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第2章:この世界は学園ラノベに似ている2(!?)

 授業終了のチャイムで俺の意識は本の世界からこの世界に引き戻される。本に栞を挟み、机の中にしまう。

 「さてと、今日のアレはどうしようかねぇ?」

 龍一が席を立ちながら話しかけてくる。

 「ん〜、そうだなぁ。前からリクエストのあった今回の進級試験と入学試験の解答解説で良くね?学年主任あたりに問題貰って、全学年分一回解いてからさ」

 「ん、りょーかい。んじゃ、とっとと職員室行くとするか」

 龍一は俺が小声で話したことを正確に聞き取り、同意してくれた。

 今日は午前中で下校なので時間は十分だろう。なので、一階にある学園長室に行こうとしたのだが、

 「ん?あ、そういや今日お前シフトだろ。放送」

 「あぁ、そうだったな。じゃあ、そっちからだな」

 放送とは、俺や龍一が所属する『放送部』の活動内容である『校内放送』だ。放送部全員でシフトを組み日程を割り振っているのだ。

 「珍しいな、お前がシフト忘れるなんて」

 「いや普通に忘れてた。アレで頭いっぱいだったのかな?」

 「さぁな。行くぞ」

アレ、というのは中学生の頃から、俺と龍一の二人で行なっている配信活動のことだ。中学生の頃から、他人よりも勉強ができた俺たちは、画面越しに見ている誰かに勉強を教えるという、塾のリモート授業のようなことを行なっていた。高校に入ってからは、明光の生徒ということをあえて明かし、その立場を利用してチャンネル登録者数を増やしたものだ。

 革製のカバンを持って教室を出て廊下を横切り、階段を降りる。一階の東側に少し進むと、こじんまりとした部屋の前に立つ。ポケットから鍵を取り出し、鍵を開ける。

 ドアノブを回し、ドアを開けると放送器具がズラリと並んだ部屋の中に入る。龍一も後に続き、

 「いつも通り、見とくわ」

 と、床にカバンを置いて近くにあった丸椅子に座った。

 「邪魔すんなよ、笑わせたりとか」

 そう言って、普段使っている放送器具の前に置いてある椅子に座り、カバンを机の横に置く。

 すると龍一はニヤリと笑い、

 「なんだ、フリか?笑わせて欲しいのか?」

 と、言葉を投げかけてくる。龍一の性格はまだ治っていないようだ。以前から注意しているのだが…

 「ちげーよ」

 と適当に答え、カチリ、と単一指向性のマイクのスイッチを入れ、正面から「あ、あー。マイクテスト」と言ってマイクがきちんと音を拾っているかを確認し、放送を始める。マイクに向けて話し始める前に専用の短い音楽を流すと

 「本日の授業は終了となります、お疲れ様でした。これより3時間後に門が閉まります。自習をする方は、時間をこまめに確認するようにしましょう。これにて本日の放送を終了します」

 そう言うと、放送前と同じ音楽をもう一度流す。マイクのスイッチを切ると、ふぅ〜、と息を吐く。

 「お疲れさん」

 「ありがとよ」

 龍一の純粋な労いに、言葉を返す。彼はカバンを取り、立ち上がって放送室のドアを開けながら、

 「じゃあまずは、試験問題貰いに行くか」

 と言って、俺を急かす。

 「そうだな、じゃあ職員室行くか」

 そう言ってカバンを取って椅子から立ち上がる。

 部屋を出ると鍵を閉め、廊下を西に向かって歩く。しばらくすると、職員室の扉が目の前に現れる。コンコンコン、と三回ノックし、ドアを開け、

「失礼します。二年、黒木です。今回の全学年分の入学・進級試験の問題を二人分いただきに来ました。どなたか対応していただけますか?」

 しばらくすると、親しみやすさで定評のある教頭先生が、職員室の奥から問題を持ってやってきた。

 「やれやれ、今回も問題を欲しがる生徒が多いですねぇ。何かあったんでしょうか?熱心なのはいいことなんですがねぇ」

 そう言いながら、二人分の全学年の試験問題を持ってきてくれた。

 「どうぞ、第二学年の分は、あなたたちが今回解いた問題と採点済みの解答用紙、一・三年のものは解答用紙はありませんが、問題用紙と解答・解説が入っています。これで良かったですね?」

