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最終話 ハッピーエンド

話ぶっ飛びすぎました、すみません。

 さて、しばらくして、ミッドランドの王宮では、華やかな舞踏会が(もよお)された。

 オースティン王太子の花嫁を決めるための舞踏会である。


 ミッドランドに残っていたカルミラは、サザンロックスからの報告(おそらくロニーという男が手配した)を受け、オースティン王太子に()()したらしい。

『首尾よくクロエを王族の身分にしたので適当にお妃選びの舞踏会でも開いて、早急に決めるべし』とのことだった。

 要するに、イレーネとカルミラは元老院の根回しとかがめんどくさくなり、『お前がやれよ』とオースティンに丸投げしたいうことだ。


 その辺は、オースティン王太子はめんどくさがらずに、喜んで準備した。

 確かに、近隣の王族の妙齢の王女といえば、そんなに数が多いわけでもなかったから、非公式な手紙と正式な招待状を送るのも、そんなに手間ではなかった。


 ただ、完全な出来(でき)レースであるため、わざわざ各国の王女たちを招待することに、オースティンは気が引けて仕方がなかった。


 きっと中には、やる気を出して大金をかける王女もいるかもしれない……。


 そこでオースティンは、とにかく『小規模』で『ささやかに』行うと明言して、「大所帯(おおじょたい)での参加は控えてほしい」と重ねてお願いした。


 そのため、『お妃選び』という本来なら国を挙げてのイベントであるにも関わらず、今回の舞踏会は、ひどく内輪(うちわ)な雰囲気の、あくまで王太子の『個人的な結婚』を思わせる、こじんまりとしたパーティーとなった。


 国内からの参加者として高位の貴族が少数呼ばれていたが、中でもオランディーニ公爵夫人は特に不機嫌そうだった。


 レイチェル王女で根回ししていたのに、オースティン王太子は無視をした格好になっていたからだ。

 (ないがし)ろにされた、この(わたくし)が!

 オランディーニ公爵夫人はすっかりメンツを潰されてしまった。


 しかも、我が国の王太子のお妃選びなのに、こんなショボい舞踏会で済ませるなんて。

 せめてお金くらい私から援助させてもらえれば、まだ少しは面目(めんぼく)も立つというものなのに。

 オランディーニ公爵夫人はぎりぎりと歯ぎしりした。


 オースティン王太子はオランディーニ公爵夫人の不満が手に取るように分かったが、()えて気付かないフリをして、順々に到着する各国の王女たちを出迎えた。


 堅苦しい挨拶は抜きにして、オースティン王太子は来訪してくれた王女たちと言葉を交わしていく。

 にこやかな笑を浮かべているが、よそよそしい態度で、参加した王女たちはどれも、手応(てごた)えを感じず、さぞがっかりしたことだろう。


 さて、クロエはサザンロックス王国のアウラ王女として、イレーネを伴ってこの舞踏会に現れた。一応、サザンロックス王国の正装を(まと)い、格式高い付き人を数名従えている。


