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亡国の王女は敵国の隻眼皇太子の独占愛に囚われる  作者: 宮永レン@書籍コミック発売中
第七章

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5.喜ぶ顔が見たくて(ヒーロー視点)

 少しずつ日暮れが早くなってきた。季節は確実に先へ進んでいる。フェザンが視力を失って二度目の晩秋だ。しかしながら一年前の苦痛が嘘のように今は心に余裕がある。


「エグマリン領主より、快い返答がありました」

 執務室の机を挟んでレオニートは主に手紙を渡した。


「ご苦労」

 フェザンはそれを受け取ると、素早く中身に目を通す。


「……これでアルエットが喜んでくれればいいが」


「先方も会いたがっているようですし、この機会を逃すとしばらく訪問できないかもしれませんしねえ」

 レオニートはうんうんと力強く頷いた。


「どういう意味だ?」


「アルエット様の体調がいいうちにという意味ですよ~。皇妃殿下がもうすぐ孫の顔を見られるかもとウキウキなさっておられましたからね」

 悪びれる様子もなく晴れやかな笑顔を見せるレオニートに、フェザンは無言で睨んでからため息をついた。


 抗議すべきは目の前の部下ではなく、正直者過ぎる母親だ。その口の軽さが命取りになりそうだが、それを未然に防いできたのは現皇帝の多大なる愛のなせる業とでもいうべきか。


 フェザンは緩くかぶりを振って、机の上に広げた帝国と周辺国の地図に目を落とした。


「もしこのまま跡継ぎ誕生となれば、今まで皇太子妃の座を狙っていた国もさすがに諦めるでしょう。その前に、今度の舞踏会で殿下がアルエット様を紹介した時点で決定的でしょうけどね」


「当然だ。では何かあればまた声をかける。下がっていいぞ」


「かしこまりました。失礼いたします」

 深々と頭を下げてからレオニートが退室すると、部屋がしんと静まり返った。


「跡継ぎか……」

 権力を偏らせないための駆け引きというのも、程度が難しいものだ。跡継ぎの話など関係なしに、皇太子妃はアルエット以外に考えられないというのに。


 だが、自分とアルエットの間に生まれた子は格別にかわいいのだろうなと、フェザンは頬を緩めたのだった。


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