娘に父だと名乗ろうとした時に古代竜が邪魔してくれました
俺達が戦場に転移した時だ。
「地獄に帰りなさい」
クリスの手から凄まじい威力の爆裂魔術が炸裂した。
「「「ギャーーーー!」」」
帝国とラフォースの連中の多くが蒸発した。
両軍が亡くなるのには痛手だったが、皇帝の俺様の命令を聞かない奴らが悪い!
「おーーーー、いきなり、派手にやっているな!」
「遅いわよレオ!」
俺にクリスが文句を言って来た。
「帝国本国に問い合わせしていたんだ。宰相を問いただしても『ノルトハイム王国には絶対に手出しはするな』とくどいほど命じたと弁明していたぞ」
俺は説明した。
「貴様等か! 我が帝国に仇なす輩は」
そんな時だ。そう言ってこちらに騎馬に乗って駆けてくるペーテルス帝国第18騎士団長を俺は確認した。
「レオ、あれ、あなたの国の人間なんでしょ。燃やしても良い?」
「俺の姿を見てまだほざくようだったら燃やしても良いぞ」
俺は冷たく言い放った。
俺の命令を聞かないとは良い度胸をしている。
「化け物! 覚悟!」
とペーテルスはクリスを見て叫んでくれたが、こいつ理解しているのか?
クリスは俺の唯一の皇女の母だという事を!
しかし、その時だ。ペーテルスはクリスの隣にいる俺をやっと認識したみたいだ。
ぎょっとした顔をして、
「こ、皇帝陛下!」
叫ぶのと馬から落ちるのが同じだった。
いや、落ちたように飛んで来て俺の前に跪いた。
「ペーテルス、いつから我が騎士団は俺に対して剣を向けるようになったんだ」
俺は冷たく言い放った。
「も、申し訳ございません。決してそのような事は」
ペーテルスは俺に平伏して謝ってきた。
その様子を見てアミが口を開けて俺とペーテルスを見比べてくれた。
その目は大きく見開かれていた。
そうそう、俺様はこの大陸最強の帝国の皇帝だ。
父をもっと敬えと思いつつ、まだ、父とは口に出せていない事に歯ぎしりしたくなった。
「それでペーテルス、俺がいつノルトハイムに剣を向けて良いと命じた? 宰相に確認したら、ノルトハイム王国に兵を向けることなどないようにくどいほど念を押したと申しておったぞ」
俺は冷たい視線でペーテルスを見下ろした。
「も、申し訳ありません。私の心得違いでございました。ランフォース王国の窮状を鑑み、思わず助力してしまいました」
ペーテルスさんは何回も頭を地面に叩きつけて謝罪していた。
「ほおおおお、そう言うならば、何故、未だに貴様の騎士達は戦っておるのだ?」
俺は未だに戦っている帝国騎士達に激怒していた。
「直ちに止めさせます」
ペーテルスはそう言って伝令を送ると戦いを強引に終わらせた。
そして、騎士達は慌てて俺の前に来て跪いた。
王国の連中もそれにならって跪いてくれた。
皆が跪くのを見て、慌てて、アミが跪こうとしてくれたが、
「別にアミは跪かなくてもいいぞ」
俺は慌ててアミに言った。
クリスは図々しくも立ったままだし、まあ、こいつはいつもそうだ。
クリスは皇女の母という事もあるし、問題あるまい。
それにアミは正真正銘俺の娘なのだ。
別に跪く必要など無い。
その時だ。遠くから騎馬の集団がやってきた。
「おお、これは陛下。我が国の窮状を鑑み、助けに来て頂けたのですな」
ランフォース国王が喜んで駆けよってきたが、俺は一言こいつにも言いたかった。
「き、貴様、アンハームの山姥! 何故陛下の横におる!」
しかし、ランフォース国王はクリスを見て叫び出した。
俺はぎょっとした。
ドオーーーーン!
爆裂魔術がランフォース国王の真横を飛んでいった。
俺はランフォース国王も終わったと思った。
しかし、爆裂魔術はランフォース国王の横を通り過ぎただけだった。
その国王の顔に一筋の血が流れるのが見えたが、それで済んで良しとすべきだろう。
「次にその名を口にしたときは死ぬわよ」
クリスは隣国の国王相手に平然と言い切ってくれた。
いや、少しは相手を敬えよと俺は思ったが、ここは大目に見よう。というか、元々俺の命令に反したのはこやつと騎士団長だ。
「まあ、口に出す言葉には以後気をつけるように」
俺はそう言うしかなかった。
国王は唖然として俺を見上げてくれた。何故庇ってくれないとその目は怒りに燃えていた。
こいつはクリスに逆らうとどうなるか理解していないのか?
お前ら皆殺しにされるぞ!
