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六話:オードリーと出会う。そして事故った。



「では、失礼しますねー!」


「またね~~学院長さん~!」


学院長と既に約束を交わしたので、ここを出ようとする俺達。


確かに今日は学院の全生徒にとっての初日の登校日ではあるが、俺に関しては例外中の例外なのでまずは寮に案内してもらってから明日で【客人】としての立場で登校していく手筈になっている。


タタタ……

と、ドアを開けようとして両開きのドアの取っ手に手を伸ばしかけた俺だったがー


ゴー―ドンー!!

「な!?」


いきなり、激しく開け放たれたそのドアから、


「せいやーーー!」

「!くーつ!」


ぎりぎりで交わした。4年間も前からずっと基礎トレーニングである身体能力の訓練も欠かさず森の中で続けてきた甲斐あって難なく『その』の真っ直ぐな上段蹴りを避けられた。


ドーン!


でも、さすがにあの子に勢いがありすぎて、ギリギリで半歩後ろへと後ずさった俺は尻もちをついてしまった。


「ーあっ」

目の前にパンツがある。見たと言ったら『殺されそう』なので黙ることにしんだけど…


「『男』の匂いがしたかと思ったら案の定、男がいるじゃないか!それもどこの馬の骨とも知らないような煤けた色を肌のどこへでも塗りたくっているような変態がっ!」


こ、これはまたも個性的な娘が現れてきやがったもんだ。


俺の前に現れたのは、濃い紫色の髪の毛をしているだ。後ろ髪をポニーテールで束ねた少女はきつい表情でこっちを睨みながら上げた片脚を地面に降ろした。


上段蹴りをかましてきたから否が応でもはっきりと見つめることが出来るが、両脚はてかてかと光沢のある薄紫色のタイツで包み込まれていて、実に勇猛果敢な身のこなしと美麗な脚線美を同時に兼ね備えたような少女だ。


髪もタイツも同じく紫色で統一してるなんて、男勝りなところがありながらもどこかファッションセンスに五月蠅い子であると断言!


「あははは…え~っと?どちら様で?」

へらへらと苦笑いしながら身を起こした俺が聞くと、


「学院長ー!そこの男は誰なんだーー!?ここは【聖エレオノール精霊術学院】という格式と伝統のある神聖なる学び舎なのだぞー!?世に生息地拡大と悪影響の拡散を広めつつある【世界獣】と戦うために育て上げるための大事な学院なのだぞ!?いくら共学になったばかりといって、この怪しい泥で全身を塗りたくるような男は要らないはずー」


「はいストップ~!ジュリアちゃん~!」


俺を庇うように前に出た先生は紫色タイツのを後ろへ回り込んで口を塞ぎにいった。


「じゃ~オケウェー君~!また後わね~!今はこの子と少し話があるから寮への道を自分で探していきなさい~~!」


ゴドー―ン!

それだけ言うと、どこかへと紫色の子を連れて行った。


ひゅ~~~~ん!

微かなそよ風だけを残すと、部屋に残されているのは俺と学院長だった。


「【南蛮人】に相応しき災難だったな」


からかってるのか嘲笑してるのか分からないことを口走った学院長。顔は相変わらずのきつい表情なんだけど。


……………


……


それから、俺は自分の部屋が待っているであろう寮へと向かうために歩き出した。


どうやら、あの胡散臭い仮面したゼナテスの手回しにより、俺のために一部屋だけ開けるよう寮生の登録名簿を改竄したらしい。さっき、学院長室を出る前、そんなことを学院長が把握済みだと言って、俺が入寮するのを許してくれた。


ったく、どこまでが演技でどこまでが本当なのかっ……


ゼナテスのやったことを黙認したことから考えると、俺を嫌うって態度を見せるのだって、ただ俺の覚悟を試す一環だったりー?


まあ、考えていても仕方ないので、俺の持っていた荷物を先回りしてひっそりと寮へ届けに行ってくれたゼナテスの事を一旦気にしないようにして、まずは寮へと向かう途中に学院内でも見まわろう。


「食堂にでも行って軽い昼飯でも買っておこうかぁー」

そうと決まれば話が早いので、食堂のある棟の3階へと昇っていった。


「すみません!このジャガイモと肉の一セットの弁当箱、一個お願いしますっ!」


「あいよー!...って見ない顔の坊っちゃんだけど新入りかぁー?珍しい肌してるわねぇ~」


「あ、はい!新入生です!授業を受けるのは明日ですが今日は寮で食事を取りに買っておきたいです!」


「まあ~ご丁寧にお喋り出してくれちゃってまあ~!やっぱ、共学っていいわねぇ~」


他の生徒はまだ授業を受けている最中ので俺一人しかいないけど、なんか親切なおばちゃんを購買部で見つけて一喋りを楽しんでいた。


キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン!


