冒険者のお仕事 その三
「いらっしゃいませー」
「ここは今日オープンのスイーツ店なーのよー」
「オープン記念で全品割引してますよー」
「とってもおいしかったーのよー」
「とてもおいしかったらしいです……えっ?」
「あのお菓子は、もちもちでおいしかったの「ちょーっと待ったー!」どしたんリリー?」
「今、お菓子食べたって言ってなかった?」
「うむ、もちもちでとても、おいしかったのよー」
「私、まだここのお菓子食べてないのに……トナカイだけずるい!」
「ありゃー、そうなんねぇ。そんじゃ、今からもらってくるのよー」
「うん、お菓子の味とかわかった方が宣伝しやすいもんね! ……私たち、なんでお店の宣伝してるんだっけ」
「そういうときは回想の出番なのよ!」
「戻ってくるのはやっ!?」
「回想中に取ってくるのよー」
「あ、お菓子はまだなんだね」
「うむ、改めて回想スタートなのよ!」
「たまには、冒険者のお仕事をしないといけないね」
「うむ。というわけで冒険者ギルドに来たのよー」
「あっ! リリーさんたちじゃないですか!」
「なに?」
「丁度あなた方にお願いしたいお仕事がありまして!」
「行こうトナカイ。この人がこんなこと言うときは、ろくな仕事じゃないもん」
「そうなんねぇ、そんじゃ行くのよー」
「あっ!? ま、待ってくださいぃ! あなた方じゃないと出来ないお仕事なんですぅぅもふもふぅぅ」
「この人なんか、急にしがみついて来たのよ」
「またどさくさに紛れてトナカイをもふもふしてる……やっぱりそろそろ始末「まぁまぁ、落ち着くのよリリー」もうっ、トナカイのもふもふは私のなのに……」
「今回のお仕事は、いかつい男どもじゃ出来ないんですよ! 数少ない女冒険者にも声をかけましたけど、なかなか受けてくれなくて……」
「ふーん、大変だね。それじゃ頑張ってね「待ってくださいよ! ここは『それは大変ですね、ぜひ協力させてください』って言うところじゃないですか!」……しょうがないなぁ、それじゃ聞くだけ聞く」
「よくぞ聞いてくれました! 今回のお仕事はー、これですっ!」
『スイーツ店オープンセールのお手伝い』
「「……」」
「こちらのお店で呼び込みをしていただきます!」
「それ、冒険者がやる仕事なの?」
「さすがのトナカイも戸惑いを隠しきれないのよー」
「なにをおっしゃいますか! 冒険者のお仕事は、荒事だけではないのですよ! 時には町の方々のお手伝いをするお仕事もあるのですっ!」
「ふーん、そうなんだね。それじゃ、頑張ってね」
「ナチュラルに去ろうとしないでくださいよ! このお仕事が適任なのはとても可愛い女の子か、とても目を引くマスコットなのです! あなた方は、そのどちらもクリアした、まさにこのお仕事をするために生まれて来た方々と言っても、過言ではないのかもしれません!」
「トナカイ、マスコットなん?」
「うん、そこまで言うならやってあげないこともない、かな?」
「リリー、可愛いって言われて嬉しかったのねぇ」
「そ、そんなのじゃないもん。町の人のために頑張ってあげてもいいかなって思っただけだよ? ほんとだよ?」
「ふふっ、そういうことにしておいてあげるのよー」
「ありがとうございます! 細かいことは、この場所にあるお店で聞いてくださいね!」
「わかった」
「わかったのよー」
「はい、回想おわりーなのよ」
「そんなことよりこのお菓子、ほんとにおいしいね」
「リリーが話をすり替えにかかったの「ちがうもん!」……はいはい、わかったのよー。お仕事でお手伝いに来たけど、またこのお菓子買いにくるのよ!」
「そうだね。また来ようね」
可愛い少女と変なぬいぐるみが、お店の前でお茶していると噂になったこのお店は、オープン初日からとても繁盛したそうな。