 オースティンの顔がパッと明るくなり、足早にクロエに駆け寄った。


 それから、クロエの姿を頭の先から爪先まで眺めて、思わず吹き出しそうになった。

 しかし、公式な舞踏会である。笑うわけにはいかず、オースティンら必死に顔を取り(つくろ)った。


「クロエ、ほんとに王女になったんだ」

 オースティンは面白すぎて(たま)らない様子で、声が震えている。


「そんなに可笑(おか)しいですか?」

 クロエは少しムッとした。


 いつぞや、イレーネとカルミラが、オースティンに大笑いされてキレていたっけ。

 その気持ちが今ならわかる。


「サザンロックス王国だっけ。素敵な伝統衣装だ。こんなクロエ、見慣れてないから新鮮。いいね!」

 オースティンは無邪気(むじゃき)にドレスの薄衣(うすごろも)をつまんだ。


 他の王女たちがざわめいた。


 これほどオースティン王太子が女性に親密そうな様子を見せたのは、今回の舞踏会では初めてだったからだ。


「ちょっとちょっと。他の方の目がありますから」

 クロエは(たしな)めた。


 しかし、オースティンは首を振った。

「やだよ。どれだけ会えてなかったと思ってるの? 本当はここでキスでもしたい気分だよ」


「いや、それは、大問題ですから」

 クロエは()()った。


 オースティンはクロエの困った顔を見て、楽しそうに笑った。


 またしても参加者がざわついた。

 オランディーニ公爵夫人も顔を真っ赤にして怒っている。


「ダンスくらいはいいだろうね?」

 オースティンはクロエに手を差し伸べた。


「まあ、それくらいなら……」

 クロエはそっと周りを見回してから答えた。


 会場中の目がクロエを見ている。

 その中にはもちろんレイチェル王女もいた。目を見開いて事の成り行きを見ている。


 その時、

「さっさと踊れば!」

と、珍しく後ろで静かにしていたイレーネが、クロエの様子に待ちきれず口を挟んだ。

「もったいつけてんじゃないわよ! こっちは早くお酒が飲みたいの!」


 会場中が凍りついた。


 クロエは慌ててイレーネの足を踏んづけ、

(しゃべ)るなって言ったでしょ! 邪魔する気!?」

と小声で(なじ)ったが、後の祭りだ。


 そのうち会場がざわざわし出した。

「あれ、あの女見たことあるぞ!」

「あの、パーティーというパーティーで酔っ払って騒ぎを起こすという……?」

「俺、(から)まれたぞ」

「オランディーニ公爵夫人に怒られていたのを見たわ!」


 クロエはこめかみを抑えた。

「ああ……そうだった……」

 自分の顔は割れてないけど、イレーネはある意味パーティでは有名人だった……。


 会場の中央では、オランディーニ公爵夫人が勝ち誇った顔をしていた。


 オランディーニ公爵夫人は鼻の穴を膨らませて息を吸い込むと、気合を入れてツカツカとこちらに向かって歩いてこようとした。

 体を揺すって、その姿は嬉々としている。

 ほうらね、ご覧なさい! レイチェル王女の方がずっとふさわしいんですからね!


「終わった」とクロエは思った。

 クロエは覚悟して、そっと目を閉じた。


 オランディーニ公爵夫人にパーティーからつまみ出されて終了だわ。

 まさかこんなふうに失敗するなんて。

 まあ、イレーネだから仕方ないか。


 と、そのとき、

「その女をつまみ出して!」

と別の女の、張りのある声が上がった。


 クロエははっとした。

 あれ? オランディーニ公爵夫人じゃない。え? 誰?

 クロエが慌てて振り返ると、そこにはカルミラが立っていた。

 え? カルミラ?


 カルミラはサザンロックス王国の正装を身につけていた。

 カルミラはイレーネを指差すと、

「この女は知りません。サザンロックス王国の関係者のフリをしているけど、なりすましですわ!」

と会場全体に聞こえる声でわざと怒って見せた。

 騒ぎになる前にイレーネを切ってしまうことにしたのだった。


 反射的にイレーネは、

「黙れ! 性悪女! その(くち)、喋れないようにしてやる!」

と息巻く。


「まあ……っ」

 イレーネのあまりの下品さに、貴婦人たちは口元を(おお)って目をぱちくりさせている。


 そして、会場からつまみ出されていくイレーネの脇で、イレーネに苦情を申し立てた女性カルミラには称賛の視線が注がれることになった。


 その時、その様子を眺めていたレイチェル王女が、カルミラの顔を気付いた。


「あっ、あの人は!」

 レイチェル王女は、宣戦布告してきた不遜(ふそん)な女『クロエ』に違いないと思った。(※本当はカルミラだが)

 あれ? でもなんで『クロエ』がサザンロックス王国の服を着ているの?


 オースティン王太子は、その気配を敏感に察知した。そこで、レイチェル王女が余計なことをしゃべる前に事を治めようと、慌ててカルミラに向かって尋ねた。

「ところで、『クロエ・リチャードソン伯爵令嬢』。辺境伯爵家のあなたがどうしてここに?」


 カルミラは()()()()不愉快そうな顔をしている。

 オースティン王太子を(にら)みつけながら、

「ああ、この私『クロエ・リチャードソン』は、サザンロックス王国の『アウラ王女の妹』になったんですわ」

と言い放った。


「は?」

 オースティン王太子はポッカーンと口を開けた。

「えーっと、何を言っているのか、さっぱり分からないんだが。一体どういうことだ?」

『クロエ』と『アウラ王女(※カルミラ)』の中身を入れ替えるだけのはずでは?

 そう聞いていたぞ。

 なぜカルミラ(ふん)する『クロエ』まで『アウラ王女の妹』、つまりはサザンロックスの王女――になっているのだ?


