トナカイの紙芝居
「リリー、ちょっと見てほしいのよー」
「どうしたのトナカイ」
「こんなん作ったのよ!」
『トナカイの紙芝居』
「おー。みるみる!」
「それじゃ、紙芝居スタートなのよ!」
「むかーしむかし、あるところに一匹のドラゴンがいたそうな」
「ドラゴンが主人公なんだね! 楽しみだなぁ」
「そのドラゴンはリリえもんという名じゃったそうな」
「リリえも……ん? なんだか引っかかる名前だね」
「リリえもんは毎日トナカイをもっふもふ、していたそうな」
「それ、もしかしなくても私のことだよね!? 「大人しく見ないと反省のポーズなのよ!」……ごめんなさい」
「ある日リリえもんは人間の姿で街に歩いて行ったそうな。その街のお店で、とても美味しそうな串焼きを一本、買って食べたそうな」
「身に覚えが……」
「リリー……えもんは、その串焼きのおいしさに驚き、そのお店にある串焼きを全部買い取ってしまったそうな」
「今、完全にリリーって言ったよね! あとなんでトナカイがそれ知ってるの!?」
「たーくさん串焼きを食べて満足したリリーは、その後近所のスイーツ店に向かったそうな」
「もう名前、完全にリリーになっちゃってるよ! そしてそれ、今日の私の行動だよね!? 近くにいたなら声かけてよ「リリー、シーッ!」……ごめんなさい」
「そしてリリーは、たーくさんお菓子を食べて、満足して帰りましたとさ。めでたしめでたし」
「どこがめでたいの! もう物語じゃなくて、ただのリリー観察記だよ!」
「街をぶらぶらしてたらリリーを見かけたから、遠巻きに観察してたのよー」
「もうっ! わざわざ紙芝居まで作って……何だか恥ずかしい」
「ところでリリー、ちょっと食べ過ぎだと思うのよー」
「そ、そんなことないもん! ドラゴンには普通の量だもん!」
「そうなん? 今日食べた串焼きの数は?」
「……数えてないけど大体二百本」
「その後で寄ったスイーツ店で食べた、お菓子の数は?」
「……多分百個くらい」
「そのスイーツを注文したときの、店員さんの表情がこちらなのよ」
「無駄に精密な写実画!? うわぁ……って顔してるね」
「更にリリーが、頼んだお菓子を全部食べきったのを見た、店員さんの姿がこちらなのよ」
「やめてぇぇ! ドン引きした表情の、店員さんの絵は見たくなかった!」
「ちなみにスイーツをおいしそうに、ぱくぱく食べてるリリーの姿もあるのよ」
「なんでそこだけ無駄に芸術的にしたの!? 何が何だか分からない絵になってるよ!」
「写実画バージョンもあるのよ」
「うわぁ、その場の光景を切り取ったかのような精密な写実画……」
「この絵は会心の出来だと思うのよー」
「うん、すごいけど……私がひたすら食べてる絵って何だか複雑な気分。ちょっと食べるの自重しようかな」
その後リリーは、お店で買い食いする量を減らすようになったそうな。




