表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/140

三十一話:事後処理。そして、フェクモに起こった不穏な出来事

【クリスタルの大洞窟ルネヨー・フラックシス】の第一階層の大広場にて、『闘志級27体』と『剛力級1体』の大襲撃後:



「負傷者全員はすぐに応急処置して!その後は重傷者だけ外へ運ばずに、アールシェラ保険医教師が順番にやってきて治療するのを待ってください―!」

「「「「はー!」」」」


第一階層にて、一年生全組が協力して、27体もの『闘志級』を何とか討伐することができた(元々は今日の大広場にあった大規模戦闘には正確に言えば30体からの襲撃があったけれど、3体までの『レイジ・エープ』がオケウエーとオードリーに倒されたから27体だけが一年生全員の標的ターゲットとなった。


その後、見えないはずの『樹界脈』の異様な具現化が起きたのを機に、一体だけの『クーイン・アント』が出現して、大広場にいる生徒全員を血祭りにしようとしたが、そうなる前に、


「じゃー!特別治療遊撃隊第2小隊のみんな~!仕事開始するわ~~!」

「「「はい、イリーズカ先生ーーーー!!」


あの時、『クーイン・アント』という剛力級の世界獣は、出現して15秒も満たない間に、増援にやってきたイリーズカ先生に粉砕された、言葉通りに……


時々、ふざけた感じもする先生とか、無邪気すぎる言葉遣いに先生らしさが足りないって思う人もいるにはいるが、イリーズカ先生も一応は経験のある教師とも言えるので、いざとなればしっかりと本来の『先生らしさ』を見せて場を取り仕切ることに関して抜群の行動力と並々ならぬ信頼感や戦闘力を発揮できる。


………………

35分後:


「ーイリーズカ先生!負傷者すべてに治療が終わりましたーー!!軽傷者35名ははわたし達の【特別治療遊撃隊第2小隊】が【傷所治癒魔技(マジックアーツ・オブ・インジャードパーツ・ヒーリング)】にて治癒活動を完了しましたけれど、それだけで完治までにとはいかない中傷者10名と重傷者4名はアールシェラ保険医教師が何とか治療を施して、魔術だけじゃなくて一般的薬草の使用も混じっての優れたご活躍を見せてくれましたーー!!」


イリ―ズカ先生に報告を済ませた『特別治療遊撃隊第2小隊』のエリーゼ隊長がその銀色の髪の毛と短いフリルの入ったミニースカートを揺らしながら敬礼をし、先生からの反応を待つ。


どうやら、部活動として【特別治療遊撃隊】に参加した彼女が一年生の遠征授業を背後からサポートしてる2年生にして、5名からなる2小隊を務める隊長のようだ。任務はただ戦闘中と戦闘後の負傷者を回復したり、死者の遺体の回収を手伝うっていう一部の大人が聞くからには易しい仕事みたいに思われるんだけれど、どこか心理的にもきつい部活動ともいえる。


「~うふふ。ご苦労さん、エリーゼ隊長。そして、……そこのリルカとシャルロット!」


「はい、何でしょうか、先生ー?」

「あたしになにか用?」


さっき、二人が第二階層から戻ってくる前に、既に増援にきたイリーズカ先生が『クイーン・アント』を討伐済みだったので、さほど活躍の場が用意できずに不満の色が滲み出てるシャルロットの方だったが、


「この場での悲惨な光景見てきたからには学院を代表しての謝罪会見にも参加してくれるわね~?そして、……『弔辞会』にも」


「……承知しました、それもわたし達、『チームリルカ』の仕事です!」

「あたしもクロディーヌさんのことでショックがまだ抜けきってない心情なので、参加すること自体、

責任感を感じるんだね……。でもするんだよ、リルと同じく、この旅の遠征授業の【負傷死者保険会】のメンバーの一人だから」


ただの1年の学院生である自分こそがさも負傷死者の両親達への負い目があるような潤んだ悲痛な顔を浮かべるシャルロットと対照的に、どこか義務感満載のシリアス顔だけをしてるリルカだった。


