第5話「お楽しみ」
一週間後。教室の外に貼り出された一枚の紙。『一年定期試合結果』と書かれており、勝ち残った二十人の名前が書かれていた。
「この二十人は注目を浴びるぜ。あちこちに貼り出されているみたいだから、先輩たちの目にも入っちまう」
マオを見ながら「つくづく負けて正解だったぜ」と安堵するジャン。
「試合を申し込まれたりとかない?」
「そんなに緊張しなくても大丈夫。マオきゅんは充分に強いじゃん」
「いや。オレよりもミルフィーだよ。結構名前を聞いてるよ」
「心配ご無用。既にマオっちとミルフィーたんは、別の意味で注目されてるからな」
「「?」」
「マオっちに対しては『可愛い』だの『格好いい』だの。ミルフィーたんに対しては『マジ天使』だの『キュート』だの。先輩たちのあいだでも充分に持ちきりだ」
「聞いてないよ! あの試合。先輩たちは見てないのに」
「知らないのか? あの二日間の試合、しっかり写真に収められてるんだぜ」
「写真!?」
「学園長の親友がカメラマンなんだと。プロが撮ったもんだから、かなり綺麗に写ってたぜ」
「ジャン。写真はどこに?」
「外の掲示板だけど?」
「ちょっと見てくるよ!」
「ワタシも行く!」
校舎を出た二人は掲示板を目指し駆ける。すると二人の視界に飛び込んできたのは、掲示板に群がる生徒たち。
「あ、あんなに大勢」
「三十人はいるでしょ」
呆然とその様子を見ていると、二人の存在に一人が気付き、あっという間に取り囲まれてしまう。
「本物はもっとかわいー!」
「マジエンジェルー!」
生徒の群れから聞こえてくる黄色い声。思いもよらぬ形で有名になってしまい、マオは押し潰されそうになる。
ミルフィーも流石に参っていた。自分に注目が集まる分にはよしとしていたのだが、注目のされ方がされ方だ。試合の評価ではなく、見た目での注目はよしとはできない。
「マオきゅん。ワタシの手を」
「え?」
「いいから!」
ミルフィーに押される形でマオは手を握る。すると次の瞬間、二人は屋上へと来ていた。
「……どうなってるんだ!?」
「ワタシの聖霊術よ。念のためにとマーキングしといて正解だったみたい」
「マーキング?」
「ワタシの聖霊は、一度水を撒いた場所へ自由に移動できるの」
「そんなことができるんだ!」
「凄いでしょ! もっと褒めてもいいからね!」
どさくさ紛れに身体を密着させてくるミルフィーに、マオは思わず照れてしまう。
「あんまり密着すると動けなくなるよ」
「いいじゃん。このまま動かなくても」
「そうもいかないよ」
「マオきゅん。ワタシのお願い聞く約束、使ってもいい?」
ミルフィーがマオを上目遣いで見つめる。緑色の瞳を宝石のように輝かせ、頬を赤く染め上げている。
「ミルフィー?」
「ワタシ……惚れちゃった。だから、ワタシの身も心もあげる。受け取って……ね」
ミルフィーの唇がマオの唇に近付く。互いの吐息がかかる距離まで近付いた途端、ミルフィーはサッと離れた。
「…………」
「驚かせてごめん。マオきゅんに惚れちゃったのはホントだけど、今はいい。お楽しみは取っとく主義だもん」
ニッコリ微笑むミルフィーであった。




