騎士団の連中を水でまとめて流したら娘がなついてくれました
「で、ヨーゼフ先生、何か用があったのでは?」
余計な喧嘩のネタを提供してくれたヨーゼフ先生に少しむっとして俺は聞いていた。
「そうじゃ、レオ、また、ゴキブリ騎士共がわんさか現れたのじゃ。駆除してきてくれんか」
第三騎士団のゴキブリ騎士共か!
「判りました。アミを傷つけてくれた奴は俺が許しませんよ」
アミは俺が『アミ』って読んだ時に一瞬嫌そうな顔をしてくれた。
そんな嫌そうな顔をするな! 俺はお前の父親だぞ!
そう言いたかったが、クリスがどこから見ているか判らないから、そんなことを言うわけにもいかない。俺はこのいらだちを第三騎士団の奴らにぶつけることにした。
「ここに、反逆罪のアマーリアを匿っているのは判っている。素直にアマーリアを差し出せばよし。さもないと攻撃するぞ」
大音声で叫ぶ声がした。
拡声の魔道具くらい使えよ! と俺は言いたくなった。
それにここは魔術の塔だ。お前達が攻撃してもびくともしないし、そんなことすれば一人も生き残れないだろう。こいつらは判っているのか?
魔術の塔の恐ろしさを。
一度いたずらで攻撃してみたら大変な目にあった俺様は体が覚えていた。
あんな目には二度と会いたくない。
俺は騎士達のために思ってやった。
「なんだ? 煩いゴキブリ共、また来たのか?」
俺が奴らの前に出てやると奴らは一斉に盾を前に出して、警戒する動きになった。
「誰がゴキブリだ!」
騎士の一人が罵声を発してきた。
「現れたな 反逆者アマーリアに味方する魔術師!」
指揮官らしき男が俺の娘の名を呼び捨てにしてくれた。
「貴様等ごときがアマーリアの名前を口にするな!」
俺は怒りのあまり条件反射で雷撃していた。
ピカッ
ドカーン!
「ギャッーーーー!」
悲鳴を上げて男が吹っ飛んだ。
最初からやり過ぎたみたいだ。
まあ、死んではいないと思うが……
「「隊長!」」
男達が指揮艦に駆け寄る。
「貴様、よくも」
騎士達が俺を睨み付けてくれた。
「おのれ、アマーリアに与する魔術師よ。この塔全て捜索させよ。それを認めないというのならば捜査妨害で逮捕するぞ」
副指揮官らしき男が叫んでくれた。
「ふんっ、やれるものならやってみろ」
俺は馬鹿にしたように挑発した。
「おのれ!」
一人の男が俺に掴みかかろうとした瞬間だ。
「ギャーーーーー」
男が体中を光らせて悲鳴を上げた。
俺が雷撃してやった。
言うほどのことは無い。
少しはまともな奴は言い無いのか?
まあ帝国でも俺に敵う魔術師などいないのだ。
無理だと思うが……
男はピクピク震えると倒れ込んだ。
「き、貴様、こんな事をして許されると思っているのか?」
副指揮官が叫んでくれたけれど、
「さあな、さっさと消えてくれ」
そう言うと俺は手を上げた。
目の前の騎士達がぎょっとした。
皆慌てて盾を出すが、そんなのでは防げないんだよ!
その騎士達目がけて俺は水魔術を発動した。
大量の水が男達の頭の上に現れる。
「「ギャーーーー」」
そして、大量の水は騎士達の頭の上から落ちた。
大量の水は騎士達を流す。
そのまま渦になって全員を中に巻き込むと校外に向けて流れていった。
ザアーーーーっと
あっと言う間に騎士達は見えなくなった。
「ふんっ、桶に逆らうとは本当に愚かな奴だ」
俺はそう呟くと塔に戻った。
「レオさん凄い!」
でも、中に入ると俺はいきなりアミに褒められたのだ。
今までと態度ががらりと変っていた。
「そうだろう。そうだろう。もっと褒めて良いぞ、アミ!」
実の娘に褒められた。
俺は飛び上がって奇声を上げたいほど嬉しかった。
それからアミは俺にその魔術はどうやって発動するのだとか、やり方を根掘り葉掘り聞いてきた。
そして、やってみようとして自分で頭の上から水をかぶっていたんだが……
まあ俺の真似なんていきなり一年生には無理だと思うが、こいつは少しおっちょこちょいらしい。
誰に似たんだ? と思わないでもなかったが……
後でフィンに白い目で見られたが、俺に似たなんて事は絶対にないはずだ!
