揺らぎのその先
午後十一時四十七分。
本棚を見る。
先生の最初の本は、
もう一番目立つ場所にはない。
何冊もの本の間。
取り出す。
付箋。
線。
書き込み。
最初の頃の跡が、残っている。
先生から一つ知るたび、嬉しかった。
先生に聞けば、答えがあった。
今は。
先生に聞く前に、答えへ辿り着くことがある。
男から、入口を渡されることもある。
一人で、見つけることもある。
先生の役割は、少しずつ、小さくなっている。
はずなのに。
午後十一時五十八分。
配信ページを開く。
暗い画面。
待つ。
男からメッセージ。
また、新しい話。
読む。
閉じる。
午前零時。
先生が現れる。
声。
少し、安心する。
どうして。
分からない。
先生が話す。
黙って聞く。
先生は、ここにいることを知らない。
先生として会えば、女を知っている。
その変化にも、気づいている。
――俺だけちゃうやろ。
あの言葉を思い出す。
先生は、何を感じたのだろう。
他から、何かを得ていること。
それが、面白くなかった?
そうなら。
嬉しい。
なぜ。
恋だから?
先生が、知らない本の名前を出した。
指が動いた。
検索する。
著者。
別の本。
その先。
知らない名前。
また開く。
先生はまだ、最初の本を話している。
もう先へ行っている。
知る。
喰らう。
まだ、また。
喰らう。
画面の端に、男からの通知。
男は、また餌を運んできた。
先生は、知らないまま餌を落とす。
二人。
違う。
全然違う。
男は、女を見ている。
試す。
罠を張る。
育てているつもりでいる。
先生は、配信の中では、女を知らない。
それでも。
どちらからも受け取る。
男からも、先生からも。
そして、その先からも。
欲しい。
男を。
男の向こうを。
男のやり方を。
先生を。
先生の声を。
先生の言葉を。
女を見ている先生を。
女を知らない配信者を。
全部。
好きだから、欲しいのだろうか。
欲しいから、好きだと思うのだろうか。
分からない。
男が先生の役割を奪えば、先生はいらなくなると思った。
ならなかった。
先生から得られるものを、一人で得られるようになれば、、、先生はいらなくなると思った。
ならなかった。
だから。
恋なのかもしれない。
そう思うと、少しだけ安心した。
理由がついたから。
先生が笑う。
その声を聞きながら、別のページを開く。
先生から、一つを知る。
男から、一つを渡される。
そこから、十を探す。
知る。
辿る。
喰らう。
まだ。
男は、餌を運ぶ。
先生は、餌だと知らずに落とす。
ひとつ残らず、受け取る。
それでも。
まだ、
満たされない。




