三十話:クレアリスと合流、そして謎の通告
オードリーの視点:
「オケウエー……頑張ったわね」
深い眠りに落ちたような オケウエーの無防備な寝顔を見てると、なんかほっこりするというか、私に討伐できなくて彼に討伐できたっていうさっきのバケモノの件に関して、オケウエーに対する『精霊術使いの先輩』として初めて嫉妬みたいなものを同時に感じる複雑な気持ちを抱くようになるのよね………
「でも、助けてくれた時のあの彼の優しい見下ろしてる姿……」
あの時、巨人の世界獣の手首を切り落とした後の彼にお姫様抱っこで抱きかかえられた時、
「~~~~!?~~~」
思い出しただけで、胸が雷に打たれたようなきゅんとした感覚を覚え、顔や頭もなんかゆで蛸みたいにか~っと熱くなって、これらは15歳まで生きてきた人生の中で初めて感じるものなの。
「私……どうしちゃったのよ……。ただのバカ南黒人オケウエーの癖になんて!……なんてかっこいい姿してくれたのよーー!!もう~!」
やっぱり気に入らない。散々私の胸をああも力強く鷲づかんでた癖に、何いきなり1週間経ってきただけで私に対してヒーロ気取りしてくれてるのよー!ふーん!
考えれば考えるだけで益々自分の内に芽生えたこんなおかしくて複雑で訳の分からない感情の実体が掴めず、頭から思考を追い出そうとしてこれからどうするか切り替えようとした途端、
ターー!
「戻ったきたわ、オードリー。サリシャの索敵能力を通して、とてつもない莫大な【反人力】の波動を遠くからでも感じ取って、急いでここの階層まで昇ってきたけれど、って、オケウエー君はどうしたの?」
宙から着地してきたのは……あ!
「クレアリスーー!?あんた、今までどこで何してたのよーー!?さっき、触手に絡めとられ、あそこの穴へと引きづり込まれたじゃないー!ここまで昇ってきたということはまさか、一人だけでああいうバケモノの本体を倒せたっていう訳ーー!?」
「ふふふ……まあ、そんなところかしらね。でも、『うちら二人だけ』の力じゃないわね。『助っ人』も討伐に手伝ってくれたけれど、今のところは詳細を話せないの。『契約』に違反するからね」
「……そう。まあ、あんたがそういうのなら、詮索はしないけれど。でも、……無事なら良かったわよ!……チームメイトとしてね!別にあんたとはそこまで親しい『友達』の間柄でもないしね、ふーん!」
「ふふ、お気持ちだけ受け取らせてもらうわね。じゃ、そこにオケウエー君が倒れたってことはさっき感じた巨大な世界獣を彼が渾身の力で倒しちゃったから疲れて気絶してるって推察できたけれど、そうなのね?」
「まあ、……そんなところよ。で、でも、さっきの戦いで、別にそこまで苦戦してないつもりなのにいきなりあいつが戻ってきたから、活躍の場を奪われた気分だわ、ふーん!」
なるべく、自分の無様なところをクレアリスにだけは知られたくないからね。彼女は外国出身の貴族だから、このレイクウッド王国を代表する四大貴族の私として、これ以上他所からのスパイになり得るかもしれない彼女にだけは弱みを見せたくないだけだわ。
「ふふ、そういうなら分かる気がするのね。ん?彼の側には綺麗な真っ白い剣がー」
パチイイイィーーーーーーーーンング!!!!
「「ーーーえ!?「あら?」」
オケウエーが使っていた……確か、あいつの【愛の大聖霊】の『武器化した姿』でバスタードソードの形してる剣っていう…それが!いきなり眩しく光ってたかと思えばー
『どうも、……チームオケウエーのみんな。自分はイーズ……愛の大聖霊イーズベリアだよ』
「「ーーー!?」」
…………
う、うそ………
この儚い顔してる幼い少女が……あの【愛の大聖霊】の真体姿だっていうのー?華奢な四肢が包帯に巻かれ、お腹と太ももだけ見えてるなんて……それに、胸のところもちょっと見えそうだし、……な、なんて聖霊持ってるのよ、オケウエーの変態!