 カルミラは苦虫を()(つぶ)した顔で叫んだ。

「だから! 『クロエ・リチャードソン』は、サザンロックス国王夫妻と正式に養子縁組を(いた)しましたのよ!」


「はあ?」

 オースティン王太子はそれでも全く理解できない顔をした。

「いや、いやいやいや。ちょっと。ちゃんと経緯を説明してくれないと全然わかんないって」


 カルミラはオースティン王太子に近付き、心底うんざりな顔のまま、人に聞かれぬよう小声で話し出した。

「じゃあ丁寧に説明してあげましょうね。あんたらが結婚するには、『クロエ』は王族の身分にならなきゃダメなんでしょ。だから最初はクロエを、()()()()()()()()()()()()()()サザンロックスの『アウラ王女』の身代わりにしようと思ったのよね。コネ(イレーネ)もあったし」


「その計画までは聞いた! コネ(イレーネ)ってのはさっぱり分からなかったが……」

 オースティンは「さっぱりだ」といった様子で首を横に振った。


 カルミラはふんっと鼻を鳴らした。

「逆にコネ無しでどうやって『クロエ』と『アウラ王女』の中身を入れ替えられると思ったのよ。どう考えても、ふらっと現れた偽物アウラ王女(クロエ)をサザンロックス国王夫妻が『娘』と認めるはずがないでしょ!」


 オースティンはもっともだと(うなず)いた。

「それはずっと思っていたよ」


 カルミラは面倒くさそうに説明した。

「だから、それがイレーネよ。なんとあの女、『行方不明の本物のアウラ王女』の行方(ゆくえ)を最初から知ってるのよ。だから、サザンロックス国王夫妻はずーっとイレーネに頭が上がらないの。イレーネの話には乗るしかないわけ。じゃないと娘との唯一の繋がりが()たれてしまうから。これがイレーネのコネ」


「そういうことか。あいつ(イレーネ)何者(なにモン)だよ」

 確かにそれは(すご)いコネだとオースティンは呆気(あっけ)に取られた。


 カルミラはふうっとため息をついた。

「クロエの件は『家出中の本物のアウラ王女』からの承諾もあったのよね。本物のアウラ王女からイレーネ経由で『これから訪ねる女をアウラ王女ってことにして』って手紙をもらったら、サザンロックスの国王夫妻は受け入れざるを得ないわ。国王夫妻は『本物のアウラ王女』にだいぶ罪悪感があったから」


「なるほど、それで『クロエ』と『アウラ王女』の入れ替わりがすんなりといったわけだ。だが、サザンロックスの国王夫妻は内心とても動揺しただろうな。ニセモノの娘……。僕らのせいとは言え、気の毒だ」

 オースティンは申し訳なさそうに言った。


 横で黙って話を聞いていたクロエも、これに話が及ぶととても苦しい気持ちになった。


 しかし、オースティンは、はっと我に返った。

「いやいやいや! ちょっと待てよ。まだ全く分からん! そこでなんで『クロエ・リチャードソン』の養女の話が出てくるんだ!?」


 カルミラは大きく肩でため息をついた。

「そこよ! それまでの計画はすっごくうまくいってたのに、クロエったら、『アウラ王女』と入れ替わるなんて、サザンロックスの国王夫妻や国民、ミッドランドの民も、クロエ自身の両親も、み~んなを(だま)すことになるから嫌だって、駄々捏(だだこ)ね出したのよ! ほんと勘弁(かんべん)、あんたの恋人みたいな『ど正直』な女とはもう二度と一緒に仕事したくないわ」


 その時、クロエがしょんぼりと口を挟んだ。

「ごめんなさいね……。カルミラたちが一生懸命お膳立(ぜんだ)てしてくれてたのはわかってたんだけど。やっぱり……なんか、その……」


 カルミラは仕方がないといった顔をした。

「で、クロエがアウラ王女になるなんて絶対(イヤ)って断固拒否したんで、じゃあどうするってなったのよね。でも『クロエ・リチャードソン』を王族の身分にするには、養子縁組くらいしか、あの状況では思いつかなくってね」


 オースティンは勢いよく首を振った。

「いや、でも! 今の話の流れだと、養女の話は『クロエ』を『アウラ王女』ってサザンロックスの国王夫妻に認めさせた後の話だろ? それってどういう状況? 認めてもらった後、急に『やっぱりアウラ王女じゃありません、養女にしてください』って国王夫妻相手に言い出したこと? もうっ、頭がぐちゃぐちゃだ! 何がどうなってるんだ!?」


「そうよ! そういうことなのよ! すっごい無茶苦茶でしょ!? 私たちの苦労分かってくれる?」

 カルミラはずいっと身を乗り出した。


 そしてカルミラは力説した。

「サザンロックス国王夫妻は『クロエ(ふん)するアウラ王女』と晩餐(ばんさん)とかしたみたいで、もう王宮では『アウラ王女が帰ってきた』とか噂が広がってたのよ? それをひっくり返せって言うのよ!」


