ある日の二人のやり取り
「最近夜になるのが早いのよー」
「そうだねぇ」
「夜の神様の勢いが強くなる時期なんねぇ」
「そうだね……えっ?」
「夜寝ないトナカイ的には、もっと昼の神様に頑張ってもらいたいところなのよー」
「トナカイ、一体何の話をしてるの?」
「えっ?」
「……えっ?」
「そんじゃも一回、最初から話すのよ!」
「よろしく」
「最近、夜が来るのはやいのよー」
「うん」
「そのせいでお昼の時間が短いのよー」
「そうだね」
「つまり、昼の神様が夜の神様に負け気味ってことなのよー」
「うん? そこがよくわからないよトナカイ。昼とか夜って、神様が関係してたの?」
「うむ、きっと昼の神様的なのんと夜の神様的なのんが毎日争ってるから、昼とか夜が変わっていくのよー」
「私の知ってる内容とかけ離れてるね」
「夜の神様は寒いのが好きなのよ。だからこの時期になってくると強くなるのよー」
「ふむふむ」
「んで、昼の神様はあったかいのが好きだから、今ぷるぷる震えて本来の力を十分に発揮できないのよ!」
「なるほどー。それじゃ、周囲を暖めたら昼が長くなるの?」
「うむ、きっとそうなのよ!」
「それじゃ、試しに暖めてみようよ」
「うむ!」
「というわけで用意したのよ!」
「大きな櫓だね」
「これに火をつけて燃やすのよ!」
「これを燃やすんだ……せっかくいい感じに組み上がってるのに、何だかもったいないような気がする」
「そうなん? そんじゃリリーのために、後でもいっこ作ってあげるのよ!」
「わー……いや、あんまり嬉しくないかな」
「とにかく、点火なのよ!」
「……よく燃えてるね」
「トナカイ特製の燃えやすい素材で組んだのよ!」
「とっても暖かいね、トナカイ」
「うむ。眺めてるだけってのも飽きるから、何かするのよー」
「それじゃ、昼の神様を応援するダンスでも踊ってみたら?」
「それはいい考えなのよ。早速お願いするのよ!」
「えっ!? 私が踊るの?」
「トナカイ、ダンスとかよく分かんないのよ。だから、リリーに踊ってもらわないといけないのよーん」
「えぇ……わかったけど、私もダンスが得意なわけじゃないから、期待しないでね?」
「頑張って踊ったら、思いがきっと伝わるのよ!」
「……くるっとまわって、はいっ!」
「かわいいダンスだったのよ!」
「えへへ。そ、そうかなぁ」
「うむ、これは永久保存するのよー」
「永久保存だなんて……えっ、どういうこと?」
「こんなこともあろうかと、トナカイ特製の映像記録魔道具をセットしておいたのよー。三方向からばっちり撮影したのよ!」
「えぇぇ……そんなの撮って、どうするつもりなの?」
「トナカイのリリーコレクションに加えるのよー」
「リリーコレクション? 何それ」
「名前の通りリリーのコレクションなのよ! リリー関連のグッズが色々あるのよー」
「そんなの集めてたんだ……どんなのがあるの?」
「んー例えばー、これとかー」
「これは……鱗?」
「うむ、リリーの攻撃をも耐える、すごいリリゴン鱗なのよ。あとはー、これもなのよー」
「こ、これは……いつぞやの私の買い食いを描いた写実画!」
「ほかにも色々あるのよ!」
「ちょっと恥ずかしい」
「でも、やっぱり一番は本物のリリーなのよ!」
「!? と、トナカイそういうことをしれっと言うのはどうかと思う。恥ずかしくてなんだか顔が熱い……」
「むふー、リリーは恥ずかしがり屋さんなのよー」
「もうっ……顔だけじゃなくて全体的に熱くなってきちゃったじゃん!」
「それ、多分あれのせいなのよ」
「えっ?」
『燃え盛る櫓』
「「……」」
「ねぇトナカイ「いやー、燃えやすさと頑丈さが共存したすばらしい櫓なのよー」……それって、まさかずっと燃え続けるってことなの?」
「そういうことになるのよ!」
「さすがにそれはまずいと思うよトナカイ!」
「トナカイ的にもそんな気がしてたところなのよー」
「水の魔法をものともしない、すごい炎なのよ!」
「言ってる場合じゃないよトナカイ! これ水魔法じゃ消せそうにないよ!」
「こうなったら仕方がないのよー。櫓ごと消し飛ばすのよ!」
「なるほど。火元から断つんだね」
「リリーがブレスで櫓を消し飛ばすのよ! トナカイは向かい側で飛んできたブレスをそらす係をするのよー」
「わかった! それじゃいくよー」
「いつでもいいのよー」
「ギャウッ! スウッ……ーーッ!」
「トナカイ必殺、リリゴンブレス逸らしなのよっ!」
「「……」」
「トナカイ、この櫓頑丈すぎない?」
「トナカイが創ったものは基本的に頑丈なのよー」
「ダメじゃん! その頑丈さが裏目に出てるよトナカイ!」
「仕方ないのよー。そんじゃ、トナカイが壊すのよー」
「どうやって壊すの?」
「トナカイ特製の特大ハンマーなのよっ! よいっしょー」
「トナカイ、それじゃリーチが短すぎて「あっちゃーっ!?」……熱いと思うよ? 遅かったけど」
「もう少しでトナカイの丸焼きになるところだったのよー」
「トナカイ、しっぽがまだ燃えてるよ?」
「なんとっ!?」
「いやー、もう少しで「それはさっき聞いたよ」……逆転の発想を思いついたのよ!」
「どうするの?」
「むしろこのまま燃え盛る櫓を有効活用する形にするのよー」
「なるほど」
「しばらく夜空の星を数えながら待つのよー」
「わかった」
「すやぁ」
「リリーできたの……寝てるのよー。よく考えたらもう遅い時間だったのよ」
「すやすや……」
「よく寝てるのよー。トナカイの作品お披露目はまた後日にするのよー。よいしょっ」
「んふふ……モフモフ」
「寝ててもしっかりトナカイをモフモフするとは、さすがリリーなのよ。ささ、宿に戻るのよー」
ある地方の平地に突如現れた施設は、掛け流しの温泉と温水プールであった。
施設の中央には、透明な壁で囲まれた燃え盛る櫓が設置され、夜も非常に暖かく、明るかった。
近隣の住民はこの施設を大層喜び、仲良く利用したそうな。
「トナカイー、今日のご飯は何ー?」
「今日はねー、リリーの好きなゆで卵なのよー」
「やったー!」
「ゆでる……お湯……んー、何か忘れてるような「たくさん作ってねトナカイ!」まっかせるのよー!」
施設を建てた張本人は、宿でリリーと布団に入ってる間に、すっかり施設のことを忘れてしまっていたそうな。
トナカイは時々適当な事を言うそうな。




