表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/140

十話:歴史学の授業、そして果たし状の投擲

俺の名はオケウェー・ガランクレッド だ。


ここ、【聖エレオノール精霊術学院】 に『客人』という立場で授業を受けていられる期間はもしかしたら一か月間だけに限る。一か月後に行われる予定の【氷竜討伐任務】に向けての討伐隊の一員として参加している身なのだが、最後は討伐出来るかどうかという不安もある。


なにせ、未だに精霊と契約してない身で【精霊術使い】としての第一歩すら踏み出してないんだよね、俺。


まあ、一応、俺は他の学院生と違って、二つの異なる種類の【力の源】を体内に宿しているんだがな。


つまり、何が言いたいのかというと、他のすべての生徒の体内には一つだけの【力の源】である【聖魔力】 だけが宿っていると違って、俺の方は【死の息吹】も【聖魔力 】も二つの異なる【力の源】をも同時に体内に宿どらせられる常識外の存在なのだ。


「じゃ、席について下さい、皆の者!【歴史学】の授業を始めるぞ!」


2時限目が始まった。どうやら、今回の【歴史学】を我々一年生全員向けに教えている方はこの学院にて、唯一の男性教師だ。


名は『エドワード・レインガード』という彼は、生真面目な態度を見せながら授業を真剣にやっていくつもりみたい。


でも、さっきはジュディとの思わぬ一件があったので、隣の席に座っている彼女がどうしてるか確認してみると、


「………」

なんか俺を見ようとせず、ただ黙々と俯きながら教科書を見てるだけだ。


うぅぅ……なんか気まずいなぁ、これ! 魔神のことを聞くべきじゃなかった!


「じゃ、これは既に中等学院を卒業した皆が知っていた知識のはずだが、一応は復習の一環としてまた教えてやるぞ。まずは、最初に【世界獣】について説明する。皆も知っての通り、【神智学】は神々に直接の関係がある事柄の昔話や歴史しか教えてない授業だが、オレの担当している【歴史学】の方は神様との直接的な関連性のない事柄の歴史に関してのみ教える授業だ」


分かってる。これもおじちゃんの本で学んだ知識だ。


「【四種の生】は『魂の意識が強い存在』だけが呼称に分類されているが、それ以外の生き物に、『魂の意識が弱い存在』までもが【大光の爆発】の後の世界に生み出されている生物だということ。【聖魔力】こそ体内に宿ったりはするが、そのポテンシャルは【四種の生】ほど強くないし、自意識のような思考も乏しい。その【四種の生】以外の生物というのは二つの種類がある。一つ目は、動物だ。皆も知っての通り、動物は普通の獣のことであり、【野生動物】と【家畜動物】の2種類に分けられる。詳細は中等学院でも学んだはずのお前達なのだから、この歳になって誰もが知っている知識を掘り下げて教える必要もない。なので、二つ目に移行するぞ。二つ目は肝心の【世界獣】」


いよいよ本題に突入するようだな、エドワード先生。


「厳密にいうと、【世界獣】も【獣】の一種。だが、動物と最も大きな相違点は【世界獣】には禍々しき【反人力】が宿り、それで【普通に動物】とは桁外れで爆発的な【聖魔力】の総量があって、自在に身体強化や【反人魔術】などといった能力を持ち、脅威度が並々ならぬ存在だ。そして、これも既に中等学院で学んだはずのことだが、【世界獣】の発する【反人力】というのも、他の【四種の生】である【聖神】、【魔神】、そして【精霊】といった3種類の存在に対し、なんの効果も影響も及ばすことのできない【限定的な能力】だ」


そうだな。つまり、【世界獣】が自身達の力を使って傷つけらる存在はただ俺達【人間】だけだ。


なので、例え【世界獣】が神とか魔神とか精霊を襲っていっても、どうあがいても彼らだけ傷をつけることができないだろう。これもおじちゃんの本で読んだことあるんだ。


まったく、とんだ【人間差別】してくれたもんだ、世界獣よー!


