第二十一話:作戦会議
同日の学生寮のオケウエーの部屋、マティールダが課した制限時間内の30分だけみんなで居座っていい、開始される午後8時:40分にて:
「夕食も済ませてきたし、作戦会議を始めようかー!」
俺は自室でみんなを集めて、対『純粋なる淑女研鑽会 』の作戦を立てようとする。
「三日後…わよね、クリスティーナ会長の言ってたっていう【チーム戦】?」
「ああ、俺達【チーム・オケウエー】があちらとチーム対決の試合をして、どっちかが負けた方が勝った方の要求を呑むって言われて……」
「あの時、やっぱり挑戦を受けるしかなかったんっすよねー?従わないと、学院生全員の署名を集めて学院長に直談判して僕とオケウエーを多数決で、票数の多いはずになる賛同の意を圧倒的な材料で以って、僕達ふたりを学院から追い出す正当な方法を取ってくるからって言ってたんすよなー?」
「そう……だから、俺達が絶対にその【チーム戦】対決を受けなくてはならないようにできたんだ!『アタクシらが【チーム戦】で戦わなくてもいいんだが、ソの場合、『こちらの方法で』二人を追い出すぞ?さあ、決めろ!『チーム・オケウエー』のキサマらー。戦わずして絶対に追い出されるか、ソれとも戦って僅かにでも勝てる希望を見出して最後まで悪あがきするんデスかー?ソの選択はキサマらの自由デス』ってー!」
「改めて聞くとやっぱり狡猾なやり口だったわよね……【チーム戦】にまで挑む必要がなく、ただの署名だけであんた達二人を追い出せたのに、わざわざ格好の舞台まで用意していたということは……」
「敢えて『正攻法』に見せかかて、実は罠のつもりで【チーム戦】を挑んでくるだろうな…」
実際、もし本当に戦うことになったら、何かを仕掛けてきてもおかしくないって感じなんだよなぁ……
「でも、あのクリスティーナっていう先輩さん、なんか怖い表情ばかりしてたけれど、喋ってるとなるとどうにか相手の精神と思考を内側から鷲づかんできて放さないようなカリスマ性を感じましたよね?」
「そうよね…やっぱり女性至上主義を唱える部活みたいなのを立てるだけあってそれなりに大勢な人の心の心理をよく観察するだけで制御したり影響を与えられる何かを持っているのね……」
ジュディの意見にそう反応したクレアリスだけど、
「………」
「ヒルドレッド?……顔色あまり良くないけど、もしかしてさっきの子、……あのレイーザリンって2年生の先輩のことがそんなに……なの、…か?
なんかあそこで座ってるヒルドレッドが黙ったままで何か考え込んでいる様子なので、聞いてみると、
「……」
「おい、ヒルドレッドー~?聞こえてるかー?」
反応がなかったので、前のめりして彼女の顔の前で手をフリフリしてると、
「おい~!ヒルドレッドー」
「えいー!」
「~!?おっ!お~~ほほほほほー~?ほほは~!?お~ほっ~?」
なにー?あろうことか、俺がぼっとしてたヒルドレッドの注意を現実に戻すべく呼びかけたたら、いきなりジュディの奴が俯いてばかりして深く思考に耽っていたヒルドレッドの後ろに回り込み、擽っていったのだった!
「~~!?おほほほほほ~~!もうお止めにしてぇ~ふほゥうおお~~!!?お~ほほほほほほほほー~~!!!」
擽り攻撃を止めないジュディにヒルドレッドが涙目になって笑いが止まらないみたいなので、助けてやるべく俺がジュディにストップをかけようとするとー
「もうそこら辺にして頂戴、ジュディ!ヒルドレ、……もう戻ってきたわよー?」
どうやら俺がやるまでもなくオードリーがちゃんと止めてくれたようだ!偉い!さすがは昔からヒルドレッドとの交流を続けてきたというだけあってちゃんとフォローできるようだね!
……………………
「こ~ほん!では、本格的な作戦会議に戻らせてもらいますわねー!さっきはお見苦しいところを見せてしまい御免あそばせ~?……それでは、まずは【チーム戦】になった場合の作戦会議から、…ですわよねー?では、最初に考えなくてはならない課題としてはあの【純粋なる淑女研鑽会 】の各メンバーの総合的戦力、ですわね。それなら、まずはリーダーであるクリスティーナサンから始めますが、実はこの人はー」
よし!ヒルドレッドも本調子に戻ったみたいだし、レイーザリンとの過去の複雑な事情を脇においてそうで何よりだ!