その後エーレンとか言う女の子も目を覚ましたようだ。
俺はヒューゲルに命じて食堂から食事を六人分持ってこさせた。
アミの分のトレイの一つを俺は持つとそのままアミ達の部屋に向かった。
「あなたは良いかもしれないけれど、私はどうなるのよ。完全にあなたと一緒にお尋ね者になったのよ」
扉の中からアミがエーレンとか言う女の子に文句を言われていた。
まあ、アミに言うのはお門違いだと思うが……
ここで俺が登場すればアミに対しての追及も少し収まるだろう。
「ああ、やっと目を覚ましたのか」
俺はできたての食事を持って部屋の扉を開けた。
俺はヒューゲルに命じて中にある大机に食器を置かせた。
その男を見てアミが驚いた。
「えっ、あなた、確か帝国の」
ヒューゲルは青くなっていた。俺の訝しげな視線を必死に躱していた。
「いえ、あの時は失礼しました。私の事はヒューゲルとお呼びください」
ヒューゲルはアミに対して必死に恭順の姿勢を示していた。
俺が白い目で見ると更に固まっていた。
「えっ、あなた、どうしたの? 私には『お前を友達にしてやる』とか上から目線で言ってくれていたのに」
「あっあっあっあっ!」
ヒューゲルは必死に誤魔化そうとしてくれたが、
「ほおおおお、ヒューゲル、貴様、俺のアミにそんなことを言ってくれたのか?」
こいつの勤務地は北の大地だな。いや、もっと北の氷の大地にでも勤務させてやろう。
「も、申し訳ございません。こうて……ギャッ!」
ヒューゲルが俺に平伏してくれて俺の職名を呼ぼうとしてくれた。
頭を叩くと、
「お前は黙っていろ!」
土下座して言おうとしたヒューゲルの口を押さえて睨み付けていた。
ヒューゲルは俺の命令にコクコク頷くと食べ物を机の上に置くと、黙って一礼して出て行こうとした。
「ヒューゲル、貴様は口がないのか。挨拶していけ!」
ぎょっとした顔をヒューゲルがした。
「レオさん、今黙っていろって命じたのに酷い!」
アミがヒューゲルを庇ってくれた。
「ん、そうだったか? 判った。出て行って良いぞ」
「はい。失礼します」
90度に直角に礼をすると慌ててヒューゲルは出て行った。
「ちょっと、レオさん。態度が酷すぎ!」
俺はアミに文句を言われた。
「ちょっとアミ、こちらの方は帝国の」
エーレンとか言う女の子は俺の正体に気付いたみたいだった。
そう言えば金の足しになると宰相達が屈託して姿絵を書かせて売り出したことがあった。
それが王国にも出回っているみたいだ。
「ああああ、君はランガー商会のお嬢さんだよね。最近帝国に店も出した」
俺はいきなり大声でエーレンの言葉を遮った。
「えっ、はい。ご存じなんですか?」
「当然、だから判っているよね」
そう言ってエーレン近付くと、
「絶対に俺の正体をアミに言わないで」
小さな低い声で念押しした。
女がコクコクと頷いた。
「ということだから、よろしく頼むよ」
俺は脅しすぎたかと慌ててニコリと笑った。
「はい、判りました。レオ様。また、父がお邪魔すると思います」
この娘は商売熱心らしい。俺の脅しなどびくともしていないみたいだ。
「そうだな。その時はエグモントの所にくるようにしてくれ」
俺は外務卿に相手をさせることにした。
「エグモント様ですね」
エーレンは頷いてくれた。
グー
その時にアミノお腹がなった。
「おお、アミの腹時計か」
笑いながらヨーゼフ先生が階段を降りてきた。
「腹が空いたのか。是非とも食べてくれ」
俺はアミ達に勧めた。
「この食事はどうしたんですか?」
アミが聞いてくれた。
「食堂に俺が通っていたときのおばちゃんがまだいてな。そのおばちゃんからもらって来たんだ」
俺はさらりと言った。
昔はいたずらやダンジョン潜ったりしてよく時間外になっておばちゃんに頼み込んで食事を出してもらったりしたのだ。
「そんな事出来るんだ?」
アミが驚いた顔をしていたから今度おばちゃんにも紹介してやろう。
アミが喜びそうだ。
「「「頂きます」」」
皆して食べだした。
ドンドンドンドンと大きな音で扉が叩かれた。
また、騎士団の連中だろうか?
俺がうんざりしたときだ。
「アミ、いるんだろう! 開けてくれ!」
アミの声を呼ぶ声がするんだが、誰だ?
俺の娘を呼び捨てにする男は?
「許可の無い人は入れません」
玄関ではヒューゲルが塩対応していた。当然だ。そんな男は追い返せ!
「何を言う。俺はアミの友人で」
「友人だろうが無かろうが、ヨーゼフ先生かレオ様の許可のないものは入れません」
ヒューゲル良く言った!
俺は頷いた。
「リック、何故私がここにいるのが判ったの?」
でも、アミが男に親しげに声をかけていた。
誰だ? リックとは?
「アミ! 大丈夫だったのか?」
ヒューゲルを退けて、リックと呼ばれた男がアミに駆け寄ろうとしてくれた。
「おっと、アミに勝手に近寄るのは止めてもらおうか」
俺は当然男を止めた。
「な、何だ、お前は」
邪魔されたリックが怒り顔で俺を睨み付けてくれたが、若造の睨みなんか何でもない。
俺は睨み返してやったのだ。








