第6話「宣言」
校庭で汗を流す二年生を眺めているカムアとネルガ。ミルフィーも自分たちを見れることが分かった日から、マオとは別行動を取ることも多くなっていた。
「ただただ走っているだけみたいね。これといって変化もないし退屈ね」
「マオくんが一緒じゃないと寂しいです」
「アタシは何ともないわ! ただ、あの女を見ているとイライラしてくる」
「ミルフィーちゃんのことです?」
「そう! マオにベッタリしちゃって。いかにもアピールしちゃって嫌な感じ」
「さっきそこに二人していた気がしたです。いっぱい囲まれてたです」
「けっ! そうやって丸め込もうという魂胆ね」
「カムアちゃん。すごーく怒ってるです?」
「怒ってないわ。ただ気に入らないだけ。マオもマオ! あんな女に鼻の下伸ばしちゃって」
「わたしにはそうは見えなかったです」
「アンタ。そんなことじゃ漬け込まれるだけ。あの女にデレデレしてるマオにも注意しないと駄目」
「大袈裟です。カムアちゃんはヤキモチ妬いているだけです」
「や、妬いてなんかないわ!」
「そういうところ変わらないですね」
カムアの態度に呆れるしかないネルガ。一番に優先すべきはマオの幸せ。それを理解しているため、寂しさを耐えている自分とは対照的に、マオのことなどお構い無しにイライラを募らせているカムアに対し、溜め息をつくしかない。
「あら。こんなところで何をしているの?」
溜め息をついているネルガと、イライラしているカムアの前にミルフィーがやって来た。
案の定、カムアは牙を剥いて敵意を剥き出しにする。
「何しに来やがった! この泥棒猫!」
「泥棒猫? ワタシが貴女から何かを奪ったと言うの?」
「とぼけやがって! マオを骨抜きにしときながらよくもー!」
「骨抜き? いつワタシがマオきゅんを骨抜きにしたのかしら」
「よくもそういうことが言えるわね!」
「ホントに身に覚えがないもの。さっきそうしようと思ったけど」
「やっぱり」
「仕方ないじゃない。ワタシ、マオきゅんに惚れちゃったんだから。骨抜きにしたくもなるでしょ」
「このメス豚!」
「そんなに怒ることないでしょ。マオきゅんは誰のものでもないもの。貴女のでもない……でしょ?」
「そ、それはそうだけど」
「あの。どうしてマオくんを骨抜きにしなかったですか?」
「へっ?」
カムア相手に優勢に話していたミルフィーだったが、ネルガからの不意な質問に言葉を失う。
「好きになってもらうのなら、骨抜きにすればよかったのに」
「簡単に言ってくれちゃってるけど、ワタシがマオきゅんに何をしようとしていたか分かってるの?」
「……キス……ですよね?」
「「――!!」」
ネルガの発した一言に言葉を飲み込む二人。それは同時に、カムアとミルフィーが思っている骨抜きと、ネルガが思う骨抜きとは意味が違うことを表していた。
「どしたです? 二人共、顔が赤いです」
「うっ、うっ、うっさい!!」
「眩しいじゃん!!」
「答えてください。どうして――」
「――とにかく! とにかく負けない! マオきゅんを落としてみせるからっ! これから二人はワタシのライバルじゃん!」
「勝負とあっちゃ負けられないわ! アンタにだけは負けないから!」
ネルガの言葉を遮るように捲し立てて去っていくミルフィーに対し、同じように捲し立てて答えるカムア。この時、二人の思いは不本意にも一つになっていた。
「あの子の前では――」
「ネルガの前では――」
「「――言葉を選ぼう」」