 「はい、ありがとうございます。それでは、失礼します」

 職員室の扉を閉め、振り向いて龍一の分を渡す。

 「あんがとよ。んじゃ、帰るか」

 「おう」

 そう言って昇降口へ、カバンに試験問題を入れながら歩き出す。

 昇降口で靴に履き替えようとロッカーを開けると、黒いローファーと一緒にピンクや水色の手紙がいくつか入っている。

 「「………………」」

 龍一も同じようにロッカーを開けた姿勢のまま固まっていた。どうやら龍一のロッカーにも入っていたようだ。二人で顔を見合わせ、ロッカーの中を見てため息をつく。

 「お前もか、龍之介」

 「あぁ。全く、いつの間に入れたんだか」

 そう言って手紙を一気に取り出す。

 「いやそもそも、なんで今日なんだよ。退学になるかもしれねーってのに」

 「どうする?これ?」

 俺の問いかけに、手紙を取り出しながら

 「俺はいらねーよ」

 「読みもしないのか?」

そこでチラリと手紙を見たが、

 「あぁ。家で捨てる」

 そう冷たく吐き捨て無造作に手紙をカバンの中に突っ込む。シューズから皮靴に履き替え、シューズをロッカーに戻し、

 「お前はそれ、どうするんだ?」

 と俺がした質問をそのまま投げかけてくる。

 「そうだな…、とりあえず名前だけ見る。ちょっと持って」

 そう言ってカバンをロッカーに立て掛け、手紙を預ける。

 「ふぅん。つかお前、好きな人いるのか?」

 龍一の問いに、普通なら慌てるだろう。だが、コイツに嘘は通じないと思い

 「まぁ、な。お前は?」

 靴を履き替えてシューズをロッカーに入れ、肯定しながら尋ねる。

 「もちろん。というか、言ってなかったけど、俺彼女いるぞ?」

 カバンを取ろうとかがみ込んだ瞬間、そんな言葉を軽く言われ、ピタッと動きを止める。

 「………、まさか先を越されるとは」

 「つっても、若干…いやほぼ遠距離恋愛だけどな」

 ぎこちない動きでバッグを取り、

 「へ、へぇ。ちなみに、相手は?」

 と尋ねてみるが、

 「一応、お前もよく知ってる相手なんだが、それより…お前の好きな人は?」

 うまくはぐらかされてしまい、逆に尋ねてくる。

 「一応、お前がよく知ってる相手だ」

 龍一の言葉をそのまま返しつつ、手紙を受け取る。

 一つ一つ開け、名前を確認するが、俺が期待していた女性の名前はなくー勝手に決めつけるのは良くないが、ラブレターを書くような人じゃないと思うー、少しだけガックリしながら家路についたのだった。


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 しばらく歩くと、色とりどりの家が立ち並ぶ住宅街へ入る。

 俺と龍一の家は隣同士で、従兄弟ということもあり、どちらかの家に泊まるということは、日常茶飯事だ。

 龍一は父親は仕事で不在だが、母親がいるので、「今日も泊まりに行くって伝えてくるわ」と言って一度自宅へ帰った。

 俺は玄関の鍵を開け、ガチャリとドアを開ける。

 「ただいま〜」

 と言う俺の声に反応し、少しまが相手から、リビングのドアノブがガチャガチャと音を立てて上下する。

 急いでローファーを脱ぎ、揃えるとリビングのドアの前に立ち、

 「開けるから、ちょっと下がって。

 とドア越しに話しかけると、「「は〜い」」と返事が返ってくると同時に、ドアノブの動きが止まる。

 ドアノブを押し下げ、カチャリとドアを開ける。すると、男の子と女の子がトテトテと走って来る。一人ずつ足にしがみつき、俺を見上げもう一度、

 「おかえり、リュウ!!」「おかえりなさい、りゅう!!」

 と、俺を可愛らしく出迎えてくれた。俺はにっこりと微笑み、小さな頭を撫でながら

 「ただいま。凛空(りく)凜海(りあ)。あとで『りっくん』も来るからな」

 と応じると、俺の双子の甥と姪はパァァっと顔を輝かせ、

 「「りっくんも!?」」

 叫びながら二人してキャッキャッと飛び跳ね回る。子供は風の子元気が一番、うんうん。と頷きながら腕を組み、心の中でそう呟いて目を細める。

 この二人は俺の姉と龍一の兄の間に生まれた双子の兄妹だ。姉夫婦が大学卒業くらいに出産し、現在は三歳児になる。天真爛漫で純真無垢。さらに人懐っこく、好奇心旺盛。親譲りなのか、三歳児にしてはなかなかの美貌だ。俺と龍一からすれば可愛い甥と姪なので、できる限り構ってあげている。

