リリーのトナカイ観察記
「あっ、トナカイだ。トナカー……そうだ、トナカイを観察してみよう。この前観察されて恥ずかしい思いをしたから、これでおあいこだよね」
「私が見ていない時のトナカイは、一体なにをしているのか……これはぜひ調べなければ!」
「街の中を歩くトナカイ……特になにも変化はないね」
「強いて言うなら、周りの人がちらちらトナカイを見てるくらいだけど。今まであんまり気にしてなかったけど、トナカイが街で歩くとけっこう目立つね」
「おっ、お店に寄った。あのお店は……お肉屋さんだね。今日のご飯の材料でも買うのかな?」
「トナカイがお肉をたくさん買ってる……ぜんぶ背中のチャックの中にしまい込んだね。お店の人がびっくりしてる。トナカイの体より大きい肉の塊が、あのチャックの中入に全部るんだから、そりゃびっくりするよね」
「トナカイが動き出した! 次は……八百屋さんに行ったね。人参と、ジャガイモと……これは、まさか!」
「私の予想が正しければ、次は香辛料のお店に行くはず……ビンゴ!」
「これはもう、あの料理しかないよね! 楽しみだなぁ……って違う! 目的を見失うところだった。トナカイの観察を続けなけれ……あれ? トナカイがいない。逃げられた!」
「急いで探さなきゃ! トナカイどこかなぁ……こんなときは、私のトナカイセンサーの出番!」
「うーん……こっち、な気がする!」
「あれ、いない。おかしいなぁ、私の勘が外れるなんて……仕方ない、いつものネックレスの魔力を辿ろう」
「あっ、いた! トナカイったら、私の気も知らないで優雅にお茶してる……ぐぬぬ」
「私もお菓子食べたいなぁ。トナカイの観察が終わったら、買いに来よう」
「トナカイが再び動き出した! 次はどこに向かってるのかな?」
街から出ちゃったけど、一体どこに向かってるんだろう」
「おもむろに何かを作り始めた! 何だか建物っぽいけど、何を作ってるんだろう」
「これは、小屋? 小さ目の建物だね。トナカイがその中に、入っちゃった」
「……いくら待っても出てこない。ちょっと覗いてみようかな。そーっと……」
「遅かったのよリリー。早く席に着くのよ!」
「と、トナカイ!? きぐうだねーこんなところで出会うなんてー」
「奇遇も何も、リリーを待ってたのよー。ささ、ここに座るのよー」
「えっ……ちょっと」
「はい、新しい紙芝居、スタートなのよー!」
「紙芝居!?」
「むかーしむかし、あるところに一匹のドラゴンがいたそうな」
「この流れ、前もあったよね」
「ドラゴンの名前はリリ座衛門」
「……もうリリーでいいよ!」
「リリーはある日、トナカイを見つけたそうな。そして、トナカイの後をつけていったそうな」
「最初から気づかれてたの!?」
「そこでリリーが見たものは!」
「!? 何かコミカルな音が鳴った! なにこの小屋!」
「トナカイの紙芝居専用の演出小屋なのよ」
「無駄に高性能!」
「お肉をたーくさん買うトナカイだったそうな」
「あ、ここは演出なしなんだ。ちょっと期待しちゃった」
「そして、お肉に見惚れている間にトナカイを見失うリリーだったそうな」
「違うよ! 香辛料のお店の後だよ! 勝手に事実を曲げないでよ! それじゃ私がお肉大好き食いしん坊「リリー、シーッ……」……ごめんなさい」
「そして、トナカイのお菓子トラップをなんとか乗り越えたリリーだったそうな。めでたしめでたし」
「あれトラップのつもりだったの!? お菓子に釣られて出て行く私じゃないよ! そしてっひゃぁ!?」
「最後の演出なのよ」
「不意打ちで炸裂音はひどいよトナカイ!」
トナカイに散々からかわれたリリーは、トナカイがこっそり買っていたお菓子にご満悦だったそうな。
ちなみに、その日の晩御飯はトナカイ特製のお肉たっぷりカレーだった。




