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第29話「黒剣」

 強気に言い放つカムアだが、脚はガクガク震えてる。


「カムア、無理しなくても――」


「――うっさい! できるったらできる!」


 どうしてそこまでカムアが意地を張っているのか分からないマオは、ネルガの治癒を受けながら呆れてしまう。


「カムア。戦いたくなければ戦わなくてもいいんだ。強制するつもりもないよ」


「アタシは自分にムカついてんの! 何にもできていない自分に! べ、別にドラゴンが怖いわけじゃないんだからね!? この脚の震えは武者震いなんだから!」


「そうか。それなら心強いな。オレは恵まれてる」


「どういう意味?」


「そのままの意味だよ。オレは一人じゃないってこと」


「マオくん、どうですか?」


「うん。だいぶ調子が戻ったみたい。ありがとうネルガちゃん」


 マオは身体の治り具合を確かめるように動かし笑みを浮かべネルガに視線を送ると、いまだ脚を震わすカムアの肩に手を置いた。

 急に肩に触られてカムアは身体をビクッとさせるが、マオの元気な顔を見るや脚の震えが止まる。


「どうやら大丈夫みたいね」


「そっちこそな」


 二人は視線を交わす。目を合わせただけでお互いの気持ちを理解する。そこに余計な言葉はない。言葉を交わさずとも想いはひとつなのだから。


「遅れるなよ、カムア」


「そっちこそ遅れるんじゃないわよ? マオ」


 手を繋いで目を閉じる。それだけで二人には充分。

 赤い魔力と漆黒の魔力が二人の身体を包み込んで消えていく。そこから現れたのは、紫の瞳を宿し、黒剣を右手に持ったマオであった。


「黒い剣とはお前らしいな。流石は堕天使だ」


 片手剣なので片手でブンブンと振っているマオではあるが、実は剣術も素人。当然、太刀筋も滅茶苦茶だ。


「うーん。本当に斬れるのか?」


「失礼ね! アタシはそんなに脆くないわ!」


「おっ? お前喋れたのか?」


「どっから声が出てるのかは分からないけどね」


「オレの身体がスピーカーになってるのかもな」


「とにかく斬れるわ。あのドラゴンをめった斬りにしなさい!」


「乱暴だな」


「手加減なんてしてたら殺されるだけ」


「誰も手加減するだなんて言ってないよ。オレたちの全力をぶつけてやろう」


「その意気ね」


 ドラゴンは魔力を溜めている。攻撃するには絶好のチャンスだ。二人は気合いを入れるため声を揃えて走り出した。


「「レゾナンス――カムアザゼル!!」」 

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