でも、彼女達の『学院代表者としての犠牲者の両親達への謝辞、賠償金の引き渡し証人と事後処理の分析会参加人』の仕事はれっきとした【負傷死者保険会】のものであり、一年生にとってもっとも大きな単位がもらえる【部活動】となる………


なので、緊張しながらもどこか気合の入ったところも垣間見える。

たとえこれが二人にとっての『初の任務』にも関わらず。


「それにしても、ニナはどこにいるんでしょうね……自分一人で精霊を探しにいくって言ってたけど、大襲撃の後の今、どこを見ていても姿が見えないんですが……」


でも、ニナという子の不在を確認した後、不安が募る心境もリルカの思考を占めているはずなので、彼女の浮かべてるシリアスな表情も任務に対する使命感ばかりじゃなくて友達同士になったばかりの

ニナに向けられてる心配の感情からも含まれるだろう……


「ニナなら、精霊と契約できてからあたしたちのチームに入るかもって言ってたことあるんだけど、一人で探しにいくって無茶なことしようとしたんだけど、それを咎めたら拗ねて避けられてるんだよー?今頃どっかへ行ってしまったんだろう。大規模戦闘から遠ざかったところにいて……」


シャルロットもリルカの疑問に対して、事実を伝えたようだが、二人はまだ知らない。


ニナという子は実は既に大広場にて、3体の闘志級である『レイジ・エープ』に襲われてオケウエー達に助けられたこと。


そして、オケウエー達からの救出を無駄にしないよう、あの場から引き返して、入り口付近だけで精霊の存在を探していたっていうことがある事について……………………


………………………


どうやら、この場で起こった世界獣の大襲撃に対する応戦を指揮していた精霊術使いのA組のクロディーヌだけじゃなくて、他にも3人の死者が出てきた模様。


15歳での殉死に動揺している子も出てくるはずだが、精霊術使いとしての在り方を選んだり選ばされたりしてる以上、そして精霊術学院に入学してきた以上、いずれその可能性に直面する事態が起きていても不思議じゃないので、今更何言ってるのっていうスパルタン思考の子も多いのが自己責任至上主義という理念を掲げるこの学院の最も強い影響力と言えるだろう。


こうして、これで大広場にあった大襲撃に応戦していた殆どの一年生達に、計53人が負傷死者の記録書の中に入ってるレベルの悲壮感満ち溢れる異例な大事件となったのである。



……………………………………



…………………



第二階層の休憩場にて:


「ふふふ……お二人もやっと【契約精霊】を獲得してきたようなのね?」


「うっす!身体能力強化がダメな僕だったんっすけど、『この精霊』だけは特別なんっすよねー!戦闘で参加することあったら見せるっすよー!」

「はいです!今はまだ契約したばかりで詳細はまだみんなに話せないですが、いずれお披露目してもいいですよー」


「おほーっ!それならいいですわ!あそこにいるオケウエーサンもやっとあの【契約精霊】を持つようになったんですけれど、まさか【愛の大聖霊】様までと契約できたなんて……それに、彼の側につきっきりで座ってるその幼い少女は本当に大聖霊様なんですのー?ブレーザーを羽織ってるそれはオードリーが貸したと聞きましたけれど、何なんですの、その綻びそうな包帯ばかり巻いててロクな服も着てらっしゃらない子でー」


「……そればかりはあたくしも聞きたいわよ、ヒルドレ!でも、今のオケウエーじゃ……」

「まだ眠っているようですわね、彼ー。まったく、前に貴女がとんでもない【最強部類の剛力級】の『グリーン・ジャイガント・スイーパー』に襲われたからオケウエーサンが間に合って救援しに戻ってきたと聞きましたけれど、彼が討伐した後もう2時間以上経ちますわよねー?なのに、まだ起きてないとなると……」


