというのには興味はないが、君たちがドラゴンを倒したというのには興味がある」
「オレたちの実力を知りたいと?」
「私の身体が疼いて仕方がない。騎士としての血がね」
レフォナの口元が緩む。団服を着ていなければ、誰もが近寄りたくなる美人だが、団服を着ていれば、誰もが近寄りがたくなる美人である。
※ ※ ※
戦いが終わったあとすぐにミルフィーの聖霊術によってアルトスへと帰っていたコノハは、何事もなかったかのように店番をしていた。客は相変わらず来ないが、今のコノハには都合がよかった。
「ジャンのやつ……大丈夫だろか?」
チクタクと針の音が鳴っていても居眠りをしていない。ただただボーッとジャンのことを考えていた。
店員と客。ただそれだけの関係のはず。これまで客に対して湧かなかった感情が芽生えていた。




