第6章 魔法使い
美紀はおなかいっぱいですごく満足して、どこかで休憩したくなった。
「ねえ、どこかで休みましょ」
「そうだね。じゃああそこで休憩しようよ」
シロユキが指差した先には大きな木が2つあり、木にはハンモックが吊るされていた。
「わぁ〜面白そう!」
美紀は真っ先にそのハンモックに向かって走り出した。たくさんいちごを食べて、ついさっきまで動けないくらいだったのに、そんなこと忘れたかのように走った。それで、ハンモックに飛び乗った。
「ねぇ、シロユキも早く来てよ!」
シロユキはほほえみながら少し小走りにやってきた。それで、美紀の隣に飛び乗った。その瞬間、ハンモックが大きく揺れて美紀はハンモックの上でバランスを崩した。
「うわ〜!」
それを見たシロユキは、笑った。
「も〜う、落ちるところだったじゃない」
シロユキはまだ笑っていた。それを見て、美紀もすぐに笑顔になった。
美紀はしばらくシロユキと話をしていたが、いちごの満腹感とハンモックの気持ち良さからうとうとしてしまい、いつの間にか眠ってしまった。シロユキもその隣で肩を寄せ合い、一緒になって眠った。
2時間くらい眠っただろうか?まだ外は明るかった。相変わらず日の光が気持ちよかった。先に目を覚ましたのは美紀だった。そのまま起き上がると、ハンモックが前後に揺れた。その揺れでシロユキも目が覚めた。
「私、眠っちゃったみたいね。すごく気持ちよかったわ」
「当然だよ!僕のお気に入りの場所さ」
シロユキは得意気に言った。そのままシロユキは、ハンモックから飛び降りた。
「さあ、そろそろ帰ろうか?」
「帰るって、おうちに?」
「そうだよ。お母さんも心配するだろ?」
そう言われたら、美紀は無性にお母さんに会いたくなった。
「うん。でも、帰り道分かるの?またさっきの木のところに行けばいいの?」
「僕は知ってるよ。美紀をしっかりお見送りするのが僕の役目さ。帰り道はね、ほら、あそこに道があるだろ?あの道をずっと歩いてくと森に入るんだ。その森の中にあるんだ」
シロユキが指差した先には、いちご畑からずーっと遠くまで続く道があった。そして、その道を目で追いかけていくと、たしかにずーっと向こうに、森らしいものがあった。
「ありがとう。シロユキがいなかったら、私絶対に帰れなかったわ。シロユキがいてくれて、本当に助かったわ」
美紀はそう言うと、シロユキにほほえんだ。
「じゃあ行きましょう」
「あ、ちょっと待って」
美紀が歩こうとするのをシロユキは静止した。
「面白いものを見せてあげるよ」
シロユキはハンモックから降りると、まるで指揮者のように軽やかに両手を挙げた。それで、目を閉じてしばらくぶつぶつと呟いた。すると、おどろいたことにいちご畑の上に雲ができた。そして、その雲から勢いよく雨が降ってきた。
「うわ〜、すごい!どうなってるの??」
あまりの急なできごとに、美紀は今までにないくらい驚いた。
「これはぼくのちょっとした能力さ」
「すごい、魔法使いみたい。ねえ、そしたら雪も降らせられるんじゃないの?」
「雪はムリだよ。ぼくは雨だけだよ」
「それでもすごいわ。そんなこと普通できないじゃない。何でそんなことできるの?」
「人間は生まれる前、お母さんのおなかの中にいるだろ。あそこは水の中なんだ。だから人間は水と仲良しなんだ」
「普通の人間はそんなことできないわ」
「ぼくはおなかの中にいたときのことをよく覚えてるんだ。だから、みんなよりも水と仲良しなんだ」
美紀はその説明にまったく納得していない様子だったが、それよりもすでに美紀の興味は雨のほうにだけ注がれていた。
「ね!だからぼくはこんなに広い畑でも大丈夫なんだ。今度雲の作り方教えてあげるよ」