予冷が鳴ったようだね。昼飯を告げるための。

今頃、昼前の授業が終了し、昼食を取りにくる学生を待つようにあそこのベンチに座る。


わいわいーわいわいーがやがやーーがやがやーー


「でねでね!わたしの精霊って可愛すぎない?去年の【学院最高美精霊大会】トップ10体に入った子よ~?」


「ええー?そうかな~?確かに可愛いったら可愛いけど、なんか戦う時の構えが物騒すぎて怖いんだよなぁ……」


「ねね~!アメリアちゃんも試してみる?このチョコパンの魅力的なとろとろの一口を?」


「却下ですっ!間接キスなんて恋人同士がするようなものをワタシにさせないで下さい!」


「おい、てめえ!逃げやがったなこのガール!まだ決着がついてないからアタイとまた勝負しろーー!」


「お断りです~っ。誰があんたなんかに構うもんか~!」


こちらのテーブルでさっき買ったばかりのパンも頬張って姦しくて話し合っているばかりの女子学生の騒がしい姿をここで拝見させてもらった俺。


やっぱりここの学院の女性用制服って可愛いんだなぁ……改めてみると。


さっきはあの紫色の子の形相があまりにも剣呑すぎて警戒しか感じなかったけど、思い出してみると確かに可愛かった。制服が。


夜色と赤色が融合した配色のそれは長袖で王侯貴族の令嬢ばかりが通うには相応しい服装に仕立て上げたものだと言える。但し、ミニースカートもフリルがついているものなので、可愛さがいっそ引き立てられる意匠となっている様子だ。


