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十一話:精練魔剣

オケウェーに胸を触られた後、昨日の【ドレンフィールド邸宅】のオードリーの自室にて:


………………

『彼のことがそんなに許せないべー?』


「当り前じゃない!!ベネだって知ってるでしょー?あいつは【呪われた大地】からやってきた留学生で、鬼畜にもあたくしを押し倒してきたのよーー!そしてよりによってあたくしの胸まで触ってくるなんてーー!」


『でも彼は、ワザとじゃないらしいべ?何でも、【はじき返された氷弾で当たりそうなオードリー主を助けるために】とか何とか……』


「そんなはずがないわーー!あたくしがあいつに撃ってしまった弾は一つしかないはずだわー!ベネも知ってるでしょう?【武器化】した状態であたくしのために撃ってたし」


『確かにワタシちゃんもあのオケウェーって小僧に向けて一発の弾しか撃ってなかったという記憶がある。実際に武器化した状態のワタシちゃんをオードリー主がちゃんワタシの引き金を指先で引いた回数も把握していたしなあ~」


豪華で大きくてフカフカなベッドには金髪碧眼の少女、オードリーとその使役している精霊、子熊ベネフォーロッスが横たわっている。


子熊の身体を親しそうに抱きしめているオードリーは、自分の部屋の数々の装飾品を見つめながら、ベネフォーロッスに訪ねる、


「だから、きっとあいつの言った言葉は嘘よー!高貴なるあたくしの大事な胸をその汚い手で触りたいがためについた大嘘」


『それはそうとして、果たしてオードリー主の怒りを買うまでにやらなければならないことだったのかな?結果とその後の結末を天秤にかけても割り合わないことしてたと思うべ?あの少年のしたことは』


「知るか―!あたくしが決めたことは自分自身に対する尊厳、名誉や貴族令嬢としての誇りを保つために、不躾な行為を自分のこの高潔な身体に働いたことを償ってもらいたいだけよー!もう!もう【あの時のお姉様】みたいに甘い子になりたくないから!」


そう。いくらお父様である...ドレンフィールド公爵の末っ子だからって、あたくしにもお姉様にも楽な人生を送ってこなかったことを今でも覚えているわ。


貴族の家に生まれ育ち、上品さと責任を重んじる生活を心掛けるようにとしつこく注意してきたお父様なんだけれど、それだけに留まらず、物心つく頃からあたくしはず~っと幼い頃から厳格なお父様によって監視され、優れた貴族の令嬢としての礼儀作法や知識を学ばされてきた。


【精霊術使い】としての職業もドレンフィールド公爵家に生まれたすべての女性がならなければならないお家の決まりでもあるわね。


だから、7歳から厳しい基礎的な【四元素魔術】の訓練をさせられただけじゃなくて、一年後の8歳になって初めての精霊、このあたくしだけのためのベネって氷熊の精霊との契約をまだ小さな身体を持っていたあたくしを強要したお父様。


厳しい人生だったけれど、それと同時に毎日の暮らしも不自由なく快適に過ごせてきたし、訓練の数々を見事な結果でクリアーしてみせたのを見届けてくれたお父様から沢山のお祝いのプレゼントも受けてきたの。


だから、きついことばかりさせられたけれど、案外と毎日が輝かしく思い、貴族としての責務と誇りも十分に理解してるつもりだわ。


むしろ、楽で怠惰な生活を送っている一部の平民より、色々なのを背負わなければならない貴族の出であるあたくし達こそが責任重大にして大衆を導く義務があるってことから、自分こそ【選ばれた人間】であるとし、ずっと平民を見下してきたわね。


だから、いつでもどこでも、あたくし達貴族たる者こそが正義でありと信じて、肝心な場面でもきっと逆境を覆し、あたくし達貴族の者にとって有利な結末をいつも導ていけると『迷信していました』のよね。


だからか、そんな生温いことを言っていられたのも、あの【最悪な一年間】まで………………



…………………………



「お姉さま?」


「オードリーは強い子よー?あたしがいなくなっても、自分で自分自身の本当の価値を見出せるわ」


「そ、そんな……お、お姉さまーーーーーーー!!!!」


バコオオオォォォ-――――――!!!!


そう、あの【最悪な一年間】の中で最も『最悪な夜』にて、8歳のあたくしは自分のお姉さまが魔神アフォロメロに攫われそうなのをあの【王宮のボールルーム】にてガブリエル王子殿下様のお誕生日会に参加していたあたくし達がそれを止めようとして、無謀にも魔神に歯向かってしまったことから起こった悲劇ーー!


