リリーの夢
「ここは……?」
「やぁ」
「あっ、トナカイ!」
「こっちに、おいで」
「えっ、うん」
「いい子だ」
「と、トナカイ? 何だかいつもと雰囲気が……違うよ? どうしたの?」
「そろそろ君と次のステップに進んでも、いいと思うんだ」
「!? そ、それって……いやトナカイに限ってそんなはずはないよね」
「君が今想像した通りさ」
「!? トナカイ……? 今日はちょっとおかしいよ? 何か変な物食べたの?」
「ふふっ、僕は正常だよ。君を僕色に染めてあげよう」
「はうっ!? トナカイ色に……きゅぅぅ……」
「……気を失ってしまった。初心な子だね」
「……はっ! 意識が飛んでた。変な夢見たなぁ……」
「やっと目を覚ましたね。でも夢はまだ、終わっていないよ?」
「ぴゃぁぁ!? さっきのトナカイのままだっ!」
「どうしたんだい? そんなに離れて……ここではどんなに離れようとしても、無駄だよ」
「一瞬で目の前に!? でも、トナカイが本気で動いたらこのくらい出来そうな……」
「君は冗談が上手いね。さて、捕まえたよ。そろそろ、美味しく頂くとしよう」
「あふぅ……トナカイに抱きしめられてる。トナカイがこんなに積極的だなんて、これはきっと夢だよね」
「そう、これは君の夢なのさ。だから、僕に身を任せても、いいんだよ」
「トナカイ……」
「ちょーっと待つのよー!」
「「!?」」
「だ、誰だ!」
「トナカイはトナカイなのよ?」
「トナカイが二人!?」
「どうやってここに入ることができたのかは分からないけど、ここで僕に勝つことはできないよ」
「リリーはトナカイのんだから、あげないのよ?」
「!? こっちのトナカイの方が、トナカイっぽい!」
「うむ、トナカイがトナカイなのよー」
「じゃぁ、こっちは……偽物?」
「うむ……なんでちょっと残念そうな顔してるのん」
「えっ……全然そんなことないよ! ほんとだよ?」
「リリーはトナカイに、あんなことをされたかったのねぇ」
「!? トナカイ、どこからっ! どこから見てたの!」
「リリーがそっちのトナカイにだっこされてる所らへんからなのよー」
「いやぁぁ!! 忘れて! 違うの、忘れてえぇぇ!!」
「心配しなくても、彼はすぐにここから出ていってもらうさ。その後で、僕と続きをしようね?」
「偽物ってはっきりわかってからそんなことできるかーっ!」
「ふふっ、すぐにそんなことはどうでも良くなるさ。さて、待たせたね。早速だけど退場してもらおう」
「!? 急に目の前に出てきたのよ! 圧がすごいのよ!」
「トナカイとトナカイが至近距離で見つめ合ってる……」
「ここは彼女の夢の中。そして僕は夢の支配者……夢の中において僕は最強なんだ」
「急に床から剣が生えてきたのよ!? 刺さったら危ないのよ!」
「トナカイ、残念だけどおしりに一本ささってるよ?」
「なんとっ!?」
「余裕があるじゃないか。その余裕は、いつまでもつかな? どんどんいくよ!」
「剣がいろんなところから飛んでくるのよ!? ここはトナカイ愛用、棒の出番なのよ! よいしょーっと!」
「何だって!? あの数を全て叩き落すとは……やるじゃないか」
「相変わらずトナカイって、速いよね」
「そろそろ、こっちからいくのよ? ほい、足元がおるすなのよー」
「!? 甘いね、僕を完全に捉えることはできな……!?」
「どんどんいくのよー。ほい、足留守ー」
「くっ、どうなっているんだ、僕の転移についてきているだと?」
「トナカイがトナカイを、頑なに足払いしてる……すごい光景だね」
「ほい、よいしょーっ、そろそろ、手数を、増やしていくのよー!」
「何だって!? ぐわっ!」
「足とおててー、足と頭―、足おてて頭ー!」
「調子に乗るなよ! これでどうだ!」
「すごい数の剣が、いろんなところから飛んで行ってる……」
「いくらなんでも飛ばしすぎだと思うのよ! トナカイじゃなかったら死んでるのよ?」
「何者なんだ君は…… まぁいい、夢の中で僕が負けることはない。せいぜい頑張ることだね」
「そういえばここ、リリーの夢の中だったのよ。ちょっと面倒になってきたから一旦帰るのよー」
「えっ……トナカイ? 私を偽物にとられてもいいの!? ……行っちゃった」
「ふふっ……見捨てられてしまったね? 仕方がないさ、どうやっても僕には勝てないんだ。何、心配することはない。夢から覚めたら、また彼と会えるさ。今まで通り接することができるかは、分からないがね!
」
「くっ……私の体を好きにできても、心はそうはいかないんだから!」
「すぐにどうでも、良くなるさ……なんだ!? 急に夢が消え始めている! 馬鹿な……僕にしか解けない催眠の魔法がかかっているはずなのに」
「周りがぐにゃぐにゃし始めた……私、起きようとしているってことなの? 頑張れ私!」
「もう少しで力を奪えたのに、消え……」
「……はっ!」
「おはようなのよリリー」
「お、おはよう。さっきのはやっぱり、夢だったんだね?」
「うむ、そうなのよー。この、トナカイ特製お目覚めハリセンで起こしたのよ!」
「えっ……私、これで叩かれて起きたんだ。なんだか複雑な気分」
「そんなことより、これを見るのよー」
「この瓶に入ってる小さいのって、もしかして」
「うむ、逃げようとしてたから、捕まえて瓶にいれといたのよー」
「これが、私にあんなことを……ちょっと貸してね」
「はい、どうぞー」
「天誅!!」
「……瓶ごと綺麗に消し飛んだのよ」
「はぁ……寝てたはずなのに、何だか疲れた」
「もう一回寝るといいのよー」
「うん、おやすみ」
リリーが次に目覚めたとき、トナカイに抱きかかえられていたそうな。




