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第8話「シャキッ!」

 カナンによるマッサージを受けていたサツキは、そのまま吸い込まれるように寝てしまう。仮眠をすること一時間。「一限目が終わったよ」と言う声に飛び起き、外していた眼鏡を掛けた。


「いけんいけん!」


「サっちゃん大丈夫?」


「カナンのマッサージのお陰でだいぶ楽になった」


「それは良かったの。サっちゃんの胸を揉めて私も良かった!」


「どこをマッサージしとるんだ!?」


 カナンの発言に胸を反射的に触る。親友とはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。眠気もすっかり吹き飛んだ。


「調子が戻ったみたいだね。サっちゃんは元気なのが一番なの」


「誰でもそうだと思うけど? と、お喋りはおしまいだ。二限目まで自習にするわけにはいかない」


「頑張るのは結構だけど無理はしないで。サっちゃんが死んじゃったら悲しいの」


「心配してくれてありがとう」


 ベッドから腰を上げたサツキは、乱れた服を整えて保健室を出た。疲れが取れて足取りは軽い。


「ついでに本を取りにいっちゃえ」


 その脚で隣の図書室に向かう。魔術に関する様々な本が棚に入っている。革貼りの厚い本を数冊選んで退室し、教室へと戻っていく途中で学園長と再び遭遇した。


「また会ったね。フフッ、顔色が良くなっているように見えるよ」


「あはは! 自分じゃ分かりませんが」


「明るい方がいい。クラスも自然と明るくなる。まだまだ若いんだ。あまり根を詰めず肩の力を適度に抜いてみなさい。そうすれば生き生きするはずだ」


「あっ!? ありがとうございます!!」


 学園長の言葉に反射的にお辞儀をするサツキ。こんな自分を気にかけてくれることが嬉しくて堪らない。


「学園長室に戻って紅茶を飲むのが私の楽しみだ。アッハッハッ!!」


 顔を上げたサツキの視界に映る学園長の背中。丸腰でも隙がなくただ者ではない雰囲気の中に、誰に対しても寛容な心がチラリと覗く。


「ヤバい……五十五歳のオジサンに一瞬萌えちゃった」


 緩んだ頬を叩いて引き締めると、教室の扉をガラリと開けた。

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