「…ちょっと待たせてもらうわよ。…あたくし、『彼女』とちょっと話があるから」


言い終えると、立ち上がったオードリーはすぐにあそこで気絶というか眠ってる姿のオケウエーを隣でちょこんと見下ろしてるイーズベリアの方へと向かった。


「え、お、オードリー?…って、もう行ってしまわれたんですのね……」

「ふふ…まあ、あの大聖霊様と何か大事な話がありそうみたいだし。今は少しここで見守っ方が得策のようね、ヒルドレッドさん…」


「『3体の大聖霊』の一人って聞いたけど、なんか可愛い愛玩動物みたいな女の子でちょっと抱きしめたくなった気分になりますよね、そうでしょう、ジェームズー?」

「そ、そそそうっすね、あははは……(まあ、僕はロリコンじゃないけどあまりそういうの振ってこないと助かるんっすけどね、ふぅぅー)」

「ー?」


乾いた笑いを漏らしたジェームズに訝しんだ目を向けたジュディだったけど、構わず、


「それにしても、『愛の大聖霊』様とまで契約できちゃうなんて……やっぱりすご過ぎますね、オケウエーさん!これはきっと、後になって学院で語り継がれる『初の男子生徒の快進撃譚』ともなり得る展開になりますよねー!」

「う、…うっす!僕もそう思うっすねー!まったく、僕を差し置いて真っ先に学院初の天才級の男子生徒になったとはいいご身分っすよね、あはははー!」


「それ、冗談の割にはあまりネガティブ過ぎませんか?ジェームズも既に精霊と契約できたし、オケウエー程の伝説的な聖霊様じゃなくてもいいじゃありませんかー?大活躍できる場面もこれからの3年間の期間にいつか訪れてきますし、ファイトですよ、ジェームズ!」

「う、うっす!分かったよ、ジュディ!」


「いいですね!私達はいつまでも、卒業までも仲良しの3人で通いたいです!どんな試練が待っていようともねー!」

「そうこなくちゃなー!3人平民組の僕達、学院生全員に『我々庶民』の根性を見せてしんぜようー!なんちゃってー」


「あ~ははは!なにそれー?」

「なんとなく言ってみたかっただけっす、~はははー!」

それだけ和気あいあいと笑いながら話し合ってる二人に、


「あら、彼ら、そんなに会話が弾む子達ですの?入学する前はただの他人同士だと聞きましたけれど……」


「ふふ、うちからは単なる友達同士の楽しい会話に見えたけれど、敢えて『関係の微弱なる進展について』の疑問で聞くなら、あの通路の中で何か試練をクリアしたんでしょうー?ヒルドレッドさん」


「そ、それは!御免あそばせですわ!今はまだ…わ、わたくしからは何も言えませんけれど……(精霊のことを話さなきゃいけなくなるし……まだ秘密にしてと頼まれたんですのよね……)」


「…そう。まあいいわ。せいぜい二人の様子を見守ってるだけでいいわ……(『漆黒の魔王』の邪魔にならない程度にね、ふふふ…)」


それだけ言い合ってるヒルドレッドとクレアリスは直ぐに沈黙し出して、お互いに黙々と保管しておいた軽いティ―タイムの軽食を楽しむだけだった。


…………………………


「オケウエー、いつになったら起きてくるの?大体把握できるでしょう?あいつの契約精霊だし…」

『イェース。オケ兄ちゃん……起きるの……まだ先。帰る時に、ジェームズが……おんぶしてく必要あるんだよ』


「ふーん…そんなことまで分かるんだー。やっぱりあんたはあいつの契約聖霊だけのことあるわよね」

『そんなところ……だよ、オード姉ちゃん。オケ兄ちゃん……必殺技使うの……疲れたし』


「ぶーふ~!だ、誰よ、『オード姉ちゃん』ってーー!?いい~!呼ぶならせめてオードリーお姉さんか嬢さんにしてよねーー!?」

『ノー。それはできない……相談だ』


「何ですってー!?大聖霊だからって生意気よー!このー」

『乱樹脈発生』

「ーえ?」


『聞きたいために側まで……やってきたんでしょ?なんで樹界脈……見える途端、【世界獣ワールドビースト】が一杯出現するの……』

「…え、ええ、確かにそうだったわよねー!うん!それで、一体なによ、その…『乱樹脈発生』ってー?」


『樹界脈は、普段……純粋なる聖魔力気しか……乗ってないもの』

「小等学院からも既に学んだことあるのよね、それ!」


『最後まで……聞くんだよ?そこから発生した【聖魔力気】が周囲に展開して、……そして、【人間に虐げられて殺されてきた動物の総合的な無意識の怨嗟】、もしくは……【動物同士の狩り合いによる怨嗟】がその空気中に……充満してく【聖魔力気】に混ざって、……初めて世界獣が実体を得、【世界獣】として生まれ変わる』


