第-9話:野菜の大群と、最強パーティーの突撃
(深夜の視点)
「うわ、なんだよこれ……めちゃくちゃいるな!」
天然ダンジョンの中層。目の前の通路を埋め尽くしているのは、べらぼうな数の『野菜系魔物』の大群だった。
牙を剥いて突撃してくる巨大な大根、押し寄せる凶暴なカボチャ、油断すると汁を撒き散らして爆発するトマト。視界の全てが禍々しい家庭菜園状態だ。
だが、俺たち【ナハト】に動揺はない。全員が俺の次の指示を待っている。
深夜 「おいお前ら、サクッと収穫(討伐)して次に進むぞ! 陣形を展開しろ! ――曙、真昼さんを肩車しろ!」
曙 「おうよリーダー! ……って、肩車ぁ!?」
真昼 「えっ、深夜くん? 私をですか!?」
深夜 「そうだ! 通路が狭くて射線が通らない! 曙、そのまま突撃して盾になれ! 真昼さん、その高い位置から最大出力の『ホーリーライト(真昼キャノン)』ぶっぱ、お願いします!」
真昼 「もう、相変わらず無茶苦茶な指示なんですから……! いきます!」
大柄な曙の肩に担がれた真昼さんが、上空から極大の聖なる閃光を放ち、前方の大根どもを一網打尽に焼き払っていく。
深夜 「よし、いいぞ! 次、真宵、宵闇! お前たちの『影分身』を周囲にバラ撒け! 隠れてる芋系の魔物をあぶり出しつつ、足元の罠を全部踏み抜いて洗い出すんだ!」
真宵 「了解、お兄ちゃん! 影分身、展開!」
宵闇 「ちょっと深夜、私の可愛い分身を罠のデコイ(身代わり)にするんじゃないわよ! ……せいっ!」
二人の無数の影分身が四方に走り回り、爆発トマトなどの罠を強引に踏み抜いて処理していく。
深夜 「丑三つ(うしみつ)! 後ろから挟み撃ちを狙ってくるカボチャの群れを止めろ。殿はお前に任せた!」
丑三つ「任せとけ! 一匹たりとも深夜たちの後ろには通さねえよ!」
丑三つが背後をガッチリと固め、俺は両手に握った一対の特注の剣を振るい、撃ち漏らした野菜どもを的確に解体していく。
今、この攻略の様子を記録している者は誰もいない。
世間じゃまだe-Tubeでダンジョンをリアルタイム配信するなんて文化は一般的じゃないし、そもそも録画するパーティーだって滅多にいない。俺たちナハトも、純粋に「魔石の買い取り」だけで稼いでいる硬派な集団だ。カメラドローンなんて高価な趣味の道具は誰も持っちゃいない。
だからこそ、このバカバカしくも完璧な連携は、俺たちの呼吸の中だけに存在する。
深夜 「ふぅ、大体片付いたな。よし、今のうちに次の階層へ降りるぞ」
俺たちは野菜の残骸を突っ切り、暗い下り階段へと足を進めた。
松明の光を頼りに、全員で固まって階段を降りていく。
真宵 「あれ……? お兄ちゃん、なんか足元が――」
真宵が声を上げた瞬間、俺たちの踏みしめていた石段が、眩い紫色の光を放った。
深夜 「しまっ――ランダムワープの罠か!?」
抵抗する間もなく視界がグニャリと歪み、世界が一瞬で反転した。




