トナカイと水の精霊
「あれ、トナカイどこに行くの?」
「ちょっとアクアのところに行ってくるのよー。この前色々手伝ってもらったからお礼をしに行くのよーん」
「そうなんだ……ついてこ」
「彼はいつ来るのかしら。ダメ元で言ってみた一日お付き合いが、まさかすんなり受け入れられるとは思ってなかったのだけど……言ってみるものね!」
「……! 彼の魔力! ……と、リリーの魔力も感じるわね」
「きたのよアクア!」
「ついてきた」
「いらっしゃい。で、どうして二人で?」
「花火、綺麗だった。ありがとう」
「リリーが素直にお礼を!? ……楽しんでもらえたみたいね。頑張ったかいがあったわ」
「お礼に今日は、特別にトナカイを貸してあげる……けど、変なことしたらダメだからね?」
「何よ変なことって……しないわよ!」
「それじゃ私はしばらく出掛けてくるね」
「リリーは一緒に遊ばないんねぇ」
「うん」
「リリーがこんなにアッサリと彼を譲るなんて……今日は魔王でも降って来るのかしら」
「リリーは花火、すんごく喜んでたのよー」
「それは良かったわ」
「そんで、今日は何するのーん?」
「二人でお買い物したり、食事とかかしら? 人間がする、デートっていうものをしてみたいわ!」
「ふむー、分かったのよ! そんじゃ早速、お買い物に行くのよ!」
「……ね、ねぇトナカイ? さっきはああ言ったものの、何をしたらいいのかわからないのだけど……」
「ふむー? そんならトナカイがオススメの場所に案内してあげるのよー」
「よ、よろしくお願いするわ!」
「まっかせるのよーん」
「まずはー、やっぱり食べ物なのよ!」
「美味しそうね!」
「ここのごはんは新鮮な素材を使ってるのよー」
「そうなのね。基本的に湖に住んでいるのだけど、魚を捌いて食べようとはあまり思わなかったわね。今度料理してみようかしら」
「むふー、いいと思うのよ!」
「次はお菓子なのよー!」
「あら、見たことのないお菓子ね。透き通ってプルプルしているわ。スライムかしら……」
「さすがにスライムはあんまり食べないのよ?」
「あまりってことは……少しは食べるのね」
「ちなみにこれは、ゼリーっていうのよ! お口の中で溶ける、甘くておいしいお菓子なのよ!」
「そうなのね。これは美味しいわ! いくらでも食べられそうね」
「あんまり食べ過ぎたら気持ち悪くなるから気をつけるのよ!」
「そ、そうなのね。気をつけるわ」
「お次はー! お昼ごはんなのよ!」
「ちょっと、食べ物ばかりじゃないの!」
「アクア? お菓子とごはんは、別物なのよ?」
「それはそうだけど……まぁいいわ。なかなかボリュームがあるわね」
「うむ、いっぱいあるのにどれもおいしいのよ!」
「そうなのね。でも、さっきお菓子を食べたばかりだから、あまりお腹空いてないわ」
「そうなんねぇ。そんじゃ、余った分は後で食べられるようにしまっておくのよー」
「……貴方のチャック、便利ね」
「むふー、いくらでも入るしおいしさをそのまま残せるのよ!」
「次はここなのよ!」
「もう食べ物はいらないわよ?」
「ここはアクセサリとか売ってるところなのよ!」
「そうなのね。可愛らしいものがたくさん置いてあるわね」
「好きなものを一つ選ぶのよ!」
「えっ……いいのかしら?」
「うむ、トナカイ、お金ならちゃんと持ってきたのよ!」
「いや、そういうことじゃないのだけど……トナカイからのプレゼント……なのよね?」
「そうなのよー!」
「それじゃあ、この指輪とか……」
「じーーっ」
「リリー!? どうしてこんな所にいるの!」
「暇つぶしに、この街で適当に過ごしてた」
「そ、そうなのね。まさか今までずっとつけていたのでは……」
「さすがにそんなことはしてない。本当に偶然、出会っただけ」
「リリーも一緒に遊ぶのん?」
「ううん、今日はアクアにトナカイを貸してあげるって言ったから……約束は守るよ」
「そうなんねぇ。もう少し遊んだら帰るのよ!」
「分かった。ところで……その指輪」
「へ? あ、いやこれはその……」
「ドラゴンの勘的に、宝石部分が偽物だと思うよ。だけど多分後でトナカイが色々するから、あんまり関係ないね」
「そ、そうなのね。わざわざ忠告ありがとう」
「……それじゃ」
「リリー、どこかに行っちゃったのよ」
「そうね。それじゃ、これを買ってもらっちゃおうかしら」
「うむ!」
「トナカイ? その指輪をどうするのかしら?」
「少しだけ待つのよ!」
「? 分かったわ」
「トナカイの改造、略してトナ造、はーじまーるのよー!」
「さっきリリーが言っていた色々するって、このことだったのね」
「とりあえず頑丈にしてー、くっついてる石に色々してー、こうしてああしてー、ほいっ!」
「……あら? 見た目は特に変わっていないのね」
「よく見るのよ! 石の中にアクアっぽいデザインの模様が見えるようになってるのよ!」
「まぁ……素敵だわ」
「気に入ってもらえたみたいで良かったのよ!」
「ありがとう……この指輪、大事にするわ!」
「どこかに行っても、ちゃんと戻ってくるようにしておいたのよ! あと予備の魔力タンクとしても使えるのよー!」
「と、とても多機能な指輪なのね。驚いたわ」
「むふー、トナ造品に普通なんてあんまりないのよ!」
「ふふっ、そうなのね……そろそろ時間ね。今日は楽しかったわ!」
「喜んでもらえて良かったのよ!」
「もし良かったら、またデートして欲しいな、なんて……」
「じーー……」
「!? い、いつの間に!」
「さっき来た所」
「そ、そうなの「具体的にはトナカイが指輪を改造するあたりから」結構前からじゃないの!」
「残念ながら時間だから、トナカイは返してもらう」
「分かっているわよ……楽しかったわ」
「次は三人で遊びに行けばいいと思う」
「……! 私はいつでも空いているから、また呼んでちょうだい!」
「わかった。引きこもりのアクアを社会復帰させるために呼んであげる」
「引きこもりじゃないわよ!?」
「むふー、二人とも仲がいいのよー。またみんなで、遊ぶのよー!」
しばらくアクアは、湖のほとりで指輪を眺めては、ニヤニヤしていたそうな。