「社交界で何度か彼女と会ってきてはいましたけれども、なにぶんこの学院に入学してきたのが今年の一年生になってからなので、去年の彼女達2年生が1年生だった頃この学院の数々の試合と決闘と大会を経てどんな戦いを経験されていたか直接この目で見たりしたことなかったんですけれど、噂と情報網だけでも何度か耳に入ったことがありましたので、正確に言いますと彼女の『契約精霊』は『ネトロファイッス=セデロ』という二足歩行の頭だけ鳥類系で、身体の方が赤青二色の肌を持っている『人間らしい身体』の外見の精霊でしたわ。精霊の主な能力と戦闘スタイルは『近接戦闘特化型』なんですけれども、長い尾も生えているので距離が離れたところであっても油断ができませんわね。で、武器化した時はロングソードの形になると聞いたことありますので、そうでしたわね、オードリーサン?」
「…そう、だったわね。…私の記憶が正しければ、確かに去年の【精霊術士学戦武闘大会】の準優勝チームだったかしらー?『チーム・ 純粋なる淑女』として参加していた1年生だった彼女達が優勢で2年生を代表していた当時のエルヴィーナが急用ができて抜けざるを得ない『チーム・エルヴィーナ』を圧倒して勝利した後、最後は格上だった3年生を代表しての相手、『チーム・ルクレツィア』に敗れたけれど、中々の善戦だったと聞いたわよ、クリスティーナのチーム…」
「あれほどか……」
ヒルドレッドとオードリーの会話を聞いて、去年のクリスティーナのチームが善戦したことを知りなんか手ごわい相手になるだろうなぁって思いつつも、
「でも、彼女が『チーム戦』で武器化した精霊のみで戦うルールがあったら、こっちとしても戦術の立て直しを大幅に変更する必要がないだろう?クリスティーナの武器化した精霊がロングソードなら、俺が彼女とこの聖剣で戦うことになるが、俺のサポートに回すメンバーが一人だけいれば十分だと思うぜー?」
「問題は誰がお前のサポート役に回るかってことっすよねー?」
「そうだな……」
できれば、あれほどの破壊力抜群のオードリーの氷の子熊なら、ぜひ彼女を俺と一緒に2対1でクリスティ―ナを圧倒したいが、生憎とオードリーは【スタンダード陣形】だと右翼を担当することになるので、左翼を担当する俺とは距離が離れすぎて俺の前に向かってくる敵が一人でも立ちはだかったらクリスティーナとぶつかる前に、もしかしたらオードリーを先に片付けようとするクリスティーナの作戦が成功するだろうなぁ……
なので!まずはあちらのチームメンバ残りの3人がどう動くか、彼女達の情報も聞いてみないとー!
「じゃ、ジュリアは前に見せてもらったことあるんだけど、どうやら彼女の『武器化した精霊』は茨の鞭を使っていたそうだったので、彼女と戦う場合は絡みとられないように心がけて戦ってれば十分な気がするとして、他にジュリアに関する精霊の能力が何なのか、ヒルドレッドもオードリーもなんか知らないかな?」
「いいえ、それについては全然でしたわ。なぜなら、去年の【精霊術士学戦武闘大会】だった頃に、『チーム・純粋なる淑女』を殆ど勝利へと導いていけたのがクリスティーナたった一人だって聞きましたわよー?」
「たった一人だとーー!?すごいな、それぇー!!」
やっぱり、学院長の娘というだけあって、彼女も母親同様に優秀すぎて要注意する脅威だってことぐらいが分かった!でも、お前がいくら強かろうが、俺のイーズは絶対に負けたりしないからなー!
「ええ、クリスティーナは強かったわ....正直、私とオケウエー二人だけで彼女を倒せるかどうかすら怪しく思うぐらいわよー!......でも、ジュリアに関しては私も何も聞いた事なかったわね....。というか、クリスティーナの妹のリーリスに関する情報も知らないわよ、そんなの!去年は精霊術学院はおろか、私の母校である王立中等学院にさえ在籍してこなかった、『ホームスクール』だけを主な教育生活を送ってきたって聞いたわ」
「へえ....ホームスクールだけかぁ....」
「後、......あの、...レイ―!レイーザリンっていう忌々しい女もですわー!昔によくもまあ、わたくしに屈辱感を味わわせてきた最悪なイジメっ子でしたが、その時は『契約精霊』が何だったのか見せて貰えませんでしたので謎のままですわね.....去年も参加者の一員にはいなかったらしいですし....」
「オケウエーさん!あのジュリアって2年生の先輩っ子を私に任せませんかー?」
「えー?」
ジュリアの武器化した精霊の姿って、……確かに前の【聖体正義戦獣】となったイリナと戦った時、加勢しにきた彼女の武器って鞭だったな!それも茨が多い方のー!なんか考えただけで身震いしそうなんだけどー!?
