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リリーと花火

「トナカイー!」

「出したんリリー? すんごいテンション高いのよー?」

「今日港町で花火大会があるんだって!」

「そうなんねぇ。リリーは花火見たいん?」

「うんっ!」

「そんじゃ、早速見に行くのよー」

「わーい!」



「お店がたくさん出てるのよー」

「もぐもぐ……トナカイの料理には遠く及ばないけど、なぜか食べてしまう」

「雰囲気って、大事なのよー」

「ということは……ここでトナカイの料理を食べたら最強なのでは……!」

「むふー、リリーが食べたいなら、作ってあげるのよー。何が食べたいのん?」

「もちろん……お肉!」

「まっかせるのよーん!」



「いらっしゃいませぇぇ! トナカイ串焼き五本追加ぁぁ!」

「まっかせるのよぉぉ!」

「トナカイが凝って屋台まで作るから……客が! しかもトナカイの料理が美味しいから大人気!」

「むっひょー!? 列の終わりが見えないのよぉぉ……」

「あぁっ!? 花火の音が!」

「これ放って行くのはさすがに難しいのよぉぉ!」

「もぉぉトナカイのばかぁぁ!」



「……ぐすん」

「り、リリー? すまなかったのよぉ……」

「花火が終わっても、客の列が途切れなかった……」

「うむ、大盛況だったのよー」

「花火、全然見れなかった……」

「リリー……すまなかったのよぉ。お詫びに何でもするから機嫌なおして欲しいのよぉ」

「……花火」

「ふむ?」

「花火いっぱい見たい……」

「分かったのよ! トナカイ、リリーのためにすんごく頑張るのよ!」

「……うん」

「それじゃ準備してくるのよ! しばらく待っててほしいのよー!」

「うん」



「リリーがものすごくしょんぼりしてたのよ……よっぽど、花火を見たかったのねぇ」

「しょんぼリリーのために、すんごい花火を用意するのよ! 今回は自重なしの全力で取り組むのよ!」



「というわけで、手伝ってほしいのよー」

「貴方に頼られて悪い気はしないのだけど……リリーのためっていうのが何だか複雑ね。まぁ、リリーの気持ちも分からないわけじゃないから、手を貸してあげるわ」

「助かるのよ! このお礼は、後日必ずするのよ!」

「!? そ、それじゃぁ……今度私と一日付き合ってもらおうかしら」

「分かったのよ!」

「その言葉、忘れないでね? さて、相談の件に戻るけれど、そもそも花火の作り方なんて知らないから、代わりに魔法で演出してみたらどうかしら?」

「ふむふむ、それは名案なのよ!」

「幸い私たちは精霊、魔法は得意分野よ! どんな感じの演出にするのか考えましょう」

「なんかこう、すんごい感じのんがいいのよ!」

「漠然とし過ぎて分からないわ! こう、とても大きいとか、爆ぜ方が綺麗とか、形が奇抜とか……そんな感じかしら?」

「うむ、大きくて綺麗で、いろんな形がいいのよ!」

「後は……やっぱりたくさん打ち上がった方が、見栄えが良いと思うわ」

「アクアに相談してよかったのよ! 頼りになるのよー!」

「そ、そうかしら? うふふふ……もっと頼っても、いいのよ?」

「また何かあったら相談するのよ!」

「任せなさい! あ、もちろん対価は貰うわよ?」

「うむ!」

「言質はとったわ……これを機に距離を縮めて……」

「小さい声で何かぶつぶつ言いだしたのよ……どしたーん?」

「な、何でもないわ! さぁ、魔法の調整をするわよ!」

「うむ!」



「ささ、リリーはここで待ってるのよ!」

「うん、わかった」

「トナカイ特製の串焼きとかいっぱい用意したのよ! これ食べながら見るといいのよ!」

「うん」

「そんじゃ、行ってくるのよ!」

「えっ……トナカイ、一緒に見てくれないの?」

「トナカイが打ち上げないと、見れないのよ?」

「そっか……トナカイと二人で、見たかったな……」

「ちょーっと、待ってるのよぉぉ」

「うん」



「というわけで、頑張って打ち上げてほしいのよ!」

「はいはい、そんな事だろうと思ってたわよ。ほら、早く行ってきなさいよ」

「ありがとなのよー! あ、魔力が切れるなんてことは無いと思うんけど、一応トナカイの魔力をちょこっと渡しておくのよ!」

「えっ? いや別に「トナカイの魔力をアクアによいしょーっ!」ひゃぁぅっ!?」

「そんじゃよろしく頼むのよー!」

「はぁ……はぁ……悪気が無い分タチが悪いわ……」



「待たせたのよリリー! 二人で一緒に見るのよ!」

「うん!」

「「……」」

「「おぉーっ!」」

「すごいよトナカイ! とっても綺麗だよ!」

「むふー、気に入ったみたいで良かったのよ! 色々準備したトナカイも、思った以上の出来に驚いてるのよ!」

「何より、トナカイと一緒に見れたのが嬉しい」

「むふー、リリーが嬉しいとトナカイも嬉しいのよ!」

「トナカイ、ありがとう!」

「どういたしましてなのよ!」



「……二人は喜んでいるかしら? たまには他人のために尽力するのも、良いものね」



 夏の夜空を飾る魔法の花火は、非常に綺麗だったそうな。

 

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