「それも既に中等学院に学んできたことなんだけれど、本題ー」

『でも、最近その【樹界脈】そのものに、各地で規定量としてずっと……昔から発生させ続けてる……【聖魔力気】の質と両が変わった』


「変わった…っていうの?な、なんでそうなってるのよー!?」


『本来、【世界樹ワールドツリー】の【大意識総合体】が自分自身の居る場所、……【ケスクス大海】の中心所にある島にて、……そこから各地へ向けていく【樹界脈】の数々の分脈……を規定し管理して、遥か昔から……各地へ向けて流れてる【聖魔力気】の総量……が不変のはず。それを最近、【何者】かが【世界樹ワールドツリー】の本体を護る……多量な【伝説級】を倒したか、屈服させられたお陰で……島の中心地にある本体へ入って、そして……管理用の心臓部にて、起源となった【聖魔力気】が発生される【樹界臓物ツリーオーガンワールド】を……乗っ取った!』


「ーーーーー!?の、乗っ取ったですってーー!?それは一体どういう意味なのよーー!イーズベリアーー!?」


『言葉そのものの通りだよ、オード姉ちゃん。……だから、規定量以上の聖魔力気が送り込まれると……意図的に供給の調整が変えられた特定な場所にある……【樹界脈】が変容して、それで本来、見えざるそれがやっと見えるようになって、……暴れて強力な世界獣を呼び寄せたんだ。すべて……【世界樹ワールドツリー】を制御下におく……悪者のせい』


「その『悪者』って誰なのよ――!?」


『…分からない。……イーズも目覚めたばかりで……【精霊の囁き(ネルン・フェーズ)】で情報が伝わったばかりだから知ってる……だけ。乗っ取った【悪者】の正体は……未だに掴めてないまま……』


「なんでそうなったのよー!?【世界樹ワールドツリー】に入ってるとこ見たんでしょうー?精霊が!だから、何でその悪者の顔と名前まで特定できてないのよーー!?」


『肝心の精霊達から伝わった情報……によれば、【世界樹ワールドツリー】に入っていった【悪者】の姿……真っ黒い霧に包まれていて、……容姿と外見がどういうものなのか……見えない』


「………」


益々謎が深まった、愛の大聖霊イーズベリアが告げた情報に、ただ深刻そうな複雑な思案顔を浮かべるだけのオードリーだった。


…………………………………………………


……………………


オケウエー達がルネヨー・フラックシスに潜っていた同日の【聖エレオノール精霊術学院】の放課後の生徒会室にて:



「なんだってぇー?ついさっきのルネヨー・フラックシスの第一階層にて前代未聞の闘志級の群れと【剛力級1体】の大襲撃があった同時間帯に、フェクモ方面に面したガラーン海にて、見えざる【樹界脈】がいきなり見えるようになってフェクモ方角へと複数の分脈を伸ばしてる最中だって言ってるの、父チャンーー!?」


「ええ、そうだが…ってまずはワタシを呼ぶその言い方を止めろ。ミラクリーズ将軍だろうが、普通!」


生徒会室にて、エルヴィ―ナ会長が魔道通信機マジック・コミューニケターを使って、自分の父親である王国軍の伯爵家のミラクリーズ将軍と話している最中だ。


でも、彼に対する呼び方を咎められた会長が訂正のため、こう言い直す、


「おっと、これは失礼だぁ。将軍は今、仕事場のレイクウッド王国軍の本司令部、【レクトール城】にいるんだっけぇ?」


「うむ。だから喋ってる間に気をつけるんだぞ、自分の置かれてる立場!学院ではしっかりとした振る舞いを心掛けておると聞いてるが、ワタシとの会話に対してももっと真剣に望むべきだな」