 その時、インターフォンを使わずにわざわざ玄関のドアを3回ノックする音が聞こえてきた。俺と龍一の間で行う合図だ。

 「入っていいぞ、龍一」

その言葉よりも若干早くガチャリとドアが開く。

 「おっじゃまっしま〜す」

 「……、お前、俺の声聞こえてた?というか聞いてた?」

 若干呆れながら問い詰めるが、当の本人はポカンとした表情で

 「声?なんのことだ?」

 「もういいよ」

 若干を越して九割呆れていると、リビングから双子が、元気が有り余っています。と言わんばかりに、トタトタと走って龍一に突撃していく。

 「「りっく〜ん」」

 先程まで「え?声?マジでなんのこと?気になるんだけど」という顔をしていた龍一も一瞬で顔を綻ばせ、

 「お〜凛空・凜海〜。おいで〜」

 両手を広げながらのその言葉に凛空と凜海が「「わ〜」」と言いながら俺にしたのと同じように、龍一の足にしがみつき、「「おかえりなさい!!」」と声を揃えて言った。

 「よ〜しょしよしよし」

 龍一が二人の頭をわしゃわしゃっと少し乱暴に撫でる。少しだけ心配になるが、子供たちはそこから楽しそうに龍一と追いかけっこを始めたので、そっと息をつく。

 「凛空、凜海。クロとシロは?」

 家の中で可愛らしく走り回っていた双子は立ち止まり、こちらを向くと寝室を指差す。

 「「おひるねしてる〜」」

 その言葉を聞き、寝室へと向かう。クロとシロとは、家で飼っている子猫の名前だ。その名の通り、黒猫と白猫で、凛空と凜海が名付けたらしい。最近なのだが、二人と俺の姉が散歩に出かけた時、帰りに雨が降り出して、急いで帰る途中、段ボールの中で震える子猫を見つけたそうだ。幸いにも家族の中に猫アレルギー持ちはいなかったので、うちで飼うことにしたのである。

 俺は大の猫好きなので、大歓迎と言って良かった。静かに寝室のドアを開けると、遮光カーテンを閉め切った暗闇の中から、「「み〜」」という鳴き声が聞こえてくる。極力音を立てないようにしたのだが、起こしてしまったようだ。

 しばらくすると、暗闇の中から二匹の子猫が現れ、俺を見上げてもう一度、「「み〜」」と泣いた。その何とも言えない愛らしさに、にへぇと顔を綻ばせ、ほとんど日課となっている写真撮影を始める。少し暗いが、猫たちのことを考え、スマホのライトをつけずに撮影している。

 写真を数枚と、動画を何本か撮ったところで、スマートフォンをズボンのポケットに仕舞い、

 「おいで〜、シロ〜クロ〜」

 と手招きして、両手で抱き抱える。開けっぱなしにしていた寝室のドアを片手の指一本で閉め、リビングに戻る。すると、制服のブレザーを脱いで、シャツと少し緩めたネクタイに、ベスト姿になった龍一が呆れ顔をしていた。

 「お前、ほんとに猫好きだな」

 「あぁ、お前よりよっぽど可愛い」

 両腕で抱き抱えた双子の子猫に頬を寄せる。「言ってろ」という龍一の声が子猫たちの「ゴロゴロ」という喉をならす音と同時に聞こえた気がしたが、あくまで幻聴として『気がした』に留めておいた。

 ソファに腰掛け、子猫たちを愛でていると、龍一が追いかけるのをやめて、暇になったのであろう双子の三歳児が

 「「おなかすいた〜」」

 と駆け寄ってきた。そろそろ昼時なので、何か作らねばなるまい。子猫を下ろし立ち上がると、俺もブレザーを脱ぎ、エプロンを着ける。

 「龍一、お前も手伝え」

 龍一は、俺の『家に泊まるからには家事を手伝うのが義務だろう』という考えーもちろん俺が龍一の家に泊まる時は何か手伝っているーを一応理解しているようで、「へいへい」と面倒くさそうに龍一の兄のエプロンを身につけ始めた、その時だった。

 ピンポーン、と玄関のインターフォンが鳴る。凛空と凜海が「「だれかきた〜」」と言って玄関に可愛らしく走っていくが、案の定リビングのドアに阻まれる。

 「こんな昼時に珍しいな。龍ノ介、お前見てこいよ。こいつらは俺が引き止めるから」

 「わかった、2人を頼んだぞ」

 龍一は「任せとけって」と言いながら双子の甥と姪に近づき、両手で2人とも抱き上げ、そのままリビンングのソファに腰を下ろす。

 その隙にエイビングのドアを開け、先ほど脱いだばかりのローファーに足を入れ、ドアスコープのカバーをずらし、外の様子を伺う。するとそこに立っていたのはー

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