第13話「再びの時計屋」
誰も来ない。あれから誰も来ない。店の扉のベルは、父親が出入りする以外で鳴ることはない。
コノハは何度目かの溜め息を吐く。時計の修理を手伝っていたものの集中力は続かず、作業の大半は父親任せ。時計の汚れを拭き取ったり、指示されたことをする以外に自分は基本足手まといにしかならない。仕方なく店番をするしかないのだ。
「店の成り立ちは分かったけど、やっぱり客が来ないと寂しいものじゃ」
チクタクと時を刻む音が眠りに誘う。ウトウトと意識が遠くなっていく。いっそのこと、眠り時計として売り出したらどうかとすら思えてくる。
目をを閉じて深い眠りに落ちる――刹那、急に店内が騒がしくなった。遂に夢まで見るようになったのかと苦笑しているコノハだが、自分の肩が揺さぶられている感覚に目を開けた。
「よっ!」
「ぎゃああ――ああっ!!」
目の前に立つ金髪碧眼の少年に驚き、反射的に平手打ちをかます。パチンッと実にいい音を響き渡らせた。
「痛――っ!? 何しやがるコノハ!!」
「……ジャン……?」
「居眠りしてるとこを起こしたのは悪かったかも知れねえが、流石にいきなりひっぱたくか!?」
コノハに叩かれた頬を涙目で擦るジャン。
店番しているのに居眠りしていた自分に非があるとすぐに認めて頭を下げた。
「ごめん――すみませんでした!!」
「反省してんならいいぜ。叩かれただけだし」
「何かお詫びをしないとじゃ!?」
「ボクにそこまですることねえ。もう許したし終わりだ」
「感謝するのじゃ。……それはそうとジャン。どうしてまた来た。もしかして懐中時計に不備が?」
「ちゃんと動いてるから安心しな。ちょいと野暮用で来ただけ。この店が通り道でな」
「通り道?」
「言っても理解できねえだろうし、信じられねえだろうから説明は省く。じゃあボクたちはズラかるぜ」
クルりとコノハに背を向けて店を出ていこうとするジャンだったが、後ろから服を掴まされ動けなくなる。
「待つのじゃ。理解できないとは、信じられないとは聞き捨てならぬ。できるできないを決めるのはあたくしじゃ。話し相手が欲しかったところだしちょうどいい。あたくしに話すのじゃ!」
「……分かったぜ。別に逃げたりしねえから離してくれ」
再びコノハの方に向いたジャンは、マオとミルフィーに説明を仰ぐ。どちらかといえばコノハ側に立って二人の話に耳を傾ける。




