ヴィリVSマリー
七十四、ヴィリVSマリー
ディーモンクラブの見張りは怪しい三人の人影を見つけた。
慌てて上層部に報告し、武器の棍棒を持ち仲間たちと外に出た。
近づいて来る三人組の一人はバニーガールの衣装を着ていた。
黒いウサギの耳を模したカチューシャに蝶ネクタイ、レオタードにタイツという体型を強調する格好だが彼女のスタイルが良く似合っていた。
胸も豊かで赤毛の美人だったが……。
「どこかで会ったことがあるような?」
バニーガールはわざとらしく首を傾げた。
隣のピエロは剣を帯刀していた。
「なんでピエロが剣を持っているんだ」
強い調子で見張りが詰問する。
「うす。これは大道芸用のアルミです」
「確かに派手な形で紐の飾りもついているが、どこかで見たことがあるような剣だな」
もう一人はガタイの良いナースだった。
「……」
見張りは絶句した。
そこへ報告を受けたヴィリが部下を大勢連れて来た。
「マリーちゃん、久しぶりぃ」
ヴィリはにこやかに手を振る。
「もうバレたの?」
マリーは赤毛のカツラを脱ぎ捨て地面に投げ捨てた。
「ヴィリ、裏切り者の無力化を頼むよ」
体格のいい男が明るい声で命じる。
「ふうん、ボス自らお出ましなのね」
「まあ、逃亡者を多数出したテュールは前衛に出すのもまずいかな、ハハッ」
二人の会話に割って入るように、ヴィリがアジトを囲っている鉄柵を引き抜いてマリーたちの方へ投げつけた。
マリーはハイヒールを履いた足で飛んで来た鉄柵を蹴り返した。
「あんたたち、サイラスを助けに行きなさい。ヴィリは私が相手をする」
「わかった」
「うん」
マリーは向かって来るヴィリに拳で打撃を放った。
しかしヴィリは小さな腕で攻撃を受け止めた。
すぐにヴィリは回し蹴りをしたがマリーは飛び退いて避けた。
「えへへ。やっぱりマリーちゃん速いね」
ヴィリの重い一撃一撃を交わすので精一杯でマリーは反撃するタイミングはないようだった。
その間にマニとステファノは戦闘員たちを突破しようとした。
ステファノが剣で一人ずつなぎ倒し、マニは爪の盾を数枚展開して戦闘員たちを押してステファノの援護をした。
ディーモンクラブの戦闘員の数が多くなかなか降り切れないでいた。
剣を振り回し続けるステファノはふらつき始めていた。
「ステファノ先輩の体力がもう持たない」
マニは焦りながらも自分やステファノへの攻撃を爪の盾でギリギリガードした。
その時大きな影が現れた。
空を見上げると大きな緑のもじゃもじゃした生き物がゆったりと飛んでいた。
「あれはユーエン!」
戦闘員たちも一瞬攻撃を止め、空を見上げていた。
ユーエンはそのまま地面に激突する勢いで着陸した。
逃げ遅れた戦闘員数人が下敷きになった気がする。
砂煙が収まり、ユーエンに背に人影が見えた。
背の上に立つココアとしがみつくシアンだった。
「ココア、来てくれたんだ!」
「……お兄様?」
ココアの冷ややかな視線を見て、マニは今自分がナースのコスプレをしていることを思い出した。
慌ててステファノを見ると、すでにヘロン王国でもらった使用人の服装で化粧も拭き落としていた。
今のユーエンの着陸の隙に上に着ていたピエロの衣装を脱ぎ捨てたらしい。
動きやすくし、体力の消耗を減らすためだろう。
再びステファノは戦闘員たちに向かって剣を振い始めた。
しかしマニのナース服は下に私服を重ね着できるような服ではなかった。
無言になったココアに向かってマニは
「こっこれは仕事の衣装なんだ」
という他なかった。
「ところで、どうしてここに?シアンも何でいるの?」
マニが質問する途中で矢がマニの頭をめがけて飛んで来たが、ユーエンのはった結界に弾かれた。
「ヘレン様がいつまでもお兄様が戻られないので私に助けに行くように頼まれました。シアンさんは山脈で遭難していたので救助してきました」
シアンはようやく着陸の衝撃から立ち上がり、気まずそうに顔をそらした。
「シアン、久しぶり。助けに来てくれたんだよね?」
マニはシアンのプライドを刺激しないように言葉を選んだが、実際どれが地雷かはまったくわからなかった。
逆に激怒させてしまうかもしれないがひやかすよりはいいだろうか……。
シアンはちいさくうなずいた。
よし、何とかなった。
マニが安堵しているとココアが大事に抱えていた包みの布をめくった。
その中からマニの角から作られた剣が出て来た。