「ちぇー。分かりましたよお、ミラクリーズ将軍閣下様ぁー。それでぇ、フェクモ方角へと見えるようになってる【樹界脈】の一部の脈達があの『呪われた大地』へと伸ばされていくって確認があったけどお、それ本当なのかなぁ?だってえ、フェクモには一切の【樹界脈】が流れてないし、世界獣も魔術も存在しない大陸のはずなんだよねぇ?」


「それについても同感だが報告に差異はないぞ?明らかにあそこへ向かっていってるとの映像記録がある!だから、『あの条約』の所為で海軍の所有権がない我がレイクウッド王国は帝国海軍にフェクモ海岸へと調査に赴く任務を頼まざるを得ない状況なんだぞー!」


「でも、確かにギャラ―ルホールツ各国は【南地不干渉条約】が結ばれているはずぅ!どんなことがあっても、ここからあそこへは絶対に立ち入れないように求められるし、あそこからこちらへの移住と移民権も暗黙了解で望まざるものとされてるはずっ!ボクは誰がどの地域からの出身者であっても差別しないんだけどお、世間はそう許さないはずぅ!オケウエーがたまたまに学院長からのお許しとイリーズカ先生の後ろ盾があるから、学院に通っていられるんだけどお、普通は両方との相互接触は推奨されてないのに、なんで不干渉義務のあるあそこへとボクらの方からわざわざ破るようなー」


「これは自国だけの問題じゃない。【南地不干渉条約】に準ずる全ての国の指導者達が承諾した決定だ。よって、その異変を調べる一環として既に派遣命令が下されておる。まあ、今のところは帝国軍がその派遣部隊の大半を占めるが…」


「でも、その【南地不干渉条約】にて、確かに昔の時にフェクモにある国々の代表達へのギャラ―ルホールツの意志を伝えたことがあったよねぇ?だから、ガラーン海に面する北部地帯の国々、【オールグリン王国】、【カーシュグール部族国連合体】や【ザギラナ砂漠民国】からの船舶はギャラ―ルホールツの海岸沿いへの航行や上陸をしないよう通告が公開されてからずっとあっちからの連絡は何もしてこなくなったはずぅ!それがいきなり、こちらからあそこへの海岸沿いに上陸するとか、どんな面下げてそんなことができるんだろうかぁ、あの帝国はぁ~~!」


「まあ、【ゼールドリッチ=ヴォールフガング帝国】の連中の考えてそうなことなんざ、こっちからは到底予想できるものではないがな…それとも、樹界脈が見えるようになって、分脈の一部があっちへと伸ばされていくことに何か『関わり』を持っている帝国の暗部が絡んできそうなー」



………………………………………



…………………


熱く議論を会話に含ませて、未だに話に興じるミラクリーズ親子二人の時と同時間帯のフェクモの【シンドレム森林地帯】にて、ガランクレッド家のすぐ1800メートル先の森の開いてるところにて:



シイイイィィーーーーーーーーーーーンンン!!!!


強烈な光が発生した後、そこから出現したのが、


『ぐぐぐぐぎ………』

ドドー!ドドー!ドドー!ドドー!


巨大な体形を誇る大型の蜘蛛が出てきて、静かに『オケウエーとそのおじちゃんの実家』へと8本の脚を踏み鳴らしていく。


同時に、とある大きな木の幹の上には人影が立っている様子で、下の蜘蛛の無防備な後ろ姿を見て、舌なめずりをしている真っ白い肌をしている銀髪で赤眼の20代前半の女性が見えた。


「ゼナテス様!もうバラバラに解剖していいんでしょうかー!?」


魔道通信機マジック・コミューニケターを使って誰かと話している最中のようだ。


普段、魔道通信機マジック・コミューニケターを使うためにはただ体内に宿る聖魔力を通すだけで自動的に作動するが、ここ南大陸では魔術の使用ができないようになってるので、少し勝手が違う。