「あいつの相手をお前一人で努めるのが無理かと思うぞー?」
なにせ、幾度となくジュリアからのキックを受けてきた俺が言うが、一撃を受ける度に確かな衝撃の重さを感じて、彼女の足を受け止めた俺の腕が感じ取ったジュリアからの聖魔力量がどれほど高いかを確認することができた!なので!
「クレアリスと一緒になって、ジュリアの撃破を頼むぞ!」
「それなら任されましたよ!クレアさんもいいですよね、ジュリア先輩を私達が引き受けてもー?」
「ふふ、ドンとこいよ…」
え?
「……『クレア』さんっていうのはー?…」
「ああ、まだ言ってませんでしたっけ?これは私とクレアリスがお互いにどう気軽に呼び合うべきか、この間で話し合った結果、自然についちゃったクレアリスさんの新しいあだ名ってことなんですよー?」
「へえー……」
クレアリスとジュディってもうそこまで仲良くなってたんだな……
「とにかく、ジュリア先輩は私とクレアさんで押さえてみますから、オケウエーさんとオードリーさんはクリスティーナとの戦闘にだけ意識を集中して下さいねー!」
「あ、あー!」
「じゃ、僕にあの『チーム・ 純粋なる淑女』の中一人だけ1年生の子のリーリスを委ねられるんっすか?なんだか繊細そうな子だし、僕ならばお互い『チーム内だけ最弱者同士』での対峙で丁度いい勝負にはなるんじゃないっすかねー?」
「ふむ、……なら、クリスティ―ナの妹らしいそのリーリスをお前に任せておいていいんだなー?」
「おうー!」
ジェームズは快く引き受けてくれたようなので、残りは……
「ヒルドレッドー!」
「はいですわ、オケウエーサン!もう何も仰らなくていいですわ、リーダーサン~!もう自分の役目は何なのか、言われなくても分かってるんですもの!」
「…それならいいんだな、...あのレイーザリンって子の撃破をお前に託しても?」
「当然ですわー!わたくしを誰だと思ってるんですのー?もう一度言うんですけれど、わたくしは『オールズティニア家の若き撲殺女』ですわー!もう昔のいじめられっ放しの自分じゃなくなったんですもの。ですから、今度こそ、あの性悪な女をぎったんぎったんに叩きのめしてやりますわよ、お~~ほほほほほほーー!!!」
「それでこそヒルドレッドだな!じゃ、作戦会議を締める前にもう一度、対『チーム・ 純粋なる淑女』の戦術をまとめておくんだねー!まずは、今まで通りの【スタンダード陣形】にて、前衛の俺とオードリーが相手のリーダー各たるクリスティーナを集中攻撃で押さえてなんとか勝利してみせるー!その間に、ジュディとクレアリスはあの【もう一人の足癖悪い少女ちゃん】をぶっ飛ばす!いいな!」
(誰がもう一人の足癖悪い少女ちゃんよ~!オケウエー!)
「はいです!私とクレアさんの連携プレイを後で動画で見たらきっと驚きますから楽しみにしててね、えへへ…」
「ふふ、任されていいのよね?ではうちらの活躍に期待して頂戴、【漆黒の魔王君】。ふふふ……」
なんかワクワクするような前向きな笑顔を浮かべている最中のジュディとクレアリスにほっこりしながらも、最後に、
「じゃ、俺とオードリーはクリスティーナっていう男嫌いで有名らしい『チーム・ 純粋なる淑女』のリーダーを叩くぞ!オードリーもこのいつも通りの前衛ポジの戦術でいいんだよねー!?」
「ええ、勿論わよ、オケウエー!離れたところにある右翼にいる自分なんだけど、あんたの背中は私が駆けつけていっても絶対に守ってみせるから、だから心置きなく全力で征きなさいー!」
「そのつもりだぜ、オードリー!サンキューな!お前のような頼りになる女の子が仲間で本当にありがたいー!」
「戦いもまだ始まってもいないのに、お礼を言うのはまだ早いわ、ふーん~!」
それだけいって、そっぽを向きながらどこか照れるような表情を横顔ちらっと見ただけで分かるぐらいの照れ隠し。
「ジェームズはリリースの相手を頼む!いいんだな!?」
「おうよ!任せておけって!」
「それじゃ、もう時間だし、寮母のマティ―ルダになんか言われる前に解散するぞー!」
「おう!「はいです!「ふふ、そうね「分かったわよ!「では、また明日の訓練ホールにて全員集合しますわね!」
それぞれの返事を返した『チーム・オケウエー』の仲間達5人の退室していく後ろ姿を見ながら、俺もベッドに潜る前に少しだけ歴史学の宿題をやっておくことにした。
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