第8話 ミナト元帥の初出動?下
キャラ紹介
ミナト・ナツメ
本作の主人公兼大部分の語り手。ひょんなことから下っ端→元帥になってしまう戦士。身長160センチ。体重45キロ。黒髪ショートボブ。本人曰くザ・平均的な見た目。あらゆる適正値がずば抜けて低い。かなりのオタクで、可愛いキャラクターが大好きな変態。アニメや漫画の見過ぎで心の声がめちゃくちゃ多い。
シノン・ソラキ
第36代 インターナショナル・アーミーズ元帥。くじ引き元帥決めの元凶。前例がないような突拍子もない思い付きによる改革で組織を指揮した天才。身長171センチ。体重49キロ。パープルヘアーのポニーテール。細身の絞られた身体。美人。低音ボイス。戦闘能力も組織においてずば抜けているとの噂。
マコト・ハルネ
二等戦士将→将軍。性別不詳の可愛らしさ。身長140センチ。体重28キロ。水色ヘアーのワンレンボブ。恥ずかしがり屋。その可愛らしい見た目とは裏腹にとてつもない戦闘力を秘めている。
ナナミ・アキカゼ
一等戦士監→軍師。高飛車な性格の魔法少女。身長145センチ。体重30キロ。金髪で腰のあたりまでのロング。様々なオリジナル魔法を使えるが技名が全部青少年期特有のあの感じ……。
ジョー・モリムラ
一等戦士尉。秘書兼警備戦士隊隊長。身長201センチ。体重100キロ超。全身筋肉のようなガチガチのマッチョにサングラスをかけているコワモテ。忠誠心が高く戦士としての能力値が高い。声がデカい。
※本作品は現実世界の未来寄りの世界観かつ別世界です。ゆえに登場する事象(用語・単位等)は、現実世界のものと同じ場合が多いです。
※本作品はキャラクターの独白やキャラクターの持つ主観が多い場合がありますので、予めご了承ください。
「あなたたちは……だれ?」
私たちが次に瞬きをしたときには、彼女は私たちの背後に立っていた。
一瞬の出来事に混乱を覚えながらも、戦士達はそれぞれ戦闘態勢をとる。
「待って。」
私は声を上げた。
「しかし、元帥……」
手でジョーさんの動きを制する。
「みんな大丈夫」
確信がある訳ではない。けれど、彼女からは攻撃する意思はないように思えた。むしろ、不安を抱えている。そんなオーラが私には分かった。
「私はミナト・ナツメ。お名前教えてくれる?」
「ユイ……フユサキ……」
警戒心はまだあるみたいだけれど、話はできそうだ。
「こんなところで、なにをしているの?」
彼女は目を伏せた。そして、小刻みに震える。拳をぎゅっと握りしめていた。
一間置いて、彼女はぼそっと呟いた。
「……わからない。……私はユイ……それしか、わからない……」
私は一歩、また一歩と彼女に近づいていった。まだ小刻みに震え、すぐ折れてしまいそうな細い小枝のような彼女の元へ。
「来ないで!」
私は止まらなかった。
彼女が私に手を向ける。
それを見たジョーさんは思わず私の元に駆け寄ろうとするも、ナナミがそれを制した。
「待ちなさい。元帥なら大丈夫よ。ステータスは最弱でも、心に寄り添うことに関しては、あいつは最強よ」
「しかしっ……」
「ミナトちゃんを信じましょう!」
「……」
彼女は私に手を向けたままだ。けれど、攻撃する様子はないと私は思う。否、私にはわかる。
彼女の手が私の胸に触れる。目を伏せた彼女を私はそのまま抱きしめた。
「もう、大丈夫。私とお話しよう」
微かに頷いたのがわかった。
話を要約する。彼女は目が覚めると、どことも知らない雪山のなかにいたそうだ。自分の名前以外はなにも憶えていなくて、なにも思い出せない。なにもわからないまま、雪山をしばらく彷徨い続けた。不安になって、怖くなって、ついに心が暴走的になって強大な魔法を放つようになった。そんなとき、私たちが現れた。
要するに彼女は寂しかった。魔法を放つことによる破壊行動だけではどうしようもなくて、私たちに無意識のうちに助けを求めようとしたのだ。
インターナショナルアーミーズ本部にて。
「それで、あの子どうする気なわけ。結局そのまま連れてきちゃってさ」
「私たちに危害を加える気はないみたいだし、もう魔法をむやみやたらに使うこともしないって約束してくれた。だから……ね……」
私は思った。この子をどうにかしてあげたい。曖昧な抽象的な考えだ。けれどそこには意思ではなく、意志があった。
「話は聞いたよ」
そこにいたのはシノン元元帥であった。
「シノンさん……」
「彼女、相当な魔力を持つそうじゃないか。そして、もう危険なことをするようなこともないと、君と約束したんだろ?」
「はい……」
「なら、話は簡単じゃないか。彼女を戦士にすればいい」
その一言は周りのみんなの動揺を感じ取れるほどの衝撃があった。
「い、いいんですか⁉︎」
「君がいいって言ったらいいだろう。君は元帥だぞ。」
「でも、そんな私の考えだけで、しかも、約束はしてくれたけど、あれだけ強い子がもし……」
はあ。と、シノンさんはため息をつく。
「君は、彼女を信じないのか? そして、君はここにいる兵士達に信じられてないとでも思っているのか?」
顔を上げて周りを見渡す。みんな強い目をしている。マコトくんは頷いて、ナナミちゃんはふっと笑った。
「みんなありがとう。シノンさんも。」
私の目をみて頷く、私もシノンさんをみて頷く。
そして、そのまま走り出した。彼女の、ユイのところに。
「ユイちゃんあのね。戦士にならない?」
「せん……し……?」
「そう、私たちと一緒に戦って欲しいの。そして…………私達の仲間になってほしい。」
彼女の表情が動く。
「ユイが……仲間になれるの…………もう、一人じゃないの……」
彼女の頬を涙がつたう。彼女の雪は今溶けたのだ。
「いいの……本当に……」
「うん。これから一緒に頑張ろう。記憶も少しずつ取り戻せばいい。取り戻せなくても、私たいとこれから新しい記憶を作っていけばいい。」
彼女は私をみつめた。
「ユイっ、頑張る……ね。」
「うんっ!」
彼女はどこから来たのか。どうして一人で雪山にいたのか。記憶はなぜ失われたのか。謎は考えれば考えるほど深まるばかりだ。けれどきっと、いつか必ず分かる。
私はユイを強く抱きしめた。
そして思う。私はやっぱり可愛い子が大好きだ。
続
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