「ね、見て~あそこの男子。なんでか分からないけれど肌が黒すぎない~?」


「ほ、本当だ!って、もしかしてここの王国民ではなく外国の方~~!?」


「そう見えるね。でもここら周辺国にああいう肌してる人はいないはずよ。するとー」


「そもそも、この大陸ギャラールホルーツの住民すらいないって可能性もあるよ?」


「ねね~もしかして彼は悪名高い【呪われた大地】からの留学生だったりして!?」


「へええーー!嫌だよそんなの~~!魔術も何も使用できないあの不幸な貧しい地からの人がうちの学院へ過ごしになるの、絶対嫌ヨー!」


「おい、おい、見てみて、ダークチョコの色してるあの男子、もしかして【呪われた大地】から留学しに来た【南黒人】かもしれないよ?」


「うええ~!なんか気持ち悪い肌してますわね、あの子!フェモンー!わたくしに10メートル以内でも近づかせないよう見張って頂戴ー!」


「畏まりました、お嬢様」


なんか不穏な響きのある会話が聞こえてきたんだけど、やっぱり俺の外見と出身地が災いして早速悪目立ちし出すかぁ。


ただでさえ共学になったばかりの今年だからか、男子生徒はまだ俺一人だってだけじゃなくてああも敬遠されるとさすがに傷ついちゃうなぁこれ。


行くべきじゃなかったと後悔しなくもないけど、俺はただおじちゃんを直すための使命として、何があっても絶対に【精霊術】をマスターすると再び誓った。


「おはよう、新入生君。お邪魔していいかしら?」

「ほえー?」


邪険にされるばかりかと思いきや、今度は予想外に優しく声をかけてきた女子が見えた。


「あんたは..?」


「ふふ...クレアリスよ。クレアリス・フォン・シュナイダーって言うの。・シュナイダー侯爵家の一人娘よ」


挨拶してきたのは、ロングヘアな青色の髪をしている子で、前髪を斜め流しにしているようだ。ニコニコと気さくに微小を浮かべている彼女は静かに俺の隣で腰を下ろした。


「ね~見て?ね~見て?あの二人……いきなり隣り合わせで座ってるんだけど、なんか変じゃない~?」

「まさかあんな【南蛮人】にまで手を出そうとするなんてー!やっぱり何考えてるか分かんない女ね、あのクレアリスって子は……」


「クレアリスさん...病気が移らないといいけど...」


「まあ、ほっといておきなよ。あの女のすることなんて気にするだけ無駄よ」


……………


「わ、悪いね。俺のせいで周りから変なこと言われてて…」


「~ううん?別に気にしたことはないわ。それより、噂に聞いた通り、確かにチョコレートな肌をしているようね」


遠慮もなく俺の長袖の下にある右手を彼女の真っ白い指先が触ってきて感触を確かめるように握ったり開閉したりもする。


「あ...あのぅ...」

なんかくすぐったいので止めるようやんわりと声を出すと。


「名前は聞いてきたけれど、一応聞くと君はオケウェーって言うのね?」

「あ、はい。そうだね」

短く答えると、


「ねぇ……【漆黒の魔王】って言葉を聞いたことがあるのかしら?」


「ーはい?」

何言ってるのかぽかんとした俺に、


「うちの家の伝承としてずっと代々と伝わってきた話よ。『神の者が一つの形を成すと、定められし邪悪なる極神が復活し破滅を齎しに君臨す。でも、最後の瞬間となりて食い止められよう、【漆黒の魔王】の手により』」


「………」

この子、もしかして妄想癖な子?あるいは、本当に家から伝わった伝承を会ったばかりの初対面な俺へ伝えに?いやいやいや。合点がいかなすぎだろう!


ゴドー!

ベンチから身を起こしたその子は、


「今は深く考えなくていいわ。でも覚えておいて。【漆黒の魔王】は絶対に運命からは逃げられないわ」


それだけ言うと去っていくクレアリスっていう子。

謎の多い子だったな。


……………


それから、好奇な視線に晒されるのは嫌なので、食堂から移動させた俺は寮へ赴く前の最後の巡回として、これから【一流の精霊術使い】も目指していこうとする俺にとっての一番大事な場所、【訓練場】へと見に行くことにした。


お昼の時間が終わったばかりで、絶対に人がいないはずの時間帯で訪ねようとするんだが、何故か心がざわつくような感覚を覚えた。


まるで、運命的な何かが俺に向かってこっそりと近づいてくるような、そんな緊張感マックスな何かを直感で感じ取った。


タタタ……


外に出た俺は青空の下で空気をいっぱい吸いながら、本棟の後ろにある壮観な作りがする試合大会にも使われそうな石性の闘技場らしき広場に向かう。


円形状の観客席もいっぱいあるそこへ、俺は厳かな感じの門を潜りぬき足を踏み入れた。

まだ学院のルールや設備に慣れておらず、戸惑いながら周囲を見渡す。


すると、中央で自主練をしている女子生徒らしき姿が目に飛び込んできた。


「それーー!へやーーっ!せいー!」


舞うように何かの激しいダンスっぽい動きをしながら、手元にある何らかの武器?(銃っていうのかな?本で画像と解説蘭を見たことあるけど初めて見る)を握り持って、なんか指先が一か所あるとこで人差し指を繰り曲げて、それからー


バー――ン!バー―ン!

連続で二つまでの閃光がその小型な武器らしき物の先端から発砲された。


ガチャガチャ――!!

遠くの訓練用の的らしき鉄の版をああも軽々と貫いてみせた彼女。


よくよく見てみれば、穴が開けられたところからは周りに氷みたいな膨らみが小さく出来上がり、それが徐々に拡大し的の全面を氷漬けにした。


「ふぅ…」

ダンスっぽい物の途中で発砲したため、今度は綺麗に着地した彼女は溜息を出すと同時にあの銃らしきものを手品でもするように綺麗さっぱりに空気と化して消した。


ウエーブ型の金髪ロングにして美しい真ん中分けの前髪をしているその少女は美しくも凛とした雰囲気を纏い、高貴な身のこなしで一つひとつの動作に上品さを欠かさずに心掛けた様子だ。


挿絵(By みてみん)


「き、綺麗すぎるーーっ!」


思わず目が奪われるようなその高貴な姿に、感動で涙が滲み出そうになったり、心も打ち震えたりするような高揚した気分になってしまった。


「男の声ぇ?誰―つ!?」


バー―ン!


「ーファー!?」


さっき声を発してしまった俺に気づいた彼女は驚いたと同時に容赦なくこっちの方に向かって銃?を撃ってきた!さっきの凍らせることのできる球だ!


「ーシーット!」


咄嗟の事で思わずいつもの癖で【ボーヌソード】を召喚しようとした俺だったけど、【死霊魔術】が使えると言う事実を隠す必要があると思い出して、断念せざるを得ない。くそっ!いくらここへの距離がこうも離れてるとはいえ、あの音速のスピードで打ち出されては直ぐにこっちへと到達する!