確かに、聖魔力を通信機に通すだけで『魔術』としてカウントされないので、使うこと自体は不可能ではない、たとえここがフェクモの陸内であろうとも。


しかし、フェクモに生まれた現地の人なら、長年の『微々たる聖魔力の保持量を体内に宿しながらもそれを魔術に変換して有効活用する機会が皆無』のため、たとえ現地のフェクモ人達がその通信機に頑張って聖魔力を通そうとしても慣れずに、いつまで試してみても失敗する者が殆どだろう。


だが、そこの女が簡単に使用することができる。つまりー!


「始末だけは必須なんだがやり方は問わない。だから好きにしてくれたまえ。我々の目的は【邪なる渇望】を彼の中から引き出していくだけだから、それまでに彼の大事な心の拠り所を保護する必要があるのは言わずもがな、けけけかかー!!」


「御意、我がゼナテス様!『あの方』の暴挙もいつまで見過ごすわけにはいかないけど、いずれは彼の良き試練となるだろう『あの方』をこちらから手を出すっていうのもナンセンスですね、ゼナテス様!」


「その通りだね、スレールリャよ。けけけ……」

それだけ言うと、通信が断たれ、そしてー


「さようなら、可哀想な子蜘蛛ちゃん~」

グちゃ――――――――!!


巨大な蜘蛛の姿をしている、恐らくは【剛力級】の雑兵クラスの部類に入っている世界獣1体を容易く、自身の持つ大型な鎌で粉砕して征く女だけが沈んでいく太陽と共に見えた。


ここもフェクモということであり北大陸内ではないので、現地人だけじゃなくて外からの旅人とかもここに足を踏み入れた途端、たちまち天頂神の権能の影響下にあい、魔術や精霊術一般の使用ができなくなる。


であれば、今その女性が振り落としている大型の鎌は【武器化した精霊】ではなく、ただの普通の【魔道武器マジック・アームズ】と結論付けることも用意。


魔道武器マジック・アームズ】はただ体内に宿る聖魔力を通すだけで最も攻撃力が倍増された類の武器なんだが、一般のフェクモ人はそもそも日常生活における聖魔力の使用が乏しいので、上手い具合で魔道武器を有効に使うことができないだろう。


つまり、今その鎌を自由自在に扱える女はきっと北大陸からの人間であり、ネイティブなフェクモ人ではないということ。肌色を見れば一目瞭然である。


ちなみに、フェクモでは聖魔力を何かの魔道武器や機器に通して起動させることはできるが、魔術の術式が必要な、オケウエーが最初にギャラ―ルホールツの精霊術学院に着いた日に使ったあの、自身の身体の一部に聖魔力を外側に見える形で帯びたり纏うような絶大な攻撃力を持つあれはれっきとした【物理法則無視の魔術】であり、ただ聖魔力を何物かの内側に通すだけじゃないという事(そもそも身体中に既に聖魔力が流れてるし、通すもナニもないってこと。


外側で纏うような見える形にしたから術式が発動して、本格的な魔術として分類されるのである。


今回の件で、なんで普段のフェクモには樹界脈が一切流れてない大地に、見えるようになった樹界脈の一部が大陸内に乱入し、巨大な蜘蛛の形をした『剛力級』の世界獣を呼び寄せたのか真実は定かではないが、前のオケウエーが11歳の頃に現れた狼の世界獣の一件もあったので、フェクモ人みんなにとってはきっと由々しき事態と捉えるんだろう。


だが、人気が殆どない『シンドレム森林地帯』では状況における全貌の危機感もさほど緊迫したものではないと判断しても正しい事と言える。大勢が危険に晒されてない限りではと言う意味で。


そして、最後にはただ聖魔力を魔道武器に通しただけで威力が信じられないレベルの大打撃を雑兵格とはいえどもれっきとした剛力級に与えられたスレールリャというゼナテスの部下も只者じゃない雰囲気を出していた。



…………………………………………………………………………


……………………………


_______________________________________

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