愛娘の母から脅されて、娘が自分の娘だとは二度と話すなと釘を刺されました
おのれ、古代竜め! せっかく俺がアミにお前の父は俺だと告白しようとしたのに、邪魔してくれやがって!
絶対に許さん!
俺は完全に切れていた。
「おい、あれは本当に古代竜だぞ」
「やばいんじゃないか」
騎士達が動揺していた。
おいおい、たかだか古代竜ごときで動揺するな!
そう俺は叫びたかったが、俺も古代竜とはまだ、対戦したことがなかった。
「総員戦闘配置!」
だが、ペーテルス騎士団長は冷静だった。配下の騎士共に全員に指示を出す。
「全員密集体制、固まって迎え撃つぞ!」
騎士達に的確に指示をして騎士が従うのを俺は満足して見ていた。
さすが帝国の騎士団。やるべきことはしっかりしている。
「来た! でかい魔石がネギ背負ってきた」
しかし、いきなりアミが訳の判らない事を叫びだした。
古代竜を見て大きな魔石とかステーキ二万食分とか叫んでいるのだが、絶対におかしいだろう。
どうしたらあの凶暴な生物を見て、鴨ネギに例えられるのか俺には理解できなかった。
「帝国とランフォースはいきなり、我が方を裏切ってノルトハイムと組んだみたいだな。
だが、裏切り者には我が配下の古代竜を向かわせてやるわ。古代竜の威力を身に染みて感じるが良い」
前方の魔導公国軍が何か叫んできた。
あいつらの差し金か、また面倒なことを!
俺がそう思った時だ。
「じゃあ、すぐにやっつけないと」
アミがいきなり飛び出した。
「おい、アミ、どこに行くんだ!」
俺は慌ててアミを追いかけた。
「おい、陛下を守れ!」
「一同、続け!」
せっかく密集隊形で待機していた騎士達も、一斉に俺を追いかけだした。
「待てアミ!」
俺が必死に追いかけたが、アミの足はとても速かった。
「私のお肉、覚悟!」
アミが叫んだ時だ。
「ゲッ」
古代竜がアミを見た途端変な奇声を上げて逃げ出したのだ。
俺には信じられなかった。
何故、俺の可愛い娘を見て逃げる?
信じられないことにアミは必死に古代竜を攻撃して古代竜は必死にアミから逃げていた。
その上、そのファイアーボールが何故か悉く公国軍の中に落ちていたのだ。
古代竜は命からがらアミから逃げていき、俺たちを攻撃しようと進軍してきた魔導公国軍は全滅していた。
「うううう、私のステーキが……」
後には涙目になったアミだけが残っていたのだ。
「アミ、いきなり古代竜に襲いかかるって、心臓に悪いから」
「本当だぞ。いきなり、『ステーキだ!』とか古代竜目指して訳の判らない事を叫んで駆け出すから驚いたぞ」
アミを追った小僧と俺は本当に大変だった。
「いやあ、さすがアミ様は違いますな。公国の騎士達をお一人でやってしまわれるとは」
追いついたランフォース国王が俺を見てお子様は凄いですねと言外に褒めてくれた。
うーん、女としてどうかとは思うが、俺も褒められて満更でもなかった。
ランフォースには何か褒美をやろうと俺は心に決めた。
「陛下、このような優秀な魔術師のお子様がいらっしゃるとは帝国も安泰ですな」
「いや、そうなの……」
俺が喜んで頷こうとしたその横を特大の爆裂魔術が通り過ぎていった……
俺とラフォース国王の時が止まった。
これは本当にやばい奴だ!
「お二人とも何かおっしゃいましたか?」
俺たちの所にクリスがにこやかに笑ってやってきたが、目が笑っていなかった。
「お母様。私のお父様は……」
「アミ、何か言った?」
アミの質問を途中でぶった切って、クリスは切れていたが、
「いや、だから……」
アミはそのクリスの怒りにびくともせずに更に聞き出そうとしていた。
さすが我が子と感心していたら、
「レオ、魔導公国がまだまだ良からぬ事を企んでいるかもしれないわ。レオもラフォース国王も、あの逃げた古代竜を今度は帝国やラフォース王国に向けられたら大変でしょう。今すぐに大本を叩いてしまわないと」
クリスは強引に話題を変えていた。
「それは確かにそうだな、ラフォース国王」
「さ、さようでございますね」
俺たちは仕方なしに頷いた。
「いや、そんな事よりも……」
「何を言っているの、アミ! この事よりも大切なことなんかないわ」
アミの言葉の途中から、クリスが言い出した。
「えっ、でも、私のお父様が誰かというのは私に取って……」
「取りあえずアンハームの危機も救えたから貴方たちはもう帰りなさい」
「ちょっと、お母様!」
「クリスティーネ様!」
クリスは都合が悪くなったので、娘とガキを強引に転移させていた。
「「……」」
その後変な沈黙が俺たちの間を覆った。
怒髪天のクリスが俺たちを睨みつけているのだが……
「レオ、それとランフォース国王」
「「はい!」」
俺たちは蛇に睨まれた蛙だった。
「お二人とも何故か変った意見をお持ちみたいですね」
顔は笑っているが目が怒り狂っている。
これは下手に答えるとまずい奴だ。
俺はランフォース国王を見たが必死にランフォース国王は首を振ってくれた。
仕方がない。
ここは命が大切だ。
「いや、そんなことはないぞ、そうだよな、国王」
「さ、左様でございます陛下」
俺たちは誤魔化そうとした。
「そう、それなら良いのですけど、今後二度とその変な意見を口にはお出しになりませんように。次は命がありませんわよ、よろしいですね!」
「「はい!」」
命の危険を感じて俺たちはクリスの言葉に頷くしかなかったのだ。








