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             異世界送魂師ヒルメ  ~涙は地に還り、想いは空へ還る~  作者: ケンボー


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死者の声が聞こえる少女

               異世界送魂師ヒルメ

           ~涙は地に還り、想いは空へ還る~ 第1話


《ソウル・アセンション!》


これからは永久とこしえにお休みなさい……


「ありがとう……」


熊に食い殺されたうさぎがそう言った。


私には死者の声が聞こえる。


そして――


私は死者を清め祓うことができる。


私は葬儀社に勤める22歳。


今日も会社は忙しく、慌ただしい日々を送っている。


本当に大変な仕事だとは思うけど、この仕事を選んで良かったと思う。


大変だけど――


「ありがとうございました」


この一言で全てが報われる。


今日も神葬祭で大忙しだ。


「皇さん、本日もよろしくね」


「宮司様! よろしくお願いいたします!」


「今日も元気が良いね」


「えへへ」


こちらの宮司様は近所の神社様で、私を可愛がってくれる貴重な存在だ。


「宮司様、人は亡くなるとどこに行くのですか?」


「神道では天照大御神の御神威のもとで神職が祓いを執り行い、御霊として祀られ、やがて子孫を守る存在になるんだよ」


「むむむ……難しいのです……」


「そうですね。私が神様の力をお借りして祓いを行い、故人はその家の守り神になって見守ってくれるんですよ」


「わー、いいですね! また会えるみたいでいいですね! そっかぁ、ずっと見守ってくれるのかぁ。よいなぁ」


「ふふふ。皇さんは素敵な考えをお持ちですね」


「えへへ。だってお別れって悲しいじゃないですか。神様って凄いんですね!」


「ふぅ~、やっと仕事終わり。お疲れさまでした。お先に失礼いたします」


今日は頑張ったから夕飯にプリンを付けちゃおう。


そう思いながらルンルンで歩いていると、一匹のワンちゃんを発見した。


白くてモフモフしていて可愛い。


首輪も付いていない。


野良ちゃんかな?


「おいで、おいで。お腹すかせてないかな?」


――その時。


「あっ! 危ない!」


トラックが――


ドンッ!!!!!


「お嬢ちゃん! 大丈夫か!」


ピーポーピーポーピーポー……


「…………」


「んっ……あれ……ここどこ……あっ、ワンちゃん」


声とともに光が差し込んできた。


「お目覚めですか、可愛い娘よ。貴女はそこの犬を庇い亡くなってしまいました」


「そっかぁ……死んじゃったのかぁ……でも一人にしないで良かった。ね、ワンちゃん」


(このような状況でも他を思う気持ちが……ふふふ。この子なら……)


「貴女はこれから転生をし、別世界へ旅立ちます」


「え……て、転生? ワンちゃんは? ワンちゃんはどこに行くの?」


「その子も一緒に転生しますよ」


「良かったぁ。ワンちゃんが一人になったらどうしようかと思って」


(やはり……この子は……)