その煽情的な姿してる『聖霊』に、慌てて自分の制服のブレーザーを彼女に被せている私。
この子がなんで具現化したかって考えると、多分、『契約人間』であるオケウエーが殆どの聖魔力を使い果たしたっぽいから気絶したことに関連して、契約精霊であるこの子があいつからの聖魔力の供給が一時的に断たれて、 ウェポナイーゼッド・フォームを維持できなくなったわよね!
そして、契約した人間にしか『人間の言葉』を聞かせてくれない精霊だという常識があるんだけど、『3体の大聖霊』は普通の精霊じゃないからその常識に当てはまらないわよね!
普通の精霊を持ってる私なら、体内にベネを聖魔力の一部として宿すことができるけれど、3体の大聖霊達はそうじゃないみたいなのねー!原理も体質、本質も違うし………
それから、軽い会話を交わした私達3人は20分の休憩の後、オケウエーの身体をクレアリスと協力して運んでいきながら、一旦ジュディ達へと合流すべく、あの通路に向かっていったわ!
…………………
「うぐっ……やっぱり男の子だったわ、オケウエーはー!気絶してたら重いったらないわよー!」
「ふふ……肩で担ぐの難しいなら、お姫抱っこしてあげたらー?」
「冗談じゃないわよ、そんなのー!誰がするもんか、そんなことー!?」
確かに、契約精霊持ちの私は強靭な肉体を持つようになったけれど、それでもそれがあくまでも精霊魔術や魔術といった非物理的な技に対してもっとも耐性が強い。
それでも物理耐性なら、衝撃に対してだけ強くても腕力まではさほど上がらないので、身体能力強化を使わないと、こんなふうに男の子一人の身体を肩に全身を担いでみてもキツイわよーー!!
ん?通路まで少し着きそうだけど、あそこに壁の破片が一欠けら転がってるようだけれど、え?そこに文字みたいなのが見えるー?
よくよく目を凝らしてみると、ここからの位置からだと、私が『読んでしまった』ものはただ、こういう言葉だけ:
Nealmariere von Drenfield
The one who will bring destruction to the land of Gjallarhortz
(ニールマリエー・フォン・ドレンフィールド)
( ギャラールホルーツに破滅を齎す者)
…………………
(ーーー!!?お姉様ーー!!?…わけ分からない中傷だけれど、誰が書いたのよーー!!?)
その言葉を見て動揺を覚えてしまった私がその破片を持ち帰ろうかどうか思案してるところに、
「オードリー?いきなり止まってるようだけれど、何かあったの?」
はっ!?
クレアリスに自分の停止してるとこが変に思われたか、あそこから自身の契約精霊であるあのフクロウと何か内緒話でもしていたかずっと宙に浮遊してきたそれと視線を交わし合ったばかりなのに、私がこうも長く『破片に記されてる言葉』を凝視してたからなのか、気づかれてそう訪ねられたわね。
「………ううん、何でも…ないわよ。さあ、行こうー?」
「ふふ、先にどうぞ?」
「あ、…まあ、いいわ。指図きくのは癪だけれど、今早く景色が変わるあの通路に入って『気分転換』したいわね」
「いいのよ。うちが殿で、ふふ」
心なしか、先に歩こうとしたところに、あそこのクレアリスを横のこちらで通り過ぎる時にちょっとだけあっちへ横目を流してしまったら、彼女から何か意味深な冷笑が一瞬見えてしまった気がするのだけれど、気のせいじゃないかしらー?
まあ、それにしても……別にあの破片の言ってることを真に受けてはならないし、持ち帰る必要もないというか……取り合えず、気分を切り替えようーー!うん!
頭の中に芽生えてしまった迷いを追い出すように、ヒルドレッド達と合流すべく真っ直ぐ通路へと入っていく私だった。
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「けけけかかーー!!計画が順調に進んでいってるようで、『あの方』もきっと喜ぶだろう、けかかかーー!!そして、あの男も相変わらずの成長速度で興味深いんだね!けけけ………さて、これからも忙しくなるし…我も征くとするかー」
遥か前方にいる二人は気づかないし、知る由もないだろう。
後ろの中空に一は人浮遊してる、仮面を被る黒髪の男が自分達の歩行を観察しているところに関して。
気配を悟られないように何かしたのか、クレアリスの精霊からの『索敵機能』と彼女の側に黙々と歩いてるだけのイーズベリアからも何か異変を察知した様子もないままに、あの仮面の男はただ思うがままに彼女達をどこまでも観察していく素振りを崩さないように、尾行することを止めない様子であった。
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