 オースティンは「うっ」と(うめ)いた。

 確かに、カルミラがうんざりした顔をしているのがわかる。


 クロエは横で申し訳なさそうに縮こまった。


 カルミラはオースティン王太子の同情を得て、さらに愚痴(ぐち)を続けた。

「想像してみてよ。見ず知らずの『クロエ・リチャードソン』をサザンロックスの国王夫妻が養女にするなんて、普通だったらあり得ないわよね。しかも『私アウラ王女って言ったけどやっぱやめまーす、養女にしてー』よ? ここまでちゃらんぽらんな話、さすがの『本物のアウラ王女』の口利きも無理でしょ? サザンロックスの国王夫妻だって、いくら本物の娘に遠慮があるとはいえ容認できないわよ」


「でも、それをやってのけたんだな」

とオースティンは賞賛の目をカルミラに向けた。


 カルミラは賞賛なぞいらんと吐き捨てるかのように言った。

「だから養子縁組の対価に、急遽(きゅうきょ)()()()アウラ王女が出戻ってあげるってことにしたのよ。ぶっ飛んだ方面のスピリチュアルなヤベー言い訳付けて、『クロエ・リチャードソン』と姉妹になるならサザンロックスに帰りますとかなんとか言ってさ。王位継承権や相続とかはいらないからただただ姉妹にさせてくれ、それなら家出を止める――って。国王夫妻は(あき)れ返っていたわ。ま、でも、結局、ガッチガチの条件でしぶしぶ養子縁組を承諾してくれたんだけど」


「うおお~~い、どっから出てきた、()()()アウラ王女!」

 オースティン王太子は突っ込んだ。


「だ~か~ら! 私が、家出した『アウラ王女』だったんだってば!」

 カルミラは超絶(ちょうぜつ)うんざりした口調で言った。


「はあ!?」

 オースティン王太子はまた()頓狂(とんきょう)な声を出した。


 クロエが心配そうに口を挟んだ。

「そうなの! 私たちのせいで、カルミラの家出は台無(だいな)しになってしまったの。ごめんなさいね、カルミラ」


「いやいやいや、もうどこからツッコんだらよいのか!」

 オースティン王太子は口をあんぐり開けて困った顔をした。


「ま、あんたのその顔が見れて、いつぞやの仕返しができてよかったと思うことにするわ」

 カルミラはオースティン王太子の間抜(まぬ)けな顔を見てふっと笑った。


 オースティン王太子は口を(とが)らせた。


 カルミラは腰に手を当てた。

「まあでも、この国じゃあ『クロエ・リチャードソン』って私のことになってるし、このまま『クロエ王女』と『アウラ王女』は入れ替わったままでいようと思ってるんだけどどうかしら? ま、クロエの本当のご両親には一度お()びに行かないといけないけど……」


「そこは要相談よ、カルミラ! 私の両親には正直に話すわ。養女の件は形だけだし分かってくれると思うんだけど……うちの善良な両親が『クロエ・リチャードソン』として男の人に(みつ)がせまくってたカルミラを(ゆる)すかはわからないわね」

 クロエはさんざん引っ()き回した張本人(ちょうほんにん)であるにも関わらず、なぜだか強気でびしっとカルミラに言う。


「げっ」

 カルミラはクロエの勢いに押されて後退(あとずさ)りした。


 が、カルミラは大事なことを思い出すと、オースティン王太子の方を向いた。

「ところで、あんたはちゃんとクロエと結婚するって宣言するんでしょうね」


「ああ。『アウラ』? 『クロエ』? いや、『クロエ(ふん)するアウラ王女』か? ……って、あ~もう! ややこしいな! おまえら改名しろ!」

 オースティン王太子は髪を()きむしったが、急に真面目な顔になり、ぴしっと『クロエ(ふん)するアウラ王女』の方を向いた。


 そしてオースティンは皆に聞こえる声で宣言した。

「私はあなたをお(きさき)にする!」


 バタンっ

 遠くでオランディーニ公爵夫人がばったり気絶(きぜつ)する音が聞こえた。


 オースティンの言葉に、クロエは顔を明るくした。

 結婚できる!