………………


あの大事件が起こってから、魔神を道連れにしながらも会場にいるあたくし達すべてからその爆発の影響をなくすようにお姉さまの右腕とも言える古の大精霊【サール・レッティシアー】の張ってくれた【大聖障壁グレート・ホーリー・バリアー】をあの二人の中心に展開し【自爆した】のを、7歳のあたくしが見てしまったの!


いくら我々人間にとっての超越した存在である【魔神】だからって、同じ【四種の生】でも【聖魔力保持量】においてずば抜けて高いとされている大精霊【サール・レッティシアー】が張ってくれたあの絶対的防壁用の【大聖障壁グレート・ホーリー・バリアー】に封じられたままの狭い空間でお姉様の発動した【伝説級の精霊術】、【聖白月爆銀滅(ホーリー・ホワイトムーン・シルバーエックスプロージョン)】を喰らって無傷とはいかないはずだわ!


その後、魔神はどこにもいなくなり(おそらく爆発の影響で傷つき、撤退するかどこかに隠れてやりすごしていたのどちらかに)、攫われずに澄むけれど、その後のお姉さまの悲惨な状態をずっと見ることになるのを『最初に目にすると』、


「ううぅ…ぐーっ痛うーーー!うぅぅああ……うぐっ…本当に痛いようぉ……そ…れぇに、こ…ここぉはどこー?あっ、あたしはっ..なに...ものーぐっ~!嫌あぁーーーー!!」


……………目の前で、まるで記憶喪失にでもなったように周囲をきょろきょろと珍し目で見回しながら、痛みを訴えるお姉さまがやっと自分の下半身を見てしまうのをあたくしも視線を辿って見ていると、


「お、お姉さま嗚呼ああああああーーーーーーーー!!!!!」


お姉さまの股間のすぐ下の両脚から下のすべての部分が綺麗さっぱり爆発でなくなって夥しい量の血で苦しんでいるのを見ることになったあたくし達は、あの瞬間から誓ったんだー!


「ぜ、絶対に、貴族たるあたくし達【ドレンフィールド家】にあんな『屈辱的な仕打ち』を仕出かそうとする連中すべてを、これから一人たりとも逃がしたりはしないと誓うわー!」


それから、もっと厳しい訓練方法を自分自身で自分に課しながら、お父様をも心配させるようなスパルタンな毎日を続けてきたの。


「あら、オードリー?今日もまたお訪ねに?悪いわね、記憶を失ったことって。『この身体』になってしまった事もだけど、その所為で色々世話にならなきゃいけないし、家族同士...なのに根幹たる知識もまったく知らないあたしが迷わー」


「迷惑だなんて言わないで下さい―!お姉様あーーー!」


そう、あんな大怪我をして精霊を使役する力を無くしただけじゃなくて、障害者となったニールマリエーお姉様は車椅子の生活を始めることになるだけじゃなくて、【事件の前の記憶すべてを失っている】こともあるので、いつもそれであたくし達に対して負い目を感じるようになっただろうお姉様。


そのひ弱な姿が昔のような凛々しい精霊術使いのものじゃなくなって情けない身体と性格になってしまったことを、あたくしがずっと許せなかった。


あの魔神も!べネと契約したばかりでロクな【精霊術】ひとつも使えなかった当時8歳の無力な自分自身に対しても!


なので、絶対に目に物を見せてやるわ、【南黒人少年】よーー!


もうあたくしは7年前のあたくしじゃないし、弱い者になってしまった【元お姉様】でもないはずよーー!


だから、お姉様が感じた痛みをあんたにも味わわせてやるわよーー!


だって、変態的にもあたくしの胸を触りにきたっていうのも、あの『最悪の夜』にてお姉様を攫おうとしたあの【魔神】とそっくりな外道っぷりじゃないーー!


「行こう、ベネ。明日のあいつをめちゃくちゃにするために今は訓練場へ最後の準備を済ませに行こう」


『分かったべー、我がオードリー主よ』



…………………………………………………



…………………



「はああぁぁぁ…………」


「やっぱり元気ないですかぁ...【精霊術学】の授業も今日はイリーズカ先生に急用ができてしまったから明日に先送りになりましたし………」


「あんな凄そうな精霊を使役してる彼の有名な【ドレンドリー領】の領主たる【ドレンフィールド公爵】の長女に続いての才女になったばかりの末っ子たるオードリーさんっすからねー。【契約精霊】無しでどう戦おうかっつのー!」


不安顔になり、どう戦っていいのやらって思案してる食堂の席についた俺を心配してるジュディとジェームズは本当に優しくてありがたいと思うのだが、問題解決に貢献できるかどうか怪しいんだよなぁーーはあぁぁぁ…………


「「「…………………」」」


タタタ……

言葉も発さないまま沈黙になってしまった俺達、一縷の望みが差してきた!


