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竜のマニ  作者: ぼんにゃん
3章
58/64

西での任務

五十六、西での任務




ある日、カニンヘンの屋敷に皇帝からの手紙が届いた。

そこにはペン字で丁寧に書いてあった。


「謹啓 

皆さまお変わりございませんか。

さて、今回は貿易をしている西の国々から禁止されている薬物が流入しているので、調査をお願いしたいです。

詳しい話をしたいので都にお越しください。

謹言」


「カニンヘン領は天国からの防衛の役目を負っているから、断りの手紙を入れてもいいのよ」


手紙を読んだヘレンはそう言った。

まあそれは断る建前で、今まで天国から天使たちが攻めてきたことは一度も無く、たまに追放された天使が落ちてくる程度だ。

大前提として、天使はこの魔力に満ちた世界ではほぼ生存できないからだ。

メネラウスが当主の時代の魔法の網を活かし、今の所、数が少ないので、堕天使や悪魔たちを保護し領民として受け入れる方向に進んでいる。

彼らは回復魔法や召喚魔法などこちら側にはない魔法を知っていて、重宝されている。

問題を起こしてどうしようもない個体は、ユーエンの餌食になっているそうだ。


「僕はこの仕事を引き受けるよ。竜の剣が作られたのも西の国だったんだよね。気になるし」


西といえば、過去にクェンティンが住む山岳地帯に行ったことがあるが、のんびりと自然が豊かな場所で、そんな犯罪が行われているとは結び付かなかった。

あれから何年も経っているし、山を下りた町の方はまた違うのかもしれないな。


「そうね。マニを襲ったハンターどもがいたら塵にしないといけないわよね!」

「それは……もうどうでもいいかな?」


西へ行く任務にヘレンは最先端の回復魔法が使えるラムダが必須だと訴えた。

他に回復魔法に長けたフギンとムギンはその体質上、この地を離れることはできないからだ。

異国の地での犯罪の調査任務は危険な任務になる可能性は高い。

宝物殿のゲームで、ヘレン達に助けられようやく生き延びたマニも修行を続けていたが、一人ではどうしようもないことがあるのもわかっていた。

ただ、今、ラムダは宝物殿の管理者として雇っているのであり、マニのいうことを何でも聞くわけではない。

ヘレンを安心させ任務に行くには、ラムダの説得が必要だ。

よし!いつもの手を使うか。

今までも、回復魔法を頼みこんでラムダに使ってもらったことがあった。

珍しい魔法が使えるからと言って、いいように利用されたくないと渋るラムダに頼むには、プライドを捨て泣き落とすしかない。

マニは宝物殿の図書室に向かった。


「と、いうわけで、このまま一人で西に行っても、薬の密売人に僕は殺されてしまうかもしれないので助けてください。僕が断ったら、人々が薬中になってしまうんですー」


マニは勢いをつけてお辞儀をした。


「いいだろう。私も同行しよう」


はあ、良かった。

契約で何も捧げずについてきてくれるなんて正義感の強い良い悪魔だな。

お給料は割り増して払うのは当然だろうけど。




都に発つ日が来た。

屋敷の前で、みんなが見送ってくれた。

その中にレオと妻のアンの姿があった。

レオはマニが婿入りした時にカニンヘン領に妻と共についてきてくれたのだ。

そして、ムギンによってアンに残っていた傷跡まできれいに消してもらっていた。

お金目当てと口で言いながら、レオはこのために命をかけてカニンヘン領に着いて来てくれたのかもしれなかった。


「じゃあ、行ってくるね。ヘレン、後は頼んだよ」

「はい」


ラムダは発光し、天使に化けていた姿からおそらく本来の姿であろう悪魔の姿へと変わった。

黒い翼と八重歯が特徴である。


「あ!それがラムダさんの本当の姿なんだ。かっこいい!!」

「この世界で、悪魔ならまれにいるからな」


ラムダは得意げに腰に手を当てた。

この世界にいるはずのない天使の姿でうろうろすれば大問題だろう。

二人は都へと飛び立った。


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