第30話「光と闇のレゾナンス」
ドラゴンに向かって駆けるマオ。紫の瞳で鋭く狙いを定めると、右手に握った黒剣をおもいきり振りかざす。
「はああ――っ!!」
これまでどんな攻撃も防いできた硬い鱗を斬るほどに鋭い刃。それはマオとカムアの怒りを具現化したかのよう。
攻撃を受けるドラゴンは、突然の劣勢に動揺を隠せない。魔力を溜めるために休めていた身体を奮い立たせ、周囲に風を起こす。
「こんな風!」
「なんでもないわ!」
向かい風もなんのその。そのひと振りで風を裂いて切り抜け、再び鱗に黒剣の斬撃を浴びせていく。
脚を斬りつけられ身動きが取れないドラゴンだが、決して戦意を失ったわけではない。今度は青い火を纏い反撃する。
「うお!?」
「青い火なんて聞いてないわよ!」
マオは慌てて距離を取る。青い火は火力を増していく。黒剣を振ってみたものの、風のようにはいかない。離れていても熱が伝わり、額から汗が流れ出る。
「火というよりも炎だよ。オレたちの想像の上をいってる」
「どっちでもいいわよ。どちらにせよ面倒なのには変わらないわ」
マオは汗を拭いながらミルフィーを見る。ただ炎には水というだけで見ているわけではない。ミルフィーとヴィーネの力を信じているからである。
ミルフィーはヴィーネと目を合わせて頷く。そこに余計な言葉は必要なかった。水の魔術師と水の聖霊は、青い炎を消火するべく共鳴する。
「「レゾナンス――ヴィーネメシス!!」」
水色の杖を高々と掲げて巨大な水の塊を生成すると、青い炎に向かって放つ。水と火の優劣は、火が炎に変わっても変わらない。
「ありがとうミルフィー! ヴィーネ!」
「さっさと決めるわ!」
マオは突進する。黒剣の先をドラゴンの身体へ突き刺すために。ドラゴンの咆哮が向かってくるのも気にすることなく。それもそのはず――しっかりと白い盾が防いでくれるのだから。
「マオくん!」
鱗を破り肉を刺す。悲鳴を上げるドラゴンに手加減はしない。突き刺した黒剣を引き抜き、左手に白い盾を装備して距離を取る。
「ネルガブリエルとカムアザゼル。見せてやるよドラゴン! これがオレたちの――」
白い盾に黒剣を納め、腰を低く構える。光と闇の魔力を全身に纏いながら、抜刀のように黒剣を振り抜いた。
「――レゾナンス――エンジェラー!!」
光と闇の斬撃がドラゴンの身体を斬り裂く。地面に亀裂が入るほどの一撃が決まると、マオはドラゴンが倒れる姿を見つめていた。




