娘の母と王妃が昔からの友人だったと知ってショックを受けていたら公王が魔人となってくれました
俺達はそのまま一気に魔導公国に攻め込んだ。
公国の公都までは騎馬で2日ほどだ。
魔導公国の主力の騎士団はアミが殲滅していたし、後は魔導師団だけだ。
まあ、公国の魔導師団は強力だがこちらには俺とクリスの二大魔術師がいるのだ。
公国の魔導師も俺達の前には敵では無いはずだ。
そう思って公国の公都に攻め込んだが、城門をぶち破った後は抵抗らしい抵抗もなく、王宮に攻め込んだ、帝国とランフォースとアンハームの連合軍はあっという間に王宮を落としてくれた。
あまりにもあっけなさ過ぎて俺は手持ち無沙汰だった。
絶対に変だ。
こんなにあっさりと落ちるのはおかしい。
本来魔導公国は魔導師の国だ。何故公国自慢の魔導師が出てこない?
「陛下、判りました。アナスタージウス・オストホフ公王はノルトハイム王国に向かったとのことです」
ペーテルス騎士団長が宰相補佐官を引っ立ててきて教えてくれた。
「何だと、公王自らノルトハイムに攻め込んだというのか?」
俺は驚いた。
「ノルトハイム王国にいきなり攻め込んだとしても到底勝ち目はあるまい?」
俺は不審に思った。
いくらアーデルベルトが能なしとはいえ、騎士団や魔術師団が王宮を守っているはずだった。
魔導公国の魔術師団がどれだけ優秀であろうとそう簡単に攻め込めたとは思えなかった。
「ふんっ、愚か者め。公王陛下はノルトハイム王国の第一王子殿下が王都で挙兵するのに合わせて王宮を急襲されたのだ。今頃はノルトハイムの王都を占拠しておられるわ」
宰相補佐官が笑ってくれたんだが、
「貴様どなたに話していると思っている」
「ギャーーーー」
ペーテルスが補佐官を思いっきり殴りつけていた。
それは無視して、
「おい、クリス、アミは大丈夫なのか?」
「まあ、ヨーゼフ先生もいるからアミなら問題ないと思うが」
そう言いながらクリスはとても心配そうだった。
うーん。後のことはペーテルス等に任せてノルトハイムにすぐに転移した方が良いか?
俺が考えていた時だ。
「えっ、ちょっと、何!」
クリスがいきなり叫んだ。
俺が改めてクリスを見るのとクリスが消えるのがほぼ同時だった。
「クリス!」
俺は叫んでクリスのいたところに駆け込んだが、跡形も無くクリスは消えていた。
「貴様何をした?」
ペーテルスが補佐官の首を締め付けた。
「いえ、何もしておりません」
補佐官は必死に否定した。
あの消え方は転移だ。
それもあのクリスの慌てぶりから言うと自ら転移したのでは無くて、誰かに呼ばれたみたいだった。
誰に呼ばれたんだろう?
魔術師を呼び出すのは基本的には本人よりも大きな魔力を持つ者だ。
ヨーゼフ先生か、そうか、娘にでも呼ばれたか?
アミのピンチか!
こうしてはいられない。
「ペーテルス帝国第18騎士団長」
「はい」
俺に呼ばれてペーテルスは慌てて俺を見た。
「後のことは貴様に任す。頼むぞ」
「えっ、ちょっと陛下お待ちください!」
ペーテルスの声を無視すると俺はアミの事を思って転移した。
落ちるような感覚になってあっという間に転移空間に入る。
次の瞬間、俺はおそらくノルトハイム王国の王宮とおぼしき部屋に転移した。
目の片隅にアミとクリスを確認する。
それと同時に魔術を放とうとしている公王を見つけた。
「ギャーーーー」
俺は公王を思いっきり蹴飛ばしていた。
公王は壁に激突していた。
「おいおい、魔術をぶっ放そうとしていたぞ。この男。油断するんじゃないぞ。クリス」
俺はクリスらに注意した。
「レオ、公国はほってきて良かったの?」
「二個師団がいるんだ。後はあいつらに任せておけば良いだろう」
クリスが聞いてきたが、勝手に転移したクリスに言われたくないと思ってクリスの方を見て俺は目を剥いた。
「え、ええええ! クリス、お前は何をしているんだ」
俺の目の前でクリスが因縁の相手のディアナを抱きしめていたのだ。それも慰めるように背中を抱いていた。
元々クリスの婚約者のアーデルベルトをクリスから奪って、クリスを冤罪で嵌めて国外追放にさせたのがディアナだ。そのディアナを何故、クリスが慰めている!
俺には全く理解できなかった。
「何しているって、アナを慰めているのよ」
「アナって、お前らいつからそんなに親しくなったんだ?」
俺は呆然としていた。
いや、断罪された後もクリスはディアナにブツブツ文句を言っていたはずだ。
なのにだ、クリスは今問題発言をしてくれた。
「いつからって、昔からよ。言っていなかったっけ?」
「聞いておらんわ! そもそもお前はディアナに嵌められて王宮から追放されたんじゃないのか?」
俺は呆然自失していた。
何だと! クリスがディアナと仲が良かっただと?
クリスの取り巻きの令嬢立ちがディアナを虐めるのを確かにクリスは窘めていたし、俺が帝国の圧力を駆けて婚約破棄を無しにしてやろうかと言ったのに、いらないと言ったり変だとは思っていたのだが、こいつら昔から仲が良かったのか!
「元々私はアーデルベルトが趣味じゃなかったから、アナに譲ってあげたのよ」
「じゃあ、嵌められたっていうのは?」
「あれは計画的よ。婚約破棄して私も自由になりたかったのよね」
「はっ?」
クリスの言葉に俺は開いた口が塞がらなかった。
「ええええ! 礼男は全然聞いていなかったの?」
ディアナがいきなり俺の相性を呼んでくれた。
「おい、待て、俺のことを勝手に呼び捨てにするな!」
「ええええ! 何故? 前世では普通に呼び捨てにしていたのに!」
その後、ディアナが何か訳の判らない事を言ってくれたが、
「前世? 何の話だ?」
俺には全く理解できなかった。
「稲、全く話していないの?」
驚いてディアナがクリスに話していたが、まだ何か秘密があるのか?
「ええい、貴様等! 俺の阿奈に親しく話しかけるな!」
壁に激突して倒れていた公王がそう叫ぶと、立ち上ってくれた。
「何だ? まだ意識があったのか? じゃあ眠らせてやろうか?」
俺はもうやけくそだった。
クリスに今まで嘘をつかれていたのだ。
今まで犬猿の仲だと思っていたクリスとディアナがこんなに親しかったなんて、俺はクリスと親しかったはずなのに、全く話してももらえていなかった。
そんなにショックを受けていないように見えるからアミや小僧は知っているみたいだった。
知らされていなかったのは俺だけみたいだった。
「ふんっ、貴様ではもう俺には敵わないぞ。後で地獄で後悔するが良い」
公王はそう叫ぶといきなり黒い瓶を開けてそれを一気飲みしてくれた。
そして、喉を押えて苦しみだしてくれた。
俺達は唖然とそれを見ていた。
こいつは服毒したのかと一瞬思ってしまった。
でも、そんな訳は無かった。
着ている服が弾き飛び、ドンドン大きくなっていき天井を突き抜けてくれた。
そして、粉塵が収まったところに巨大な魔人が出現したのだった。








