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トナカイ危機一髪

 冒険者となって世界を旅するドラゴン娘リリーと、森の精霊トナカイ。


 面白いものや新たな発見を求めて、今日も旅を続けるのであった。



「トナカイのことは気にせず一思いにやるのよーっ!」

「そ、そんなぁ……トナカイを失うような真似、私にはできないっ!」

「リリー、落ち着いて、聞くのよ……万が一のことがあっても、トナカイは、大丈夫なのよ……」

「トナカイィィ!」



「……えいっ!」

「……セーフなのよ! あと三本でクリアなのよ!」

「なんでこんなもの作ったの……?」

「なんかねー、この前立ち寄った町で見たおもちゃが、面白そうだったのよー!」

「うん、確かにドキドキして面白いとは思うよ?」

「でしょー! あれを完全に再現したのよ! トナカイ頑張ったのよ!」

「でもね、何で変な機能を追加したの……」

「せっかくなら、もっと緊張感とか持たせた方がいいかなって思ったのよー」

「確かに、すごい緊張感だよ? なんせ……アウトだったら、トナカイがどこか遠くに飛ばされちゃうんでしょ!?」

「うむ! しかもゲームが終わるまで、ここに入った者は出られないという機能までついてるのよ!」

「無駄に頑丈で、私が全力で振るった爪ですら傷一つ付かないし……えいっ!」

「おぉー! それもセーフみたいなのよ! さすがリリーなのよ!」

「よしっ、あと二本ね! そもそもこれの元になってるおもちゃって、何人かで樽みたいなものに剣を刺すんでしょ? トナカイがそこに収まったら、私しか刺す人居ないじゃない! えいっ!」

「それもセーフなのよ! いやー、トナカイもうっかりしてたのよー」

「もうっ! トナカイはうっかりさんなんだから!」

「無事にここから抜け出せたら、お詫びにリリーを一杯もふもふしてあげるのよー」

「!? と、トナカイ? なんだか嫌な予感がするんだけど……」

「大丈夫よ! 今日のリリーは絶好調なのよ! 失敗する気がしないのよ!」

「えぇ……さっきより嫌な予感が強くなったんだけど」

「リリー、どしたーん? あ、そういえばリリーに言い忘れていたことがあったのよー。これが終わったら……言うのよー」

「それ以上はダメェェ! えーいっ!」

「あっ。それ、アウトなのよぉぉ……」

「トナカイィィ!!」



「やっと見つけた! まさか三日もかかるなんて……こんなところまで飛ばされていたのね。トナカイに私の魔力を込めたネックレスを渡していなかったら、もっと時間がかかっていたかもしれない」

「リリー、久しぶりなのよーおうふっ!?」

「トナカイ……私、一人で寂しかったんだから……」

「すまなかったのよー。まさか、こんな遠くまで飛ばされるとは思ってなかったのよー! お詫びにいっぱい、もふもふしてもいいのよー」

「うん、もふもふする」

「よしよし、リリーは甘えん坊さんねぇ」

「トナカイが悪いんだもん」

「よしよしー。今日はリリーが好きなご飯を作ってあげるのよー!」

「うん、でもまだもふもふが足りない」



 結局リリーは、三日ほどトナカイをもふもふし続けた。

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