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夜会前の2人

「本当に申し訳ありませんでした!!」


アニエスがユウキをひっぱたいた後、城の衛兵たちが何事かと駆けつけ、王子と王女は城のある一室に連れて行かれた。

そして先にアニエスの侍女のリリィが王女の代わりに深く頭を下げて王子に謝罪する。


「姫様の行動をしっかりと監視していなかった私の注意不足です…!本当に申し訳ありませんでした!!」

「いや、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ……。びっくりはしましたけど、こんな遅い時間に歩いていた私も悪いですし……」


そんな王子の言葉にリリィとアニエスは目を見開いた。


「王子は何も悪いことなどございません!それより姫様!!」

「な、何よ……」

「今すぐ王子に謝罪して下さいませ!!姫様が王子に平手打ちをしたのですよ!?」


リリィに強くそう言われ、アリエスは暫く黙った後口を開いた。


「……どうも申し訳ありませんでした」

「姫様!言い方が悪うございます!」

「ちゃんと謝ったじゃない!」


今にも喧嘩しそうな勢いの2人。

それを見て王子はクスッと笑った。


「……何です?」

「いや……仲がよろしいなぁと」

「馬鹿にしていらっしゃるの?」


再び王子はクスッと笑い、首を横に振った。


「……仲がよろしくて羨ましいと思っただけです。東国のことわざで『喧嘩するほど仲が良い』とも言いますし」


王女は何も言い返せなくなり黙り込んでしまった。


暫くの沈黙が続く。

そして突然二人の前にアニエスの父と母、もとい国王と女王が顔を見せた。

王子は素早く立ち上がり、それに続いてアニエスも立ち上がる。


「王子、このようなご無礼すまなかった」

「いえ、特に気にしておりません」

「うむ……そうか」


国王はそう言うと次は娘に目を向けた。


「アニエス、今後一切こんな事態を起こさぬようにしてくれ」

「はい……申し訳ありませんでした……」


アニエスは深く頭を下げた。


「で、例の夜会の話だが」


突然話が変わり、二人は頭を上に上げた。


「アニエス。夜会の間、こちらのユウキ王子と過ごしなさい」

「………はい?」

「王子もよろしく頼む」

「あ、はい……」


国王は唖然とする二人を後にし、部屋を出ていった。

王女はニコリと微笑むと国王の後について行った。


「なんですって……」


アニエスはフラリと後ろによろめき、椅子にすとんと座った。


「大丈夫ですか?姫様」

「大丈夫じゃないわよ……」


アニエスはチラッとユウキに目を向けると彼は無表情で窓の外を見ていた。


(……なによ……)


王女は深くため息をついた。



そして次の日から城中は夜会の準備で大忙しだった。


「姫様、ドレスはどうなさいますか?」

「えー……なんでもいいわよ。私に似合うもので」

「そうはいきませんよ!」


リリィは叫ぶようにそう言う。


「せっかく王子がこの国を訪れて下さったんですよ!なのに姫様は……!」

「あぁ、もう分かったって!」


アニエスはガタッと椅子から立ち上がり、早足で歩く。


「姫様!?どこへ!?」

「どこって、ドレスを選びに行くのよ!!こんな夜会なんて早く終わらせてやるわ!!」

「……!はいっ!」


リリィは嬉しそうに笑って姫の後についた。


一方、ユウキの方はというと


「殿下、いつまでその様子でいらっしゃるのです」

「だって」

「だってじゃありません!」


王子の護衛の1人が大きくため息をついた。


「殿下がこんな様子でどうされるのです?」

「どうするって……どうもしない」

「夜会まで時間がないのですよ!?」

「もう夜会も寝ていたいよ……王女は何を考えているのか分からないし」


一向にやる気を見せないユウキに護衛たちは手を焼いていた。


「とにかく、夜会の時だけは立派なお姿をお見せくださいませ」

「……あぁ」


これで本当に大丈夫なのか、と思っているうちに日は過ぎ、ついに夜会の日になった。




「はぁ…」


アニエスは自室で大きなため息をついていた。

美しいドレスに身を包んで準備はできているのに心の準備はいつまで経ってもできない。


「姫様、そろそろお時間ですよ」


リリィがニコッと微笑んでこちらへ歩み寄ってくる。


「えぇ………」

「姫様なら大丈夫です!この夜会を機に男性嫌いを克服いたしましょう!」

「……それもそうね」


アニエスは夜会の会場へと歩を進めた。




一方、ユウキの方はというと


「殿下!!もう夜会の始まる時間ですよ!!」

「え、待って…」


ドタバタと慌ただしく準備をしていた。


「全く、殿下がギリギリまで剣の稽古やら昼寝やらしてるからですよ!」

「だって…」

「稽古をなさるのはいい事ですがせめて二時間前にはここに戻って来てください!」


使用人の説教に軽くうんざりしながら夜会用の服に袖を通す。


「……固くない?」

「それが当たり前なんですよ!さあ、行きましょう!」


普段ははねてしまっている髪も今日は綺麗に整えられている。


「……落ち着かない……」


重いため息をつきながらユウキは会場へと歩を進めた。



夜会まで後30分。

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