「あーっ!丸腰の子ー!?いけない!」


氷の球が俺に命中しようとした寸前で何でかスピードが一瞬にして下がった。


「チャンスだー!」

こうなったら、素手の手刀でも迎撃できる、【魔力】を込めさえすれば!


カチャ――ン!カチャ――ン!

「それしか出来なかったけど、あれで一応あんたに当たらずにして球の効力を先に発動させた。その機に逃げてー!」


球が子爆発をして、空中で氷の破片が飛び散ってくる。

やばい!あれに当たったら、傷つくぐらい容易に想像がつくので早く迎え撃たねばー!


【死の息吹】という本来の俺の本当の力の源を一切合切使わずに、これを迎え撃つ方法があるとすれば一つだ!


【聖魔力】だ。昨日、この大陸へとやってきて宿に到着した時点で既にゼナテスから確認を取っていたが、昔じいちゃんの本で読んだとおりに北大陸人がよく日常生活で使いこなせる(といっても一部の人である魔術使いしか使用できないらしいが)【聖魔力】を力の源とし、それで一般的な【四元素魔術】、【精霊術】と【物理法則干渉魔術】に変換し、様々な魔技マジック・アーツを行使できるようにした。


つまり、『郷に入っては郷に従え』というように、【死の息吹】たる死霊魔術使いの本来の原動力を使わずに、初めて【聖魔力】を自分の体内へと呼び寄せるよう意識を集中した。


シー――ン!

すると、


ガチャ――ん!


「できた!」


【聖魔力】を自身の右手に纏わせた俺の右手は白く淡き光を発しながら、こっちに向かって『弾丸』みたいな勢いで飛来してきたすべての氷の破片を手刀の一振りで破壊することができた!


でも安心しかかった俺に、油断が生じた!


「ーワーッ!ダーファーッ!?」


昔じっちゃんと一緒に過ごした頃、なんとなく北大陸で良く使われる一般言語である【ギャラ―ルド語】を学ばされたことがあるけど、まさかここでやっと役立つことになるとは夢にも思わなかった。だが、咄嗟の事で母国語でびっくりした声を出した俺は、つい気づくことになる。


もう別の氷球がすぐ眼前まで迫ってきたことにーーー!

そんな!どうして?さっき彼女から撃たれてくるところを目撃できたから見違えるはずがなかったけど、確かに一回だけしか発砲の音と閃光を見なかった!


なら、これがどこからー!


「ちえーッ!」


チャ―――ン!

命中しそうになった前に【聖魔力】が纏われた右手の手刀にて、迎撃した!


「ああー!」


しまった!何故そうなったか分からないが、振り叩いた小さな氷球が破壊されずに、軽い衝撃だけではじき返されるそれは元撃たれていた方向へ逆流した感じであそこへと戻ってしまう!


これで、あの子の方に向かっていくじゃないかーーー!?


もう迷うことはない!記憶の片隅に残っているけど、確かにおじちゃんと一緒に過ごした7年間で【あれ】を本で読んだことがある!


「間に合え――!!」

シュウウウウウーーー―――ング!!


ゴドー―ッ!

「痛ッー!」


ありったけの力で金髪少女の身体を突き飛ばした。【聖魔力】にて、試してみた【近距離転移術エルノイーナゼフット】が成功し飛び掛かっていった途中で発動したので運よく彼女を突き飛ばした勢いと同時に地面へ顔面から落ちることにもなるので自らの手ではじき返されてきた氷球に当たらずに上を通過していった。


「大丈夫かー!?」

彼女に傷があるかどうか確かめるために下に目を向けると、


「あんた...もう言い残すことはないわよね?」


「えー?」


彼女の鋭い視線と険しい表情の原因が分からずに一瞬慌てていたが、しまったとすぐ気づいた俺は彼女の上半身があるもっと下へと視線を下げると、


「オーゥ・マイ―・ゴッド―!」


終わりだ!


突き飛ばした彼女の胸を鷲掴んでしまったのであった!


よりによって、初対面の女子にこんな仕打ちをしでかしてしまうとは、つくづくついてないなぁ、学院への入学初日は、あははは……


金髪少女の怒り心頭の怖い顔を見ながらこれから俺を待っていたであろう波乱な展開について乾いた笑いを漏らすしかできない俺だった。


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