俺は国王を睨み返した。
まあ、ランフォース国王が死のうがどうしようが大したことはなかったが……
「さようでございますか? ついに陛下も身を固められる時が来たのですな」
しかし、次の瞬間ランフォース国王は喜々として言いだしてくれた。
その言葉に俺は唖然とした。
こいつの口からそんな言葉が出てくるとは、一体こいつは何を考えているのだ?
「何を言っているのだ?」
俺は驚いて国王を見た。
まあ、俺の伴侶がクリスに見えたという事か?
確かに子供は作ったが、まだそこまで話は進んでいないぞ。
「陛下、儂の目は誤魔化せませんぞ。そちらのお方は陛下のお子様でいらっしゃいますな」
しかしだ。国王は俺が言いたくて言いたくて仕方の無かったことを平然とバラしてくれたのだ。
俺が何一つバラしていないにもかかわらずだ。
俺の頭の中でランフォース国王の株が一つ上った。
「えっ、あの小さい子が陛下のお子様なのか?」
周りの騎士達も騒ぎ出した。これはとても良いことだ。クリスの顔が歪んでいるが俺は何一つバラしていないぞ。
俺は頷こうとして思いっきり尻をクリスにつねられた。
「いや、何を言っているのだ。そんな訳はないだろう」
俺は痛さのあまり思わず否定していた。
クリスは何をしてくれるのだ!
「何を申されます。そちらのお子様の瞳は皇家に伝わる金の瞳ですぞ。陛下と同じではございませんか」
しかし、国王が平然と反論してくれた。
そうだ。帝国の皇家に伝わる。金の瞳。これだけでアミは俺の子供の可能性が上がるのだ。
皇帝の血筋であることは100%確実だ。
「痛い! いや、金の瞳とはいえ、俺の子供とは限らないだろうが……」
俺はクリスのつねりに負けて必死に否定したが、本来は大きくそうだと頷きたかった。
「何を言われます。金の瞳は皇家それも魔力の強い真の後継者にしか遺伝しないと言われている伝説の瞳ですぞ。それによく見ると金の瞳を除いても、お二人は顔のかたちといい、雰囲気といい、とてもよく似ていらっしゃいます」
ランフォース国王はとても良いことを言ってくれた。ランフォース王国にはもう少し援助米を増やしてやろうと俺は瞬時に決めた。
「いや、そうは言っても、痛い、痛すぎるぞ! クリス!」
しかし、クリスのつねりに俺は悲鳴を上げていた。俺が言わしているのでは無いから仕方が無いだろうが!
「ラフォース国王陛下。あなたは何か誤解されていますが、私と陛下は何ともないのです。ねえ陛下」
クリスが怖い笑みを浮かべて俺に言ってくれた。これに逆らうと何が起こるか判らないやつだ。最後に念押しするクリスの目は怒り狂っていた。
「そ、そうだぞ。国王」
俺は痛さのあまり思わず頷いていた。
「さ、さようでございますか? まあ、この場はそういう事にしておきましょうか。やむにやまれぬ事情もおありのようですし」
国王がこの話題を終わらせようとしたときだ。
「えっ、ちょっと待ってよ、お母様! レオさんというか、皇帝陛下が私の実のお父様なの?」
アミがクリスに聞いてくれた。
よし、この時を俺は何年待ったことやら。
ついにクリスに本当の父は俺だと宣言する時が来た。
「何を言っているの? アミ、そんな訳ないでしょう」
しかし、クリスは必死に否定してくれた。
いや、もう良いだろう。話してくれても!
「でも、あちらの国王陛下がそうに違いないって」
「あちらの国王陛下の勘違いよ。そうですわね陛下」
クリスは必死に威圧するんだが
「まあ、さようでございます」
ランフォース国王はクリスの脅迫の視線に負けてくれた。
いや、もう少し粘れよ!
俺は叫び出したかった。
その時だ。
「お父様。本当の事をおっしゃってください」
アミが俺のことをお父様と呼んでくれた!
夢にまで見たお父様と!
俺は絶対に頷こうとしてクリスが右手に魔力を貯めるのが見えた。
こいつはやりかねない。
「えっ、いや、それはだな……」
俺は頷きたくて仕方が無かったが、クリスの手の魔力が大きくなってくるのを見て躊躇した。
でも、10年間待ったのだ。ここで父だと告白して、クリスをこの腕に抱きしめたい。
「アミ、実は」
俺が告白しようとした時だ。
「ギャオーーーーーー」
森の向こうから魔物の咆哮がした。
周りの空気が揺れた。
この気配はただものではない。
「陛下、大変です。古代竜です。古代竜がこちらに向かって飛んで来ます」
兵士の一人が慌てて飛んで来て報告してきた。
ボケナス竜め!
折角俺が父だと名乗り出ようとした時に邪魔してくれるとはもう許さん!
俺は完全に切れてしまった。








