何気ない一日
「「……」」
「今日もいい天気なのよぉ……」
「今日は曇ってるよトナカイぃ……」
「トナカイ的にはいい天気なのよぉ……」
「そうなんだねぇ……」
「「……」」
「ちなみに、トナカイにとって良くない天気って、どんなのぉ……?」
「んー、トナカイ的にダメな天気はねぇ……想像、スタートなのよっ!」
「急にテンションが上がった!?」
「んー、今日はあんまりいい天気じゃないのよぉ。残念ねぇ」
「そこで寝転がってないで手伝ってよトナカイ! 冒険者ギルドから、『降ってくる隕石群から町を守る』依頼を受けてるんだから、ぼーっとしてたら依頼達成できないよ!」
「むふー、リリーは心配性なのよぉ。一個くらい当たってもきっと大丈夫なのよ?」
「なーんだ、そっか……な訳ないでしょ! 一個でも大惨事だよトナカイ!」
「そうなんねぇ。トナカイうっかりしてたのよー。そんじゃ、お仕事するのよー」
「想像、おわりーなのよ!」
「うん、色々おかしいよトナカイ」
「やっぱり、トナカイがお仕事中にぼーっとしてる設定は無理があったんねぇ」
「いや、それは割と良くあるよ。そうじゃなくて、隕石群とか普通降ってこないよ! あと何で降ってくることがあらかじめ分かったのかすごく気になるよ!」
「リリー?」
「なに?」
「魔法って……便利なのよ?」
「えっ、うん。便利だよね」
「つまり、そういうことなのよー」
「よく分からないよトナカイ!」
「むふー、想像上の出来事だから、現実にないことが起こってもいいのよー」
「まぁ、そうだね」
「ささ、草原で寝っ転がる作業に戻るのよー」
「つい興奮して立ち上がっちゃったね」
「「……」」
「今日ものんびり過ごしてるのよー」
「そうだねぇ」
「こうやってぼーっと寝っ転がるのも、たまにはいいのよー」
「そうだねぇ」
「ずーっとこのまま寝っ転がってたら、地面と同化しちゃいそうなのよー」
「そうだねぇ」
「むしろちょっと同化しそうになってるのよー」
「そうだねぇ」
「「……」」
「「!?」」
「と、トナカイ……なんかこの地面、おかしいよ!」
「危なかったのよ! もうちょっとで森の精霊から地面の一部の精霊になるところだったのよ!」
「いや、さすがにそれはないと思うけど……!?」
「よく見たらこの草原、でーっかいスライムなのよ!」
「スライム!? だ、大丈夫……スライムはもう克服した、はず」
「スライムと同化したら、森の精霊からスライムの一部の精霊にジョブチェンジしちゃうかもしれないのよ!」
「ないと思うけど、ちょっと嫌だね」
「うむ。このスライム、自分の上でのんびりしてる動物とかを捕まえて食べてたんねぇ。働かなくても食べていけるという、聞く人が聞いたら羨ましがるやつなのよ!」
「なんという怠惰!」
「このままほっといたら危ないから、駆除しておくのよー」
「わかった……ギャウッ! スウッ、ーー!」
「あっ、リリーがリリゴンになって、ブレスを撃ったのよ! ってリリー角度があかん感じなのよぉぉ!?」
「……あっ」
「トナカイ必殺、ブレス逸らしなのよっ!」
「おぉ……トナカイがブレスに追いついて上に逸らした!」
「危なかったのよ……もう少しでたまたま直線上にあった町が消し飛ぶところだったのよ!」
「つい何も考えずに全力で撃っちゃった……てへっ」
「可愛く言ってもあかんのよ! 反省のポーズ一時間なのよー!」
ある小さな町で噂になっていた、近くの草原で起こる神隠しは、ある日突然なくなった。
少し前に目撃された、少女が変なポーズで行った祈りが神隠しをなくしたと勘違いした町の人々は、毎朝変なポーズを真似て平和を祈ったそうな。