「よろしい。貴女には私の加護を授けます。犬にも授けましょう。名前を決めてあげなさい」


「えーんー……じゃあ白いからシロ!」


「素敵なお名前ですね。貴女には私が新たな名を授けます。名はヒルメ。夜を照らし、世を祓いなさい! シロよ、ヒルメを守り付き従いなさい!」


「わっ、わっ、わっ、わっ」


「転生が始まりましたね……む……過酷な場所になってしまいましたが、どうか世を祓って下さい」



遥か彼方、炎に包まれた戦場で一人の女性が叫ぶ。


「はぁはぁ……クソ! だめだ、こっちはもう追っ手の手が回ってる!」


「おい! ヒルメだけでも逃がすぞ」


「やっと追い詰めたぞ。てこずらせやがって」


「あ~? テメーにあたしが取れるかよ? 三下がよぉ」


「忌々しい奴め! 貴様! 我を愚弄するか! 指輪とそのガキの命、もらい受けるぞ!」


「やってみろ! おらぁ!!!!」


ローブに身を包んだ男が言う。


「これは……ちょっと困りましたね……」


女が叫ぶ。


「邪魔はさせねえぞ! 行くぞオラぁ! 私はここだぁ!」


男が詠唱を始める。


「慈愛のゆりかご 永久の光 聖なる力を持ち包みたまえ」


「エンジェルズ・クレイドル」


「なっ!? あれは神聖魔法だと!? 貴様ぁ!!」


「元気でねヒルメ。さぁ、ここは通さない。かかってこい!」


「ちっ、どいていろ雑魚が。貴様ら、自分たちが何をやっているのかわかっているのか?」


「貴様らのした事は天界の規律を狂わせる行為だぞ」


「あー聞こえねーよ。ヒルメは私達の希望なんだ。お前らなんかに絶対に渡さねーよ」


「ならば、もろとも死ね」


「隊長!!」


「構わず行け! 希望を絶やすなよ!!」


「いい部下持ってるじゃねえか。さすがあたしの旦那様だな」


「ふふ、光栄ですとも」


「さあ」


「行こうか」


「はぁぁああああああ!!」


光が消えるその時――


「頼んだよ」


「頼みましたよ」


光に包まれた小さな揺りかごが空へと消えていく。



ある日突然、光に包まれた子供と犬が森で発見された。


服には『ヒルメ』と刺繍されていた。


犬の首輪には『シロ』と刻まれていた。


だからジジたちは私たちをそう呼んだ。

※ ※ ※


遥か彼方、炎に包まれた戦場で一人の女性が叫ぶ。


「はぁはぁ……クソ! だめだ、こっちはもう追っ手の手が回ってる!」


「おい! ヒルメだけでも逃がすぞ」


「やっと追い詰めたぞ。てこずらせやがって」


「あ~? テメーにあたしが取れるかよ? 三下がよぉ」


「忌々しい奴め! 貴様! 我を愚弄するか! 指輪とそのガキの命、もらい受けるぞ!」


「やってみろ! おらぁ!!!!」


ローブに身を包んだ男が言う。


「これは……ちょっと困りましたね……」


女が叫ぶ。


「邪魔はさせねえぞ! 行くぞオラぁ! 私はここだぁ!」


男が詠唱を始める。


「慈愛のゆりかご 永久の光 聖なる力を持ち包みたまえ」


「エンジェルズ・クレイドル」


「なっ!? あれは神聖魔法だと!? 貴様ぁ!!」


「元気でねヒルメ。さぁ、ここは通さない。かかってこい!」


「ちっ、どいていろ雑魚が。貴様ら、自分たちが何をやっているのかわかっているのか?」


「貴様らのした事は天界の規律を狂わせる行為だぞ」


「あー聞こえねーよ。ヒルメは私達の希望なんだ。お前らなんかに絶対に渡さねーよ」


「ならば、もろとも死ね」


「隊長!!」


「構わず行け! 希望を絶やすなよ!!」


「いい部下持ってるじゃねえか。さすがあたしの旦那様だな」


「ふふ、光栄ですとも」


「さあ」


「行こうか」


「はぁぁああああああ!!」


光が消えるその時――


「頼んだよ」


「頼みましたよ」


光に包まれた小さな揺りかごが空へと消えていく。


※ ※ ※


ある日突然、光に包まれた子供と犬が森で発見された。


服には『ヒルメ』と刺繍されていた。


犬の首輪には『シロ』と刻まれていた。


だからジジたちは私たちをそう呼んだ。


ジジと村のみんなと過ごし、気が付けば私も16歳になっていた。


「ヒルメ、ごはんじゃぞ。シロもなぁ」


「ハーイ」


「ワウ」


「シロと森行ってくるー! いくよーシロー!」


「ワウ」


「気をつけての~。夕飯には帰ってくるんじゃぞ」


「あっ……うさぎさんが……熊さんに……」


「よしっ」


「涙は地に還り……想いは空へ還る……」


「我が祈りを導とし……魂のあるべき場所へ導かん……」


《ソウル・アセンション!》


浄化の光が包み込み、闇が晴れていく。


「うん、上手く出来たね」


「ワウ」


「うふふ、ありがとうシロ」


光の先から声が聞こえる。


「ありがとう」


「どーいたしまして。ゆっくりしてね」


物心ついた頃から私は死者の声が聞こえた。


この世界では死んだ者は闇に囚われる。


けれど私が祈ると、その闇は晴れていく。


「ヒルメちゃん! よいお肉入ったから持っていきな」


「ヒルメちゃん! 野菜持っていきな」


「ありがとー! みんな持ちきれないよぉ」


「はっはっはっは」


村のみんなはヒルメを自分の娘のように可愛がってくれる。


村のみんなは昔からこうだった。


熱を出した日はジジが一晩中看病してくれて、


泣いた日はみんなが抱きしめてくれた。


みんなやさしいなぁ。


「ジジただいまー! みんないっぱいくれたー!」


「おかえりよ。どれ、夕飯にするか」


夕食はジジが作ってくれる。


いつも私の好きな物ばかり作ってくれる。


ジジってなんでも出来る凄いジジ。


「ジジって何でも出来るよね? 料理も出来るし」


「ワウ」


「ほっほっほっ。長生きじゃからのう」


「服も直してくれたし、ジジ凄い」


「ワウ」


「ほれ、夕飯できたぞい」


「ヒルメよ。お前も大きくなった。この前話した事が真実だ。やはり何も覚えていないのかい?」


「うん。気が付いたらジジのおうちだった。帝国に行けば何か手がかりがあるかなって。帝国は大きいし」


「そうだな。両親の事もわかるかもしれない。そのゆりかごに入っていた指輪の作り方からして紋章が刻まれておるが……帝国の職人ぐらいレベルが無いとわからないな」


「私の親はジジだよ!! 私は事実を知りたいだけだよ……」


「そうかそうか。今日はもう休もう」


「大きくなったのう……」


ジジは、眠るヒルメの頭をそっと撫でた。


「約束は……果たせたかのう……」


※ ※ ※


「ジジ早く~! シロも~!」


「ほいほい」


「ワウ」


「お休みなさい」


「ん……くう……うう」


「また悪い夢でも見ておるのかな……スリープ」


「z……z……z……z」


「ふむ。お休みよ」


「ジジおはよう! シロも!」


「ワウ」


「おはよう。今日が旅立ちだな。いつでも帰ってくるんじゃぞ」


「うん。あたしの家はジジの家だし、ジジが私のお父さんだよ」


「そうか。ありがとうよ。これは旅立ちのはなむけじゃ」


「わー! ネックレス! いいの? 凄い装飾された物だけど……ありがとうジジ」


「ばあさんの形見じゃ。付けてやってくれ」


「いいの? そんな大事な物……」


「大事な物を大事な人に使ってもらうのが一番じゃて」


「ジジ……ありがとう」


「行ってくるねジジ、みんな!」


「気をつけるんじゃぞ」


「行くよシロ!」


「ワウ!」


そして私は知らなかった。


帝国で待ち受ける数々の出会いと別れを。


送魂師ヒルメの旅が、今始まる。

読んでいただきありがとうございました。

次回からヒルメの旅が本格的に始まります。

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