第10話 遠足の班決め
先生の予告通り、6時間目のHR活動は遠足についてだった。
「まずは、今回の行程についてだが――」
先生がつらつらと工程を話し始める。
ざっくりまとめると。
午前中は隣の市の博物館に行き、その後、その近くのキャンプ場に行って、バーベキュー。最後まで自由時間で、学校に帰ってくるという感じらしい。
バーベキューというワードが出た瞬間。教室のあちこちで歓声が上がる。
「とまぁ、こんな感じだ。先輩から聞いてた人もいるかもだが、遠足は基本的に班行動になる。というわけで、この時間で班を決めてもらう」
「先生、なんかルールはあるんすか?」
「いや、特にはないぞ。大体4〜5人だな。あとは自由だ」
先生の言葉を聞いて、既に教室内では、一緒に行こうとか、後あいつも入れようとか、小さな作戦会議が行われていた。
「新君。誰と行くか決めてた?」
「いや、全然」
「じゃあさ、一緒に行こうよ!」
「えっ、いいの?」
「もちろん。後は誰がいいかな〜」
ぼっちは回避できたが、少し意外な気もした。
友達が多そうな正樹君なら、わざわざ俺に声をかけなくても良いだろうに。
いや、それとも友達が少ない俺のためにわざわざ……?
まぁ、細かいことはいいか。
俺と正樹君は残りの二人、ないし三人を探して教室を眺める。
「あっ、咲良さん!」
薄々勘づいていたが、やはり、まだ声がかかっていなそうな咲良さんに正樹君が声をかける。
「よし、後一人か」
「やっぱりそこ三人で固まったんだ」
声の主は暖愛さんだった。
「暖愛はもう決まった?」
「うーん、一応声はかかってるんだけど。こっちの方が面白いかなって」
「そうこなくっちゃ!」
という訳で、俺たち四人で一班ということに決まった。このメンバーなら気兼ねなく楽しめそうだ。
「よし、全員決まったな」
「先生休みの人はどうするんですか?」
正樹君の声がけに、井上先生の眉が少し動く。
「そういえば、あの二人がまだ来てなかったな。今日はもう来ないだろうな」
井上先生は少し考える素振りを見せてから、ゆっくり口を開いた。
「二人の対応は後で考える。じゃ、残りの時間は班ごとで。あっ、一応後でこの紙に班のメンバー書いて、班長が持って来てくれ」
先生がそれぞれの班に紙を配る。
「おっ、なかなか珍しいメンツだな」
「そうですか? 最近仲良くなったんで確かにそうかもっすね」
「まぁ、楽しんでな。問題は起こすなよ」
「はーい」
先生から配られた紙に正樹君が書き込み始める。
「班長は、まぁ、俺でいいか」
「あんたに務まんの?」
「じゃあ暖愛がやってくれるの?」
「私はパス〜」
「じゃあ文句言うなよ〜」
会話が滑らかだ。まるで漫才のように言葉が流れていく。
こんな風に話せたら『話しやすい人』と認知して貰えるんだろうなぁ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、話題は役割分担へと進んでいった。
「じゃあ、食材調達と調理。それぞれ二人ずつに分けようと思うけど、どう?」
「いいんじゃない?」
「俺も賛成」
「私も……」
「そしたら、やりたいのある?」
「私、食材かな。料理苦手だし」
「分かった。二人は?」
「俺はどっちでもいいけど? 咲良さんは?」
「私もどっちでも……」
「じゃあ、じゃんけんで決めようか。暖愛が食材調達だがら、勝った1人が食材。負けた2人が調理ね」
「オッケー」
「じゃあ、行くよ。最初はグー。ジャンケンポン!」
出された手は咲良さんと正樹君はグー。そして、俺がパー。ということは……?
「新君が食材調達だね。俺と咲良さんが調理。あれ、もしかして、新君と咲良さんは一緒の方が良かった?」
「あー、気が利かないな。正樹ぃ!」
「うるさいなぁ、暖愛。それで、どう?」
「別に大丈夫だよ? 咲良さんは?」
「私も……大丈夫です」
「まぁ、当日は一緒だからね。みんなで助け合いながら、仲良くやろうよ」
正樹君が上手く場をまとめてくれ、役割分担もスムーズに進んだ。
「よろしくねぇ、新」
「よろしく。いつ行く?」
「まぁ、いつでもいいけど。腐っちゃいそうなのは前日とか?」
「それが安心かな。持ちそうなのはいつでも良さそうだね」
遠足まではあと二週間くらい。一緒に食材調達係になった暖愛さんと連絡先を交換して、都合がいい日に、ということになった。
一通り決めることを決めたところで、ちょうどチャイムがなった。
「よし、じゃあ、班長、紙持って来てくれ〜。こんまま帰りのHRするぞー」
特に連絡もなく、今日もまた、学校が終わった。
「新君、バイバイ! 遠足もよろしくね」
「うん、バイバイ」
正樹君と帰りの挨拶を交わした俺は、咲良さんの元に向かう。
「じゃあ、帰ろうか」
「……はい」
俺たちが教室を出ようとすると、ぐいっと肩を掴まれた。
「新、またね!」
「あぁ、暖愛さん。またね……」
「咲良ちゃんも!」
「はい、さようなら」
「バイバーイ!」
朝から帰りまで本当に元気な人だ。まぁ、それが良いところなんだろうが。
「じゃ、行こうか」
俺たちは再び、2人だけの帰り道へと、歩みを進めた。




