トナカイの診察
「次の方どうぞなのよー」
「はい」
「今日はどうされたのよー?」
「実は……最近ちょっと頭が痛くて」
「ふむふむー、それでは早速、治療にかかるのよー」
「えっ、診察、しないんですか?」
「あー、そうねぇ、とりあえずやるだけやってみるのよー」
「大丈夫かなこのお医者……」
「まずはー、半分に切って中身を見てみるのよー」
「こわっ!? 怖いよトナカ「お医者さんなのよー」……うん、このお医者、だめな気がする」
「それじゃ、早速やるのよー」
「ちょっと待ったー! 百歩譲って診察のために切るとしようよ! でも、その手に持ってる道具おかしくない!?」
「これはトナカイ特製の診察用ハルバードなのよー」
「いや、何でも診察用ってつければいいってもんじゃないからね? それ、明らかに相手を仕留めるやつだよね?」
「リリーは不思議なことを言うのよー。ほら、トナカイ棒と槍しかまともに扱えないのよ」
「うん、それは知ってるけど……あれ? この前特大ハンマーとか叫びながら大きなハンマーを振り下ろしてなかった?」
「あー、あれねー。トナカイ、道具は普通に使えるのよー。武器になるとだめなのよー」
「そうなんだ……ん? いやいや、ハンマーが使えた理由は分かったけど……その大きな槍? を今から使う理由になってない「診察用ハルバードなのよ?」そこ、そんなに重要じゃないよ!」
「リリーは怖がりなのよー。動くと危ないから、拘束するのよー、ほいっ」
「一瞬でミノムシ状態に!?」
「それじゃ、ちゃちゃーっとやるのよ!」
「なんだかふらついてる!? 危ないっ!」
「あー、外したのよー。リリー、動いちゃだめなのよー」
「ちょっとトナカイ! 抉れてる! 私の頭があった場所、綺麗に抉れてるよ!」
「大丈夫なのよー、ちょっと手元が狂っただけなのよ」
「やっぱりそれだめなやつじゃん! ちょっと手元が狂ったら、私の頭が消し飛ぶじゃん!」
「リリーは心配性なのよ。仕方がないから普通に診察するのよ」
「最初から普通に診てよトナカイぃぃ!!」
「気を取り直して、診察するのよー」
「うん、なんだか余計頭が痛くなった気がする」
「まずは、頭を撫でるのよ」
「うん、えへへ、撫でられちゃった」
「次に、魔力を流します」
「はうっ! トナカイの魔力が頭の中をぐるぐるしてる気がする」
「んー、これは……なんと!?」
「えっ……何かまずいの?」
「大変なのよ!」
「……ごくり」
「何も異常がないのよ!」
「……えっ? それ、まずいの?」
「異常がないと、トナカイが治療できないのよ!」
「別にいいよ! 私はトナカイの治療欲を満たすために、頭痛になったわけじゃないよ!」
「ふむー、仕方がないのよー。それじゃ、一応お薬だけ出しておくのよー」
「ありがとう。ところで、これどんな効果があるの?」
「とってもハイな気分になれるお薬なのよ」
「それ、だめなやつ! 頭痛関係ないし!」
「冗談なのよ」
「冗談……もーっ!」
「ほんとはトナカイに突っ込みすぎて疲れた、頭と心を落ち着かせるお薬なのよ」
「自覚あったんだ!?」
思いつきで始めたお医者さんごっこで、思った以上に疲れたリリーであった。




