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第84話   斑目の息子⑨


惣司と対峙する馬場の後ろ姿を見ながら、タカシは平九郎との作戦会議時の会話を思い出していた。


『ええ!馬場さんが惣司さんの魔導の師匠!』


『そうじゃ。皇城の事件後にわしのところに来ての。もし惣司が現れるなら呼んで欲しいと…』


『ま…まさか!にわかに信じられません。あの馬場さんが…』


『そうであろうの。何やら因縁があるようじゃが詳しくは語ってくれなんだ。しかしもう一つ分かったことがある』


『それは…何でしょう?』


『慎之助もまた、あやつの弟子じゃった』


『え!慎之助さんが!?』


『魔導の修行はよくわからんことが多い。公に道場など開かれておらんからの。しかし脱糞は、惣司が慎之助の息子と聞いて弟子入りを認めたのは確かなようじゃ』 


『そうなんですね…』


『恐らく何かの事情で惣司を探しておったのじゃろう。そしてこの記念館におれば奴と出会える筈と考えたのではなかろうか』


『この…記念館で…』





「ババア!私の邪魔をするな!」


「誰がババアや!わしはお前のような奴を弟子にしたことが一生の不覚や!」


「馬場さん…一体何が?」


タカシは息を呑みながら尋ねた。


「こいつは慎之助の息子と聞いて弟子入りさせたが、いらん殺人魔導ばっかり覚えよってな。挙句の果てにわしの他の弟子を皆殺しにして道場から逃走しよったんや!」


「え!皆殺し?」


「ふん!無能が何人おっても仕方あるまい。クソどもが私の術にケチをつけてきたから実力を見せつけてやっただけだ!」


「うるさいわい!わしはお前のような化け物を作ってしもうたことを心底恥じた。それで名前を捨ててお前の行方を追っていたんや」

 

「はっ!執念深いやつめ」


「お前は道場で慎之助や皇女様の悪口をしょっちゅうほざいとった。龍命替術の破り方もやたらとわしに聞いてきよった。そやさかいこの記念館が怪しいと思って張ってたんや。案の定ノコノコと現れおって」


「ふん!私はあれから修練を重ね、以前と比較にならぬ程の魔導力を手に入れた。私は父を超えたのだ!」


「親父を超えた?アホ言うな!」


「な、何だと!」


「お前なんかにあの慎之助を超えることができるかい!冗談もほどほどにしいや!」


それを聞いた惣司の顔は激しい憤怒の表情に変わった。


「う…うるさい!うるさい!うるさい!」


惣司は両手の掌を馬場の顔面に向けると、今まで最大の赤光弾を放った。


「はん!今一やな!」


彼女はそう言って思いっきり身を反らすと、その光弾を頭突きで弾き返した。


光弾はカウンターとなって惣司に襲いかかった。


惣司はそれを手首の返しだけで弾くと、光弾は観覧室の天井の巨大なシャンデリアの根元に当たった。


そのシャンデリアは落下して惣司の背後で激しく砕け散り、キラキラしたガラス片が観覧室の床に散乱した。


「あ―あ…やってもたな!そのシャンデリアめちゃ高いねんで。あんたちゃんと弁償しいや」


「ふん。どうせ建物ごと無くなるのに何をほざく」


「惣司…やっぱりあんたにはお灸を据えなあかんな」


そう言うと馬場は、よっこらしよっと言って玉座の段を降りると、スタスタと歩いて惣司に近づいていった。


(え!え!そんなに散歩みたいに…)


タカシはもはや生きた心地がしない。


しかし馬場はのんびり歩んで惣司の目の前に立った。


惣司は傲慢に馬場を見下ろす。


「ババア…いいのか?すぐ殺せる間合いだが…」


「すぐ殺せる?誰を?」


「皇女の術の加護も無いのに!この馬鹿がぁ!」


惣司はそう叫ぶと至近距離から桜花弾を放った。


バッシンという炸裂音とともに赤い光がスパークする。


眩しさに和子とタカシは思わず目を塞いだ。


タカシは恐る恐る目を開けると、なんと惣司が鼻血をだして床に仰向けに倒れている。



「え!何故?」


タカシは我が目を疑った。



「ぐ、我が術を…反射した…だと?」


倒れながら信じられないといった口ぶりの惣司。



「反射魔導など教えへんかったからな」


馬場は惣司の顔を覗き込みながらかっかっと笑った。



その時、戦闘を固唾を飲んで見守っていたタカシ が叫んだ。


「あっ!危ない!」


惣司は馬場の足首を掴んでいた。



「ぬおおおお!」


惣司は野獣の様に咆哮して、馬場の足首をもったまま彼女の体を逆さ吊りに背中に担ぎ上げ、玉座に向かって放り投げた。


馬場は頭を玉座に向けて弾頭のように飛ばされたが、空中でクルッと回転して舞台前に着地した。


それを見た惣司は掌の照準を馬場に向けていたが、タカシに方向を変えて光弾を発射した。


「いかん!」


馬場は咄嗟に惣司に背を向け光弾からタカシを庇った。


光弾は馬場の背中に当たり飛散する。



その直後であった。



「きゃあ!い、いやあ…」


皇女は目の前の信じられない光景を目の当たりにして絶叫した。



馬場の胸から義国の折れた剣先が血塗れで飛び出していた。


背後には惣司が立っている。


彼は馬場の体を貫通している刀の柄を握っていた。



その刀は惣司が蹴り飛ばして玉座の段前に突き刺さっていたものだった。



「そ、惣司…わ、わりゃあ…」



「ふふ…術が駄目なら刺せばよい!」



「く…魔導の風上にも…置けん…奴…」



馬場はゆっくりと床に崩れ落ちた。






次回   桜散無術の発動


     そして


     タカシの決断





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