「お昼、一緒に食べてもいい?」


「...あんたは...あっ!クレアリスだ!」


俺のテーブルに近づいてきたのは、昨日出会ったばかりの、あの妄想癖っぽい青色のロングヘアな髪をしている子だ。前髪が斜め流しになっていて、目に届きそうな方の髪の毛をかき上げる彼女はこう言ってきた、


「ふふふ...どう?うちが一緒してもいいの?いいわよね?お友達が他にいても」


「えっと、ジュディ...それとジェームズ...彼女のことはー」


「初めまして、オケウェーの友達。うちはクレアリスよ。クレアリス・フォン・シュナイダーっていう子よ。一応、貴族家の者だけれど肩ひじ張らずにするといいわ」


「あ、はい、どうもっす。ぼ、僕は...えっと、ジェームズ・リッチモンドって言います。宜しくお願いします」


クレアリスが気さくに柔らかい表情を浮かべても【貴族】という言葉が聞こえた途端、すぐにぎこちない反応になってるジェームズ。


「私はジュディ・トームプソンです!宜しくね、クレアリスさん~!」


こちらのジュディはもっとリラックスしてクレアリスと仲良くなっていきそうな感じなのでほっとする。まあ、ジュディなら誰とでも仲良くなっていけそうな感じもしたけどねー!


……………


「……そう、なる程ね。つまり、オケウェーにはあのオードリーと戦えるような【何】か、が欲しいってことよね?」


「うん!だが、契約精霊無であんなデタラメすぎる氷の子熊なんてーー」

このまま、氷の竜と戦う前に氷の子熊に殺されるわー!


「それなら心配はいらないかもしれないのよ?学院の【生徒同士の決闘】に関わる【学則12条】によれば契約精霊のない者に対して契約精霊持ちの者は決闘にて、【真体姿トゥールー・フォーム】の精霊を召喚してはならないっていう学法があるよ」


「ほ~え?………それってー」


「そうよ。オケウェーの思った通りのことね。だから、彼女の精霊の 真体姿っていう子熊のことと戦わなくてもいいわ。そっちが戦うことになるのは、【武器化した姿の精霊】を使っているオードリーたった一人とだけよ?」


「そう……かあー」


【武器化した精霊】。確かにそんなことも【精霊術使い】ならできるってなにかの本で読んだ記憶がありそうっていう漠然とした感じがある………。


つまり、昨日のあの【氷の弾を撃つ拳銃】がそれかーー!?

………で、でも!


「だが、それなら彼女が武器持ちで、俺の方は未だに武器無しのままってことになるじゃないか!昨日ちょっととだけオードリーとのいざこざがあって彼女からの弾の飛来してくる速度がどういうものか垣間見えることが出来たが、あくまでもそれが『本気じゃない時のオードリー』だったんだと思う。使えるようになったばかりの【四元素魔術】だけでどこまで行けるかって不安も……」


「そういうと思ったのよ。だからうちの出番ね~?」


「えー?」


「なになに~?」


「わーーああぁー。ま、眩しいっす!も、もしかして、それってー?」


ピカ―――――!


「ふふ……。どう?これはうちの家系が代々と使ってきた【轟炎雷刃(ロアーリングフレームズ・オブ・ライトニングブレイド)】っていう剣よ。【精霊魔術】と【四元素魔術】が融合された【付与魔術】の一時的効果を永久に持続させられるような【シュナイダー家】が取って置きの秘伝で作った【精練魔剣】よ」


どうやら、クレアリスが【異空間収納】から取り出したのは一本の剣のようで、鞘から一部分だけ抜き放ったクレアリスが見せてきたその剣の刃ってところの外観には赤と白の混じった色が彩られていて、剣身の印象を攻撃的に見せながらもどこかスタイリッシュな一面も兼ね備えているようだ。


「オケウェーだから特別に貸してやってもいいけれど、どうするのかしら?」


絶望的な状況から一転して光明が見えてきたとは、こういう時の事をいう物なのだねーー!


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