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第16話「形勢逆転」

 学園長からの提案に驚きを隠せないマオ。学園長が放つ存在感に押されてしまう。


「オレなんかが役に立つわけ――」


「――君の協力が必要なのだよ。あの黒いのの脳天にキツいのを叩きつけるためにな」


「叩きつけるって……どうやって?」


「自然の力を借りよう。薙ぎ倒された木々をぶつけてやるのだ」


「……オレは何を……?」


「私を黒いのの頭上までテレポートで飛ばしてほしい」


「テレポート、か。実は、ここまで飛んでくるのにも苦労したんです」


「君のテレポートには何か制限があるのかね」


「最近では、島からマルギアまでなら行き来できます。ただ、テレポート先の魔力を探るのに時間はかかりますが」


「普段の口調で構わぬ。その方が調子もよかろう」


「……じゃあ。テレポートをするには魔力を使うけど、オレが元々持っている魔力だけじゃ足りない。この世界にある魔力を身体に集めてからじゃないと使えないんだ」


「それは私も同じだよ。大きな魔術を使うには必要不可欠だ。だが飛ぶ先はハッキリしている。黒いのの魔力を探ることなど容易ではないかな?」


「でも魔力を溜めるのに時間がかかるよ」


「それは不要。私の魔力を使うがいい」


 学園長はマオに軽く触れる。ドクンドクンとマオの身体に学園長の魔力が溜まっていく。


(これが学園長の! オレの魔力とは比べ物にならないくらい凄い魔力だよ!)


「もともと私は、他人よりも魔力量が多いのだ」


「ありがとう!」


「フフッ。さあ頼んだよ」


 マオはコクりと頷いてドラゴンの魔力を探る。目の前にいる巨大なドラゴンの魔力を探るのに苦労はなかった。


「……!?」


「どうしたかね?」


 マオの表情が曇る。ドラゴンの魔力を感じて違和感を覚えたのだ。


「いや、何でも……!?」


 マオは余計なことを頭を振って払う。今すべきことに集中する。


「大丈夫かね?」


「大丈夫。行けるよ学園長!」


「うむ。頼んだ」


 マオと学園長は、ドラゴンの頭上にテレポートする。

 身体をツルで縛られながら、頭上に違和感を感じたドラゴンは暴れだした。その動きだけで地鳴りが起き、地上に立っている生徒たちは騒ぎだす。


「こんなことで騒ぐなど甘い! 己の足で踏ん張れ!」


 マリクが生徒たちに一喝。すぐに騒ぎは収まった。


「学園長。オレの役目は務めたよ」


「上出来だ。あとは任せなさい」


 学園長は目を閉じる。右手を空に挙げてブツブツと唱える。すると、ドラゴンに薙ぎ倒された木々が次々とひとつに絡み合っていく。まるで木の一本一本が大きなツルのよう。


「凄い。凄いよ。こんな魔術があるなんて!!」


 木と木がツルのように絡み合うことで新たな大木が出来上がる。


「トドメだ!」


 学園長が右手を振り下ろすのと同時にドラゴンの頭上に大木が叩き込まれた。


「やった!」


 攻撃が決まりマオは大喜びする。完全に地面に伏したドラゴンの頭上から元気よく飛び降りた。


「やったなマオっち!」


「やったのはオレじゃないよ。学園長だよ」


 そうニコニコと笑みを浮かべながらマオは学園長の方を向く。当然、学園長も喜んでいるに違いないと思っていた。

 しかし、マオの思いとは裏腹に学園長の顔は曇っていた。ひきつっていた。さっきまでの余裕など消え失せていた。


「……ここまでとは」


 学園長が見つめる先にあったのは、赤い火を身体に纏ったドラゴンと、その火で呆気なく燃やされてしまった大木。ツルも簡単に燃やされてしまい、ドラゴンは飛び上がっていた。


「学園長」


「行くだけ無駄だ。簡単に消し炭にされるのがオチだろう。君はよくやったよマオ君」


 ドラゴンはどこかへと飛んでいく。

 魔術学園一同は、黙って立ち尽くすしかなかった。

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