トナカイと遊園地
「トナカイがいつまで経っても帰ってこない。何かあったのかな……」
「! もしや、お菓子につられて悪い人たちに攫われたのでは……」
「トナカイが大変なことになるとは思えないけど、念のため助けに行こう」
「こういうとき、トナカイにネックレスを渡してよかったと改めて思うよ……こっちだ!」
「ここは……子供がたくさんいるね。子供の遊び場なのかな?」
「あっ、トナカイがいた! トナカイー!」
「リリー、よく来たのよー」
「よく来たのよー、じゃないよ! 全然帰ってこないから、心配で探しに来たんだよ! もうっ!」
「それはすまなかったのよー。なんかねー、トナカイが歩いてたら……」
「歩いてたら?」
「回想スタートなのよ!」
「ここは賑やかなのよー。なんか派手な門をくぐってみたら、子供たちがたっくさんいるのよー」
「あ、こんな所で何油売ってるんだよ! 休憩時間はとっくに過ぎてるぞ!」
「えっ、トナカイの休憩時間って、限りがあったん?」
「早く、こっちだ! まったく、着ぐるみのまま持ち場から離れるなよ……」
「トナカイ、着ぐるみじゃないのよ? 背中にチャックあるけど、中の人なんていないのよ?」
「ほら、ここで適当に子供たちの相手をするのが俺たちの仕事だ。怪我をさせないよう気をつけるんだぞ?」
「わかったのよ! ここで遊んでいればいいのね!」
「回想おわりーなのよ!」
「……はぁ。ちょっとは否定しようよトナカイ」
「いや、否定はしたのよ? ただトナカイの声って普通の人間には届かないのよ?」
「あ、そういえばそうだったね」
「それでねー、ここで座ってたら、子供たちが……」
「子供たちがいっぱいきて大変なことになったの?」
「……遠巻きにこっちを見て、かわいそうなものを見る目で見てから、どっかいっちゃうのよ」
「その子供、今どこにいるの? ちょっと教育してく「待つのよリリー、ちょっと大人げない上に、余計切なくなるのよ!」トナカイの良さを分からないなんて……」
「たぶんねー、見慣れないトナカイを警戒している感もちょっとあるのよー」
「なるほど……はっ! ここでなら、トナカイをたくさんもふもふしても、着ぐるみと戯れる子供って感じで、周りから変な目で見られないのでは!」
「えっ、リリーって割と、いつでもどこでもトナカイもふもふするけど、周りを気にして「わーい! もっふもふだーっ!」……もう聞いてないねぇ」
「このもふもふ感! とても、もふもふです……あぁ、もふもふぅ」
「……リリーの、語彙力のなさが浮き彫りになってるのよ。 およ、周りに子供があつまってきたのよー」
「もふもふー……ちょっと、トナカイのもふもふは私のなんだから!」
「リリーがとっても大人げないのよ! みんな仲良くするのよー」
ある日遊園地に、新しいキャラクターに関する問い合わせが殺到した。
遊園地の関係者は、新たなキャラクターなど出しておらず、皆で首を傾げたそうな。