 そしてクロエは言葉にならないほどの感謝でカルミラの顔を見た。


 カルミラはクロエに笑顔で返した。

「お礼はた〜んまりとよろしくね。あんたと義姉妹になるのも楽しみよ」


 クロエは微笑(ほほえ)んだ。

「イレーネにもお礼を言わなきゃね。このパーティからつまみ出されてカンカンに怒ってるだろうけど」


「こんな大事な時にパーティからつまみ出されてるなんて、イレーネらしいわ」

 カルミラはふっと楽しそうに笑った。


 クロエもつられて笑った。

 そしてクロエは心の中で思い出していた。カルミラが家出をした理由。

 クロエはそれをイレーネから聞いていた。

 カルミラは、政略結婚がどうしても嫌だったのだと。

 その結婚の必要性は理解できても、どうしても生理的に相手の男性を受け入れられなかったのだと。


 偶然出会ったイレーネがカルミラに向かって「結婚は絶対愛がなきゃだわね! 生理的に無理な男性と結婚なんて死ぬのと一緒だわ!」と言ったのだ。

家出(いえで)? 手伝うわよ。あたしも相棒が欲しかったところなのよね」


 カルミラはそれで自由を得た。

 サザンロックスの両親が政略結婚を白紙撤回しても、カルミラは政略結婚を()いようとした両親を許さなかった。

 イレーネとの気ままな生活が楽しかったのもあるが――。

 死。そう、カルミラにはその政略結婚が死ぬほど嫌だったのだ。


 政略結婚――。


 女詐欺師はびっくりだけど、カルミラとイレーネが私の前に現れたのは偶然じゃなかったのかもしれない。


-------------------------------------------

 レイチェル王女は力なくその場に立ち尽くしていた。


 オランディーニ公爵夫人の根回しにも関わらずオースティン王太子がレイチェル王女を選ばなかったということで、レイチェル王女とオランディーニ公爵夫人はこのパーティで少し遠巻きにされていた。


 愛を捨て、責任感と覚悟のもとこの国にやって来たというのに。

 私が恋人と別れたのは何だったというの?


 レイチェル王女は喪失感に胸が張り裂けるかと思った。泣いてしまいたかった。


 その時、レイチェル王女の背後に美しい青年がすっと立った。

「レイチェル王女。たぶん今、僕が必要だよね?」


 レイチェル王女は息を呑み、その目はこぼれんばかりに見開かれた。

「あなた……なぜ」


「僕を嫌いになったなど嘘ですね。僕のことがどれだけ好きだったか()()()()()()()と人づてに聞きましたよ」

 その青年は優しく言った。


 そのセリフ。レイチェル王女は不敵(ふてき)に笑ったあの日のクロエ――本当はカルミラだが――を思い出した。

 そして(しぼ)り出すように呟いた。

「まさか……クロエさんが?」


 その青年は小さく首を縦に振った。

「その女性の名前は知らないけど。レイチェル王女はきっと僕を待ってるだろうから迎えに来いって。ついでにこの会場にも(もぐ)り込ませてくれた。」


 レイチェル王女は言葉がなかった。

 これは優しさ? それとも(あわ)れみ?

 あの女、なんなの。オースティン王太子の恋人と名乗っておきながら、オースティン王太子が別のどこぞの王女を選んでも満足そうな顔をしていた。


 青年はそんなレイチェル王女の顔を心配そうに(のぞ)き込んだ。

「レイチェル王女。余計なことは考えなくていいんだよ。僕と一緒に帰りましょう」


 レイチェル王女は愛する人の顔を見上げた。

 そして、自然と思ってしまった。

 とりあえず、オースティン王太子と結婚することにならなくてよかった……それが素直な気持ちだと。

最後までお読みいただきどうもありがとうございました!

とても嬉しいです。


ちょっとぶっ飛んだ話になっておりまして(汗)


それでも、もし少しでも面白いと思っていただけましたら、

ご評価★★★★★や感想などいただけますと今後の励みになるので、とっても嬉しいです!


読んでいただき、本当にありがとうございました!!

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[良い点] 最初は、え?何この二人の女。と危ない匂いがプンプンしてましたが、途中からワクワクドキドキ。 最後どうなっちゃうの~? と思いきや、まさかの全員幸せエンド。 面白かったです!
[良い点] 完結おめでとうございます! 最終話の情報量が凄いのに、キッチリまとめられているというあきらさんの手腕に感服いたしました。 レイチェル王女も幸せになれたようで、安心です。 しかし、イレーネ……
[一言] 確かにぶっとんでましたね(笑) 最後がちょっと早急な感じはしましたが、下手に延ばすとつまらなくなる気がするので、それよりいいんじゃないかな~と。勢い大事! でも、凄く面白かったです!
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