「【世界獣】の種類も様々なものまでいる。最高級である【伝説級】の【世界獣】といったら、【大凶竜】とか【乱襲巨鷹】といった破壊力が高く、獰猛性が尋常じゃないバケモノもいるのに対し、【最弱級】である【小害鳥】とか【愛視魚】は簡単に【魔術】を学んだばかりの【魔術師】もが討伐できることだ。つまり、色んなのがあって、それぞれの力も違ってくるということ」


ちなみに、昔の【死霊魔術使い】としての力に目覚めたばかりの俺が倒したあの大型な狼の形をした【世界獣】は【最弱級】より一段と強い【闘志級】であると本で参照した。


ったく、いくら天才肌の俺だからっていきなり初心者に向けてなんて無茶してくれたもんだ、【運命】とか【あの声】とか誰かの手によって俺にあんなことを体験させたやつは!


「先生、先生! あたし質問あるんだけどいいの?」


「ええー。どうぞ聞いてくれるといい!」


ん?誰かクラスの女子生徒が手を挙げて先生に質問したいことがあるらしい、前方の席から。


「ここんところ、北方地域のアズリアに【氷竜マインハーラッド】が村や町を襲い回ってたって聞いてきたけど、あれも【伝説級】だってことよね?」


「その通りだ。今までは派遣していった討伐隊がことごとく全滅させられてきたというのも、7年前に起こったあの【最悪な一年間】の時に精鋭揃いの【近衛騎士団】と【宮廷魔術師】や【王宮親衛精霊部隊】の熟練度の高いものまでもが【あの魔神】の手にかかって亡くなられた所為だから!じゃなきゃ、いくら【伝説級の世界獣】だからってあんな氷のトカゲ程度に苦戦しているまでにオレ達の今の国力が衰えるような事はならないはず!」


ほう?そういえば、一か月後に俺が参加することになった討伐隊にとっての最凶対象だったな、あの【氷竜マイン】ちゃっての。


学院長との約束もあるし、俺が【死霊魔術】無しで倒せるような方法があるとすれば、やっぱり【四元素魔術】の訓練に頼るだけじゃ心許なく、早い内にこっちもあの金髪オードリーと生徒会長みたいに使役できる【精霊】と契約し使いこなせるようにしていかなくちゃな!


残りの時間も少ないし、きっと【精霊術学】を担当してくれるイリーズカ先生も俺のために精霊と契約できる場所を【野外授業】の一環として用意してくれるはず、きっと!


考えれば考えるほど、早くイリーズカ先生の【 精霊術学】が受けたくて受けたくて仕方がないよー!強くなっていかないといけないからね、おじちゃんのためにも!


「じゃ、これからも他の種類の【世界獣】について解説していくからよく聞くといい!」



………………



………



キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン!


それから、3時限目が終わってお昼の時間を告げるチャイムがなったのを機に、俺は横にいるジュディがどうなってるか振り向いてみると、


「もう大丈夫です。少し心も落ち着いてきたところですし、さっきのことは気にせず早く行こうー?ジェームズは今きっと一人寂しくて、食堂へ共に食べてくれそうな私達だけが頼りなんですからね」


「そうこなくちゃなー!それでこそ初対面で会った時のポジティブで元気いっぱいのジュディのあるべき姿なんだ!」


「うん!さっきは本当にごめんなさいね!そのう....時がくれば教えてもいいけど、今はまだ......」


そうかあー。まあ、無理して聞くものじゃないよね。たとえ、あんたとあの魔神に何かの出来事があろうとも、今のあんたはあんただし過去にばかり意識を囚われるべきではないはず。


と、席を経って教室の外へ移動しようとしたところの俺達ふたりに、


ゴドー―!


「「ーーー!?」」


いきなり、封筒のようなものが後ろから投げられてきた。手に取ってみると、


『果たし状』


丁寧に折りたたまれた手紙までが入ったあれを確認し終えると、案の定というべきか斜め上後ろへと振り向くと、


「今日の放課後で訓練場へ行きなさい!あたくしの本気の力であんたをもう誰にも触れないような身体にしてやるわよーー!」


俺を鬼の形相で睨んできた金髪少女ことオードリーが両手を腰に据えて、テーブルに乗った形で遠慮もなく靴の入った足で立ちながらそう宣言してきた。


きたかー!


これはどう考えても絶体絶命な展開なのだろうなぁー。


だって、未だに精霊と契約し精霊術士としての力も手に入れてない状態で、【死霊魔術】も使わずにたった慣れない【四元素魔術】と【物理法則無視魔術】だけでオードリーのずば抜けて強そうな【子熊の精霊】と渡り合えるかどうか、考えるだけでぞっとしちゃうんだよなー!


どう戦えばいいんだ、俺はーー!?


_______________________________________

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