実の娘に頼まれて癒やし魔術をかけたらその母に蹴り飛ばされました
「おじさん、誰?」
「お、おじさん?」
しかし、夢にまで見た娘の一言がこの言葉だった。
その上、娘はいかにも胡散臭そうに俺を見てくれたのだ。
どこの破落戸だと警戒心も露わに睨み付けてくれるのだが……
まあ、何も知らない娘からしたら俺は知らないおじさんかもしれないが、敵を見るような視線で俺を見るのは止めてほしかった。
「どうしたのじゃ、アミ。何じゃ、その格好は?」
後ろから出てきたヨーゼフ先生を見てアミは一瞬で態度を変えた。そしてあろうことか俺を弾き飛ばしてくれたのだ。
そう、実の父親の俺を!
俺はとてもショックだった。
それは今までほっておいたから諸手を挙げて歓迎してくれるとは思ってもいなかったが、もう少し俺に対して親愛の情というか、優しさという物があってもいいのではないか?
「あ、アミ……」
地面に叩きつけられて痛みを感じつつ俺は涙に暮れた……
「ヨーゼフ先生。私はどうでも良いからエーレンをすぐに治して」
しかし、アミは背中の女の事をヨーゼフ先生になりふり構わず頼み込んでいるのが聞こえた。
弾き飛ばした俺の事は汚い物を見るように一瞥してくれたのだが、それはない。
「酷い状態じゃの。スタンピードにでも遭ったのか?」
「その方が余程ましよ。第三騎士団にやられたのよ」
「何だと、騎士団がやっただ!」
よく見たらアミの顔も少し腫れていた。
おのれ! ノルトハイム王国の騎士の奴らめ! 俺のアミをここまで酷い目に遭わすとは! 絶対に許さん!
俺はギリギリと歯ぎしりした。
「レオ、怒るのは良いがそれよりも先に治療じゃぞ。貴様の方が儂よりも治療魔術は得意じゃろう。二人にかけてやれ」
ヨーゼフ先生が嬉しいことを言ってくれた。
しかし、そんなことをしてクリスが許すのか?
あれ?
クリスがいない?
どうしたんだ?
俺は周りをキョロキョロしたが、確かにいなかった。
そう言えばクリスはアミと魔術学園に行きたい行かせないで喧嘩して、アミが家出してこの魔術学園に来ているのだった。アミノ姿を見た瞬間転移か何かで隠れたのだろう。
「えっ、おじさん。治療魔術かけられるの? 私はどうでも良いからエーレンにかけて」
アミが期待に満ちた目で俺を見てくれた。
クリスがいないのならば俺が書けても良いはずだ。
「判った。アミ!」
俺はヨーゼフに習ってアミの名前を呼び捨てにしてみた。
「まさかまさか名前を呼べるとは……」
俺は感動した。本来話しかけたら殺すとか宣っていたクリスは今はいない。
そもそも俺の所にアミが会いに来てくれたのだ。もっとも、来たのはヨーゼフ先生を頼ってだが……
今まで散々アミに近づこうとしてクリスに邪魔されていたのに、待っていたらアミから会いに来てくれるなんて、俺は感動していた。
「おじさん早く!」
そんな俺をアミがせかしてくれた。
俺は深呼吸をした。
「判った。少し待て、しばらく癒やし魔術など使っていないからな」
俺は呟いた。
帝国にも癒やし魔術師はいるし、俺が帝位を継いでから大きな戦いなどなかった。小競り合いならば騎士団に所属している癒やし魔術師達で十分だったので、俺の出る幕などはなかったのだ。
でも、実の娘に頼られるなんて……俺は感激に涙が湧いていた。
「おじさん、大丈夫? ヨーゼフ先生の方が確実なんじゃ」
そんな俺を見てアミが不安がってくれた。
「話しかけるな。涙が出て来る」
俺は感涙の涙を拭く。
「ヨーゼフ、感激に浸るのはあとにせい。早くせんとその子はやばいぞ」
ヨーゼフまでせかしてくれた。
「判りました」
俺は感動で涙するのを止めた。
こうなればアミの前で出来ることをアピールしてやる。
癒やし魔術はそこまで得意でないがなんとかなるだろう。
俺は持てる力を全て両手に込めた。
「ヒール!」
俺は癒やし魔術をアミとついでにその心配する娘にかけてやったのだ。
キラキラした癒やし魔術の光がアミを包み、アミの傷が塞がって、腫れた頬も引いていく。
そこには超絶美形でかわいらしい俺のアミが立っていた。
夢にまで見たアミが目の前にいる。こんなに可愛いかったんだ。
そんな実の娘に癒やし魔術をかけられるなんて、俺は本当に幸せだった。
「あっ」
アミがふらついた。
ここまで無理してきたのだろう。
俺はその倒れようとしたアミをこの手で受け止めた。
「アミ!」
俺は感激した。まさか、実の娘のアミをこの手に抱きしめられるなんて……
ここまで生きてきて良かった!
神よ、この瞬間に感謝します。
俺が祈ったこともない神に感謝の言葉を述べた。
祈ったことがなかったから天罰が落ちてきたのかもしれない。
腕の中ですやすや眠るアミをもう一度思いっきり抱きしめようとした時だ。
俺の腕の中からアミがいきなり消えた。
「えっ?」
驚いて前を見るとそのアミを抱いた憤怒の形相のクリスがいたのだ。
そして、次の瞬間、俺の顔面にクリスの回し蹴りが炸裂していた。
「ギャッ!」
俺は魔術の塔の壁に頭から激突していた。
娘を抱けて喜んだレオは次の瞬間最悪の状態に!
クリスが二度と会わせてくれない?
続きをお楽しみに!








